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【日本商業新聞 コラム】心意気と美学 -628- くだらないルール

 今年から『ピッチクロック』なる邪道なルールが大リーグで採用されている。目的は試合時間の短縮だが、投手と打者の駆け引きも野球の魅力のひとつだと考える団塊農耕派には愚かなルールとしか思えない。


 とにかく投手も打者もせかされる。のんびりしていれば種々のペナルティが課される。余計に時間を使えばカウントが悪くなって打者は三振にさせられ、投手は四球を宣言される。ストレスは半端ではないだろう。とりわけバカバカしいのは、牽制球を3度やって刺せなかったときはボーグになるという前代未聞のルールだ。少年野球でファウルを7本続けるとアウトになるというローカルルールがあったが、それと五十歩百歩の思慮の浅いルールだ。牽制球で刺せないのは投手だけの責任ではなく、守備側全体の責任だということが分かっていればこんな突拍子もないルールは作られなかったはずだ。


 日本のプロ野球でも時間短縮は以前から叫ばれているが、時間のかかるのは投手や打者のせいではない。元凶はやたら選手交代を繰り返し、見境なしに写真判定を申請する監督だ。某老舗球団の監督は来る日も来る日も行き当たりばったりの采配に終始し、投手を酷使し続けているが、交代のたびにゆっくりとマウンドまで行く時間は無駄だし、この監督の下では投手寿命も心配だし、そろそろ粛清の嵐が吹いてもいいのではないかと思う。


 選手も襟を正した方がいい。スポーツなのだからもっと迅速に動いてほしい。アメリカなみの厳しいルールが施行されないように防衛努力をしてほしい。草野球ではイニングが変わるとき、ほとんど時間を要さないが、プロ野球はそうではない。3アウトを取られても、なかなか守備につこうとしない。水を飲んだり、スパイクの紐を直したりしている。人に見てもらうプロならこの時間のロスは不謹慎でもある。かつての土佐高校の選手のように守備につくときもベンチに戻るときも全速力で走ったらどうか。


 同じスポーツでも大相撲には時間短縮が求められない。仕切り時間を無くせば時間は大幅に短縮できるが、誰もそれを口にしない。儀式だし、無駄な時間だと思わないからだ。相撲中継は見ないが大相撲ダイジェストは見るという人は多いが、そんな人でも国技館では国技らしく、伝統を忘れずにやって欲しいと思っている。野球だって実はそうなのだが、その機微を理解しない人たちが悪法つくりに励んでる。ルールを作る人は、それが誰の為のものなのかを絶えず考えていてほしい。ピッチクロックは観客やファンのためのルールで、選手が犠牲者になってしまった。こんなことが続けば野球は面白くなくなる。


 化粧品の業界にも様々なルールや規制があるが、ときどき当局の自己満足としか思えないルールにお目にかかる。オーガニックコスメが氾濫していると思えば「オーガニック指数」なる概念と計算方法を発案し、サンスクリーンの水浴後の耐水性が気になれば高額なSPF測定が2度も必要になるルールを提案する。メーカーがどれだけ迷惑を被っているかはこれらの提案に応じるメーカーがほとんど無いことが証明している。当局が守るべきはメーカーや消費者のはず。研究機関のつもりでいるなら改めてほしい。

(団塊農耕派)

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