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【日本商業新聞 コラム】-743- 正月ののどかな一日

  • 日本商業新聞
  • 14 分前
  • 読了時間: 3分

徳島の専門店から頂いた鳴門金時を種イモにして昨秋は食べきれないほどの芋が獲れたので、芋の消費に困り初めて干し芋を作ってみた。何のスキルもノウハウもなく、茨城の北の方で作るやり方をネットで見つけて真似してみた。輪切りにするのではなく繊維に沿って切るのだがこれが難しい。包丁に付着したり、形がくずれたりで、芋そのものも不ぞろいなのだが、干し芋にするともっと見苦しい。こんなものを食べてくれる奇特な人はいるだろうか。



干し芋は乾燥中だが、毎日ひっくり返すのが面倒だ。どうやら私の仕事になっているらしい。単純作業をしながら思い出した。子供のころ干し柿に細工をしたことを。


干し始めのまだ熟れている柿に止まったハエを叩いて殺し、中に押し込みそのまま乾燥させるのだ。嫌いな先生用だ。ところが取り込み前日にその作品が紛失する。富山の薬売りにあげたとヌケヌケと母が言う。なぜかとても悔しかった。怒りすら感じた。その後自分の食べた干し柿の一つから黒い異物が見つかった。母は小豆だろうと笑ったが、当時細工なんてしなくともハエさんは沢山侵入していたのだそうだ。



干し芋が完成するにはあと10日くらいかかるだろう。その間は農閑期だ。


夏あれだけあった雑草も今は老衰一方、とうもろこしの毛のようになっている。書きかけの小説の原稿を取り出し机に向かう。しばらく間を空けていたので最初から声を出して読んでいかないとその世界に入ることができない。だから毎度毎度とりかかるのに時間がかかってしまう。本当にそろそろ3作目を完成しないと出版社と縁が切れそうだ。


1作目は怖いもの知らずで感性の赴くまま一気に書き、2作目は児童文学だったので歴史認証をしながらゆっくりと書いたが、3作目はそのエネルギーが出てこない。やはり職業作家には成れないとつくづく思う。本物の作家先生のまねをして温泉宿にでも籠ってみようか。きっと太って帰ってくるだけだろうが。



ところが意外にもこの年末、1作目が地元の本屋に並んだ。「地元作家」というPOP付だ。きっと数年前の売れ残りだろうが、20冊も平積みされていた。直木賞や芥川賞の受賞作が今年は無く、売り物に困った本屋が考えた苦肉の策だったようだが、完売にそれほど時間がかからなかった。「やぶ医者」とか「水のみ百姓」とか地元の人を悪く書いてしまったので、本の存在がばれるのが怖かったが、それでも売れれば嬉しいもので、毎日散歩の帰りに寄って減り具合を確認していた。


元旦にご祝儀のつもりで1冊買ったので19冊になったのだが、それから4日後には12冊にまで減っていた。文芸書としては良い売り上げだと本屋におだてられた。ところが散歩から帰って息子の部屋をのぞいたら、机の上に1冊、妻が良く使う玄関脇の棚にも1冊、見たような本があるではないか。化粧品会社時代、コンビニ専用ブランドの発売直前、担当者が日販値を上げるために各地のローソンのモニター店で買いあさり、ローソン側からお叱りを受けたことを思い出した。今日買った本はどこかに隠しておこう。

(団塊農耕派)

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