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【日本商業新聞 コラム】-727- 逆張りオタク

  • 日本商業新聞
  • 9月3日
  • 読了時間: 3分

伊東市の市長の学歴詐称を巡って珍騒動が繰り広げられている。


どうやらピンチに陥っても知恵を絞れば、屁理屈をこねれば、上手なウソをつけば、打開策が見えてくるようだ。そしてそのうち興味が失せ、風向きが変われば世間は忘却という徳政令を出してくれる、日本の施政者の多くはそんな処世術を身につけている。


マイナスとマイナスを掛ければプラスになる算法を大学は除籍でも伊東の市長は学んでいるようで、批判の声が市民の口の端に上らなくなるまで厚顔無恥にも居座るつもりのようだ。


令和7年の夏は、参院選の大敗で辞任を迫られてもケセラセラの石破総理と土俵際でうっちゃりを企む件の市長のどちらが先に引導を渡されるか、低次元の成り行きに一喜一憂する暑苦しい夏になりそうだ。



〝その任に非ず〟の烙印が押されている以上、この二人には期待するほどの風向きの変化は無いと考えるのが普通だが、最近はそうでもないから厄介だ。昨今の一連の選挙で露骨になったSNSの魔力を使えば活路を見出せるのかもしれないのだ。


二人は藁にすがる思いで今この戦法を勉強していると思う。


兵庫県知事選などで、簡潔で勇ましい主張に洗脳され、わけもなく形勢不利な方に同情し、強者を一方的に攻撃する天邪鬼(あまのじゃく)がたくさん出現したが、いま二人が頼りに出来るのはこの種の人たちだけだと言ってもいい。


天邪鬼とは言い換えれば〝逆張りオタク〟でもある。逆張りとは本来、相場に逆らって売買する株式用語だが、今では「一般的な意見を嫌って、あえて真逆の意見を言うこと」を意味し、聞く耳持たずの人が多いことからオタクの一種と言ってもいい。


その特徴だが、世の中に対して不平不満を持つ人が大半だが、自らの主張を発信して存在感を示したい知的な層から、洗脳されやすく物事を表面づらだけで判断してしまう人まで、いろいろ居て、そのキャラクターを一律に定義するのは難しい。



ところで学歴を巡って似たようなことをS社の研究所時代に経験したことがある。研究室にひとりの高学歴の若い社員がいたが、彼はいまどき珍しい学歴自慢派で、高卒の女子社員をセミナーに派遣すると「なぜ彼女を行かせるのですか。ムダですよ」と言って来る始末で、何年経っても彼には一人の友達も出来なかった。


当然研究室では浮いた存在になっていたが、そこに新入社員の女性が入ってきた。彼女は研究室での彼を見て「みんなにいじめられている」と感じ、彼に同情し、研究室の同僚の態度に違和感を持つ。その後彼女も彼の異常さに気づき、それがいじめでないことがわかるが、それまでの流れや真相を知らなければ、そして彼女が人権意識に目覚めた女性だったなら、ひどい研究室だと糾弾したかもしれない。ましてやSNSという装置があれば、その発信内容はより過激になり、研究室は批判にさらされ、廃室の憂き目にあったと思う。



このようにコトの本質は露呈している風景だけでは正しく掴みきれない。なのに一面だけを見て行動する人が少なからずいる。目立ちたいがために「核は安上がり」と放言するバカな政治家もいる。SNSがその種の人たちの武器になっているのは自明だが、今こそそんなものに頼らず、自ら考えるチカラを養うときだと思う。

(団塊農耕派)

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