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【日本商業新聞 コラム】-726- 若い子が来ない

  • 日本商業新聞
  • 8月28日
  • 読了時間: 3分

若い子向けの商品が極端に弱い、これは大手制度品メーカーの共通の悩みだ。


市場調査を怠ったわけでもなく、対象の女性の意見や販売第一線の意見を聞かなかったわけでもなく、やるべきことはやっているはず。それでも〝山は動かない〟。そこで団塊農耕派は偏見に満ちた解析をしてみる。失礼があればお許しを。



プロセスに問題がないのであれば、開発する側の人材のポテンシャルの問題になる。言葉を変えれば、不向きな人材が担当し、的外れな開発をしていることになる。


会社居室の机の上からティッシュと鏡が消え、パソコン端末が置かれだした頃から、上記の傾向が一層強まってきている。すっぴんで出社し、あまり化粧品は使わないと平気で発言する女子社員が珍しくない。良い子で高校・大学時代を過ごし、化粧品に対する目を養う機会も意思も無いままに化粧品会社に入社してくる人が増えている。



弱電や銀行であれば、入社後の鍛錬で追いつくことは出来ようが、化粧品という感性的、情緒的分野においては10代における未経験は致命的ハンデとなる。


研究所では最新の科学的知見も必要となるので、高学歴化はやむを得ないが、商品をクリエイトする分野においては、どれだけ感動的な経験をしてきたか、どれだけ人間に興味を持てるか、どれだけ化粧品が好きか、というようなファクターこそが必要になる。そうであれば良家のお嬢さん的学卒が入社しやすい採用環境は見直すべきである。



これからはZ世代が入ってくるが、彼らの価値観を読み取るのは難しい。おそらく大学に進学することは「当面の目標」でなくなる。やりたいことがあれば三流の学校でもいいし、大工さんや農業も自己実現の有力な候補として積極的に受け入れるだろう。何の感動もなく、何の意欲もない若者が、次善の選択として、また決断の先送りとして大学へ行くようになる。そう大卒の採用にこだわるとますます若い子向けの商品は陳腐になる。


設計する側だけでない。化粧品専門店にも同じ悩みがある。若い子が来店しないのだ。お店はマチュア世代を得意技としており、若い子を扱うスキルに欠ける。お店の高齢の奥様と経験豊富な40代の美容部員、彼女らが10代のお客様に対して十分なメークの手ほどきができるとは思えない。チェインストアに若い人が来ないのは当たり前かもしれない。



メーキャップを例にとれば、お店はよく「使える色がない」とメーカーに文句を言うが、事実を言い当てていない。正確には「勧められる色がない」と言ったほうがいい。ラメ入りや先端的な色を勧めることが出来ない。自分で塗ってみて綺麗に見えないのだから自信を持って勧められないのは当然である。ターゲットとなるお客様に見てもらう前に、「今度の新製品は色が悪い」いう先入観に支配されてしまうのである。


つまり店頭が若い子の気質やメークをほとんど理解できない人たちで構成されていること、そして最上流の商品開発の段階でもメークの楽しさも醍醐味もよくわからない人間が担当していること、この二つの人的なミスマッチが劣勢の原因となっていると思う。容易ではないが対象者を深く研究し、体制を立て直す努力が今こそ求められている。

(団塊農耕派)

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