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【日本商業新聞 コラム】-725- 農機具メーカーと化粧品原料メーカーの共通点

  • 日本商業新聞
  • 8月9日
  • 読了時間: 3分

令和のコメ騒動は小泉農相の荒療治のおかげで一応の落ち着きを見せているが、出さなくてはいけない膿の存在もわかってきた。その代表的なものが「高すぎる農機具」だ。



昔のような地域総出の人海作業が期待できなくなった今は、田植から脱穀、精米まで農家は大型機械を何台も用意しなくてはならなくなった。ところがその機械はどれも目玉が飛び出すほど高い。コメの買い取り価格をいまの10倍にしてもらっても、中小規模の農家の赤字経営は死ぬまでつづく。



その辺の事情を理解した農相が大手の農機具メーカーにレンタル事業の開始を呼びかけたが、メーカーが応じる気配はない。どうしても一家に一台買わせたいらしい。1年に2、3回しか使わないのだから、バッテリーは上がり、ねずみの糞の心配もある。高齢者の操作ミスも少なくない。



手に負えなくなる農家はその都度修理を頼むことになる。そうメーカーには「2度おいしい」特典がある。たしかに農機具にはそれぞれに需要期があり、レンタルの維持管理の難しさは容易に想像できる。農相が考えるほど簡単なものではないかもしれない。それでも問答無用の姿勢は薄情すぎる。農機具メーカーの知恵と徳に期待したい。



同じような構図が化粧品業界にもある。香料や植物エキスなど扱っている原料メーカーの殿様商法だ。量産の難しさなどを理由にベラボウに高い価格を呈示してくるが、それを使う化粧品メーカーが困るのは、一定量以上でなければ売っていただけないことだ。



年間1㎏も使わないのに、最低10㎏を買わなくてはならないのだから購入には清水の舞台から飛び降りる勇気がいる。素晴しい香りの香料を見つけても、植物エキスに新しい効能を見出しても、この宿命的な購買慣行がある限り、貧しい会社と気弱な開発マンは高嶺の花に手を出せない。



これは体のいい〝いじめ〟でもあることは原料メーカーもわかっているらしく、最近は数種類の植物からなる混合植物エキス原料が売られていて、自然派コスメらしく見せたい化粧品メーカーが積極的に採用している。1個の原料の配合で成分表示にたくさんの植物名を書くことが出来るわけで、(何も知らない)消費者は喜んでくれるし、不良在庫になったとしても1原料の廃棄で済む。化粧品メーカーとても有りがたい原料なのである。



これはやや偽善っぽいが、この種の思いやりをもっと広げて欲しい。願わくば香料も植物エキスも必要分を小分けして売るという英断をしてほしい。おそらく「1回の製造ロットが10㎏で、長期保存できないから」という否定的回答が返ってくると思われるが、それでは話が進まない。自社都合では無く、クライアントの窮状を理解する広い心が欲しい。



化粧品の業界というのは見かけに反して意外と保守的で、浪花節的でもあり、パートナーを思いやる気持ちで成立してきた。原料メーカーもその仲間のはず。小分けにして売れば単価を上げられるし、トータルの利益額は増える。何より納品先との絆も太くなる。善意は決して無駄にならない。農機具メーカーが農家に優しくなるよりも、ずっと容易なことだと思う。業界の発展の為に、弱者(弱社)救済の為に今こそ意識改革を。

(団塊農耕派)

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