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  • 日本商業新聞

【2022/9/12 日本商業新聞】「資生堂」成長のカギは

 資生堂では、来年チェーンストア制度100周年を迎えるが、今後専門店が主力とする「高級化粧品市場」においてより一層の成長を図るためには〝マーケティングと現場の一体化〟がキーポイントになるだろう。その背景には、商品開発力及び人材面において評価は高いものの、現状、現場と本社のマーケティングとの連動(一体化)にまだズレが感じられる為に、店頭ではもう一歩踏み出せない活動状況になっていることが挙げられる。(中濱)



■マーケと現場の〝一体化〟


 「資生堂の商品開発力は秀でているが、一方でマーケティングのやりたいことと、実際に現場(店頭)が求めていることにズレが生じていることで、もう一段階上に上がりきれない状況となっている。現場の声が届く、そしてその声をしっかりと受けとめる〝マーケティングと現場(営業・BC)が一体化〟となった組織づくりが必要ではないだろうか」という声が化粧品専門店から挙がっている。


 中でも「現場で起こっていることが本社に伝わっていないのでは…」と疑問を抱く声が一番多く、例えばマーケティングにおいては「複雑で分かりにくい」と感じる部分が多々あるようだ。


 これはあくまでも推測だが、「施策展開の理由→事前準備→実行→検証」といったPDCAの組み立てが本社内で完結してしまっており、実際に現場におりた時にどうなるかという「現場の確認・検証」を取っていないが為に、本社と現場(店頭)においてズレが生じてしまっているのではないだろうか。



■起点は「店頭と現場」の理解

 

 いつの時代もイノベーションを起こすのは「店頭」であることを忘れてはいけない。そういう意味を踏まえると、営業面・施策面ともに、まずは店頭を知ること、現場を理解することに起点を置いたマーケティングが必要であると言えよう。


 現場を理解する1つの事例として「サンプルの提供」が挙げられる。ある資生堂主体のお店によると「資生堂ブランドの拡売を図るための施策を打ちたいが、必要とするサンプル数が圧倒的に少なく、施策を打ちたくても打てない状況が続いている。支店長にサンプルの提供支援をお願いしたが、『応援したい気持ちはあるが、売上基準ありきでしたくてもできない』と言われ、活動が停滞している」と嘆く。


 またあるお店では「あまり必要としていないサンプルはどっさりと届くが、有料でも欲しいCPBやSHISEIDOのサンプルはそもそも作られていなかったりすることも…。高級化粧品ゆえに、サンプルの充実を図ってほしい」と話す。


 このように、お店側は「資生堂ブランドを伸ばしたい」、そして現場の営業は「このお店を伸ばしたい」と思っても、必要なお店に必要なサンプルを届ける柔軟な体制が整っていないことから、今一歩踏み込んだ活動に取り組めない状況になっていることが見て取れる。


 また、専門店が資生堂に対しもどかしく思う理由がもう1つある。それは「現場の各支店長や営業、美容部員のレベルは高い」と、人材においては高く評価しており、現場が持つ力を、もっと本社の開発やマーケティングに活かしてほしいという点。


 もう1つは「CPBのブランド力が上昇している今、更に伸ばす活動に注力したい」というように、ブランド力に期待感を持っているものの、先述のようにサンプル数の制限などによって、思い切った活動や施策が出来ないという点だ。


 冒頭に戻るが、今の資生堂というのは、化粧品専門店が主力とする「高級化粧品」市場で3つの要素となる「モノづくり×マーケティング×店頭活動(接客・売場)」において、モノづくりに対する期待値は高いものの、お客様に付加価値を見出すマーケティング及び現場の力が一体となっていないことが課題であると言えよう。


 逆を言えば、もっと店頭や現場営業・BCの声をしっかりと吸い上げ、現場とマーケティングが一緒になって商品や施策等を作り上げることが出来たならば、資生堂の力を一段と発揮できることは間違いないだろう。来年はチェーンストア制度100周年を迎える節目の年でもある。今後の資生堂に期待したい。

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