【日本商業新聞 コラム】-765- 高価格帯と便乗値上げ
- 日本商業新聞
- 23 時間前
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40年前、中国の化粧品会社にメーキャップ商品の技術指導に行ったことがある。
この会社はS社との間で設立されたばかりの合弁会社で、化粧品に関しては研究も生産も素人同然だった。北京はまだ長いスカートをなびかせて颯爽と自転車に乗る女性と、のろのろと車道を走る馬車が目立つのどかな町だった。
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「日本のある機械メーカーから提案されている最新の成型機を買って多色成型のアイシャドウを作りたい」 初日の打ち合わせで工場長はこう切り出して私を驚かせた。
日本でもまだ珍しかった多色のアイシャドウを作りたいとは!「まずは単色のアイシャドウで、工場は成型技術の基本を学ぶべき」と言う私の説得にも全く聞く耳を持たず、最後はこうまで言う始末。
「私は新しいことをして上から評価される。この機械が導入される頃には私は居ない。次の工場長が責任をとればいい」 〝この国の正体見たり〟という気持ちになった。会社の将来や後輩のことを考えず、自分の評価を上げることだけに執心する徳の無さに唖然とするしかなかった。
この一件は、その日のうちに売り込んでいた日本の機械メーカーに電話を入れ、その売らんがための姿勢を諌めて事なきを得たが、企業のトップに将来の展望がないと後輩たちが悲惨な目に遭うという分かりすぎた教訓を笑い話風に私の記憶に残している。
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ところがこの笑えない兆候が今の日本に現れている。それも我が業界に色濃く出始めている。
化粧品の「値上げラッシュ」は止まりそうに無く、その値上げ幅も驚くほど大きい。消費者の財布の都合より自社の利益の減少を憂いているわけで、クオリティオブライフや共存共栄を標榜する化粧品会社としては恥ずかしい限りだ。
またイラン情勢から来るナフサ不足を値上げの千載一遇のチャンスと捉えているフシもあり、そうだとしたらそれに「便乗」という形容詞が付けられても反論できない。小売店や物価高に悩む消費者に「便乗」だと見透かされているのならメーカー不信に繋がる愚挙でもある。
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ところで値上げによって将来自社が被る痛みをメーカーのトップはどう定量化しているか知りたいものだ。原材料や諸経費の上昇分を過分に商品価格に転嫁し、ますます高価格の商品にしてしまうことの弊害は無いのか、明快に説明してほしいものだ。
それでなくても昨今のプレステージ化粧品の価格は数年前と比べて相当に高く、結果的に消費者の店離れを招いているわけで、自分の首を絞める行為だと指摘されても反論できないのではないかと思ってしまう。
そして今は会社の懐が潤って安泰でも、バトンタッチした後輩に残されるものが僅かばかり上客と高くなりすぎて売れない商品だけだとしたら、余りにひどい先輩で、件の北京の工場長とメクソハナクソということになる。
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人口減や格差社会、日本にかつての勢いは無い。成長社会ではない。そんな中、都内のマンションの価格相場と化粧品の値段は一部の上客に支えられて高値が続く。
しかし20年後を見据えた時、今の高価格化の流れのままで良いのか、方向転換した方が良いのか、化粧品店はじっくり考え、必要あればメーカーの姿勢を正すのもアリだと思う。
(団塊農耕派)