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【日本商業新聞 コラム】-737- ナイアシンアミドとミノキシジル

  • 日本商業新聞
  • 1 時間前
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「青は藍より出でて、藍より青し」という諺があるように、あとから出てくる者には先発よりもどこか優れていてほしいのだが、昨今はまさに「二番煎じ」「三番煎じ」の続出で、先発の高名に泥を塗るケースの方が多い。それは政治家だけの話にとどまらない。



ナイアシンアミドはニールワンとレチノールの後を追って国内で3番目にシワ改善効果が認められた医薬部外品の主剤だが、あっという間に模倣され、いまやバーゲンセール状態となり、数百もの商品に配合されている。


長男と次男が〝家の宝〟として大切に育てられているのに対し、3男は節操なく使われている。効果が内輪なのでそれほど惜しく無いのか、申請が通りやすいのか、先行したメーカーが太っ腹なのか、その理由はわからないが、研究とは無縁の新参のファブレスメーカーまでもが〝研究の成果〟とホラを吹いている。医薬部外品の主剤という通行手形があれば日本の消費者は一目置いてくれる、騙されてくれる、そんな風潮に便乗した効果の疑わしい商品が氾濫している。



ミノキシジルも同様である。半世紀前、血圧を下げる効果のある薬剤としてアメリカで開発され、その後発毛効果のあることがわかり、ロゲインという名前で発売されていたが、日本のT製薬がその権利を買い取り、リアップとして売り出した。当時の日本ではR社のペンタデカンやS社の不老林などが育毛料の売れ筋だったがリアップはその市場を奪ってしまった。R社やS社の研究員は「負けていない」と反論したが、発毛効果のあるデータを上手に揃えて当局を納得させ、特別席を勝ち取ったリアップの軍門に下るしかなかった。


しかしミノキシジルが他の薬剤に比べて圧倒的に優れていたかと言えば、ノーである。五十歩百歩なら百の方、メクソハナクソならメクソの方、その程度の差である。だからこれだけ扱いに差が出るのは不条理なのだが、タナボタでもらった勲章でも、勲章は勲章、黄門様の印籠のように、その威力にはすさまじいものがある。残念ながら。



ナイアシンアミドよりも優れた抗シワ剤などいくらでもあるが、みな世渡りが下手で、当局との付き合い方を知らない。「オレの方がすぐれている」と言っても権威に弱い消費者を説得することは出来ず、格下の扱いに甘んじるしかない。その優れた効果を知ってもらうには使ってもらうしかないが、交通手形のない身にはその順番も回ってこない。


頼みの綱は化粧品専門店だけかもしれない。ナイアシンアミドを入れて資格を取っただけの商品よりもシワに効く商品をお客様の肌を見続けてきた専門店の奥様はたくさん知っているはず。ぜひその情報を発信し、本当に効果のある商品をお客様に紹介してほしいものだ。市場から粗悪品を追放するのも化粧品専門店の役割だと思う。



そもそもシワの改善はスキンケアの究極の目標で、各社それを目指して商品や美容法の研究を地道に重ねてきたのに、数年前、粧工会はその志に逆らうように、抗シワ研究に飛び道具の使用を許してしまった。以来、情緒性のある化粧品が姿を消し、無機質な医薬部外品ばかりが販売される傾向が続いている。医薬部外品は日本だけの姑息な制度だが、この存在は大袈裟に言えば日本の化粧品文化を歪めていると言っても良い。

(団塊農耕派)

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