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【日本商業新聞 コラム】-778- えこひいき

日本商業新聞
6 分前
読了時間: 3分

私はある女性から「えこひいきをしないでください」と言われたことがある。それだけで真摯に反省しなくてはならないのだが、あろうことかその時こう反論してしまった。「えこひいきされないのはそれだけの理由がある」。当時私は部門長、彼女は入社したばかりの部下、今ならパワハラと認定されてもおかしくない。


◇


しかし弁明させてもらう。この顛末はこうだ。彼女は短大卒で入ってきたが、私の部署の大半は高卒の女性だった。そんな中彼女はあらゆる場面で〝大卒〟をひけらかし、部の中で浮いた存在になりかけていた。そこで私は彼女にこうアドバイスした。「〝大学時代〟と言う代わりに〝学生時代〟と言ったら」


ところが意外にも彼女は反発する。「私の家は裕福ではなかったけど、母が一生懸命働いて短大に行かせてくれた。せっかく掴んだ権利を隠せと言うのですか」あまりの頑なさに閉口し、私はそれ以上の説得を試みなかった。ぎくしゃくした関係はここから始まった。


◇


朝礼で何人かの高卒の部下を社外教育に行かせると言った日、彼女はあきらかに不満顔だった。そして彼女の口から出てきたのが「えこひいきをしないでください」だった。


いずれ彼女もその教育には行かせるつもりだったが、彼女にその思いは届かなかった。会話も当然少なくなった。彼女からみれば「干されている」と感じたのかもしれない。でも一度も叱ったことは無く、彼女の人格を否定したことも無い。それでも悲しいかな私は彼女にとって在任中は「エコヒイキ人間」でありつづけたようだ。


◇


私の場合は些細なエコヒイキ事件として片付けられるが、一方で度の過ぎたえこひいき人間が登場し顰蹙を買っている。農水省の大臣に就任したばかりの男だ選挙で自分に投票しなかった市町村の道路予算を国交省に働きかけて削ったと放言したのだから、マスコミの餌食になるのは当然だった。


小選挙区で落ち、比例代表でかろうじて当選した恨みつらみのようだが、そうだとすれば大臣どころか議員としての資質を問われても仕方ない。政治家が陳情されて予算を取りに行くというのは良くある話だが、個人的な恨みで気に入らない人や地域に意地悪するのはトランプさん顔負けの暴挙と言わざるを得ない。


ところがよく調べてみると自分から動いたのではなく、決まった予算を見せられて、「自分のチカラで国交省を動かした」と手柄の横取りをしたようなのだ。こうなるともっとみっともない人物ということになる。裏口入学を頼まれて何もせず、受験生の実力で受かったのに、「オレのチカラで」と言うようなものだ。しかもこの男、一連の裏金議員の一人で、国民の反対の中、高市総理の偏愛で入閣した人間なのだ。お金や権力の亡者が農林業の振興のために働くとは到底思えない。さっさと辞表を書くべきだ。


◇


必要なえこひいきもあると思う。妹は小学校の教師だったが、父兄から付け届けをもらっても一切のえこひいきをしなかった。そんな妹をこうなじったものだ。


「えこひいきで返せないのなら品物をもらうな。もらうのならエコヒイキしろ」


妹は無視してそれからももらい続けたようだが、私には件の農水大臣に負けないくらいの極悪人に思える。

(団塊農耕派)

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