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【日本商業新聞 2025年11月24日号】〝育てる文化〟に高い期待

  • 日本商業新聞
  • 3 日前
  • 読了時間: 4分

本紙では今年9月から、「Jスタイルビューティー」が展開する独自の特長を持った「知る人ぞ知る」メーカーを毎月紙面で紹介している。


独自技術や工夫を凝らした特長的なメーカーばかりだが、一方で、これまで専門店流通以外を主戦場としていたこれらメーカーが、なぜ専門店へと舵を切るに至ったのか。その背景には、新たな顧客接点の拡大だけでなく、専門店の強みである〝育てる文化〟に高い期待を寄せているからだと確信している。そして専門店においても、新たな商材を取り入れ「商品を育てる」ことで、ひいては「お店を育てる」ことにもつながると感じている。(半沢健一)



■〝育てる文化〟に高い期待


専門店の強みである「育てる文化」とは、〝人〟及び〝商品〟を掛け合わせることで、ブランド価値、ひいてはお店の価値創造へと繋げていく他にはない流通だと言える。中でも「商品」においては、単に販売するだけではなく、潜在的な需要を掘り起こし、時間と手間をかけて生活者に認知・支持される商品へ成長させると同時に、カウンセリング力を活かした展開で、そのお店の個性やブランド力を高めている。


昨今、IT技術が進化し、ネットやSNS等を通じて沢山の情報を簡単に得られるようになり、生活者にとって化粧品選びがしやすいというメリットがある反面、口コミが幾ら良くても自分の肌質に合っているのか分からないなど、情報の数が多いほど「迷い」も生じている状況だ。この数年、店頭での体験活動が重要視されている背景には、そうした心理が働いていると考えられる。


また、店頭で体験活動を提供するうえで必要なのが、スタッフのスキルだ。単に特長を説明するのではなく、生活者の肌質やニーズを把握したうえで、スタッフ自身の言葉や表現でわかりやすく伝えることが求められる。そうした活動を積み重ねて、商品のファンを増やし、それが「商品を育てる」ことにつながっていく。


そして店頭で商品の特長や魅力を伝える過程で欠かせないのが、地域や季節、年齢やライフスタイル等生活者それぞれ異なる特性やニーズに合わせて、的確でわかりやすく伝えることである。たとえ伝える内容は同じでも、伝え方のバリエーションは多種多様で、事前に準備をしておかなければならない。さらに接客応対の中で、最も適した伝え方やその伝える内容を瞬時に選択していかなければならず、当然、スタッフの高いスキルが必要となってくる。


また、お店の経営者もスタッフのスキルを高めるためのサポートを整えていかなければならず、「商品を育てる」ためのスタッフやお店の取り組みそのものが、結果として「お店を育てる」ことにつながっていく。



■お店の育成にも寄与 - 様々なメーカーが専門店に参入


繰り返しになるが、沢山の情報が簡単に得られる今、巷で話題を集める商品の存在を知り、興味を持つ生活者は数多くいる。一方で、その商品に興味はあるが、自分の肌質やニーズに本当に合っているのかが分からないことで迷いが生じ、購入の決断ができないでいる生活者もいる。やはり、生活者が求める商品を、その生活者の特性に寄り添った提案が、最大の後押しになる。その大事な役目を担うのが化粧品専門店であり、様々なメーカーが「商品を育ててくれる流通」として期待を集める所以でもある。


勿論、「商品を育てる」のはお店だけの役目ではない。メーカーも発売後のマーケティングでの取り組みの中で、専門店に商品を育ててもらうためのサポートが必要でありメーカー本社だけではなく、現場の営業も一緒になって取り組んでいかなければならない。それが長年愛用され続けるロングセラー商品への道筋であり、その地域の生活者から長年愛され続ける為の道筋でもある。


今後、専門店を取り巻く環境はさらに厳しいものになっていくのは間違いない。だが、化粧品選びに迷う生活者も増えていく中で、専門店流通が担うべき役割とは、常に美に関する新しい情報にアンテナを広げつつ、一人ひとりの生活者に寄り添った活動を提供することに尽きる。そうした活動が、化粧品業界全体を活性化させる波になっていくと感じている。

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