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【日本商業新聞 コラム】-741- ファーストパス

  • 執筆者の写真: QuaLim 株式会社
    QuaLim 株式会社
  • 2 日前
  • 読了時間: 3分

最近、地方の駅でタクシー待ちに苦労する。なかなか来ないのだ。


先日阪神電車のある駅でのこと、30分待っても1台のタクシーも現れない。仕事先に電話をいれて遅れることを詫び、ひたすら待つ。そのうち団塊農耕派を先頭に4、5人の列ができる。ようやく1台のタクシーが構内に入ってきた。安堵の気持ちで荷物を持ち替え、財布を確認し、ドアの開くのを待つ。ところがこのクルマには「予約車」の点滅が。胸騒ぎが当たってしまう。なんと列の最後尾の男性が勇んで乗込んでしまった。長い待ち時間にしびれをきらしてタクシー会社に予約を入れたのだと思うが、その理不尽さに腹が立つ。後輩に出世レースで抜かれたような、外車なのに軽トラに抜かれたような、惨めな気持は長く続いた。



「予約」の良い側面はたくさんある。レストランも遊園地も映画館も予約して出かけるのが当たり前になっていて、その便利さはいまさら語るまでも無い。問題はその恩恵に浴さない、言い換えればそのために不利益を被る人がいるということだ。お金が無いために、またその仕組みを知らないために、どんどん後回しにされてしまう人がいると言うことだ。



「ファーストパス」を採用する事業者が増えている。ディズニーランドで最初に導入されたと記憶しているが、このときは優先入場に余分なお金は要らなかった。そう混雑防止が目的で、良心的だった。しかしその後はお金を取るファーストパスが主流になってきてしまった。お客は喜び、店も儲かり、問題はないはずだが、「アメリカファースト」や「都民ファースト」の底流にある利己主義を顕在化させる仕組みではある。



銀座に500円を払えば並ばずに済むという著名なラーメン屋があり、その仕組みに店も客も、そしてそのシステムを運営している会社も時代の要請として自画自賛している。並ぶのが嫌いな団塊農耕派は日頃〝並ぶくらいなら不味いラーメンでもよい〟と豪語しているが、どうしても食べたいものであってもこのシステムを使う気になれない。その理由はたったひとつ、500円を払えずにひたすら並び続けている人に対して申し訳ないからだ。



30年ほど前、万里の長城へ向かう道で渋滞に巻き込まれたことがあった。ところがそこにサイレンを鳴らして路肩を突っ走るクルマが現れ、団塊農耕派のクルマを抜いていく。パトカーではなく警察車両を装って走るタクシーだった。悪魔の囁きが聞こえ、団塊農耕派はそれに負ける。ガイドが運転手に特別料金を渡すとクルマはけたたましいサイレンをならし、これまでの渋滞がウソであったかのように快適に動き出した。おかげでまもなく長城に着き観光をすることができたが、何ともいえない後ろめたさを感じたものだった。



ファーストパスとは飛行機のファーストクラスや阿波踊りの特別席みたいなもので、その恩恵に浴さない人に迷惑を及ぼすものではないので、目くじらを立てることも無いのだが、童話「傘地蔵」の陰徳を日本人の美学と感じる偏屈な団塊農耕派には受け入れがたい。


それでもコロナが収まり、外人観光客が急増し、あらゆるものが混みだした日本では、ファーストパスを採用する業態がますます増えてくると思われる。団塊農耕派はその都度義憤(?)を感じて生きていくことになる。

(団塊農耕派)

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