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【日本商業新聞 コラム】-723- 対戦相手は慎重に

  • 日本商業新聞
  • 7月29日
  • 読了時間: 3分

阪神タイガースが弱かったころ「PL学園のほうが強いのでは」という好奇心から本気で対戦をけしかける人がいた。しかし阪神はそんなバカな挑発に乗らなかった。賢明だった。



下のリーグのチームや個人が強さを過信し、本来勝てっこない上のリーグのチームと試合をしてみたくなる気持ちはわからないでもないが、それは傲慢だし、上のチームに対して失礼だと考えるのが普通だったはず。


ところが最近、東大と横浜高校が試合をし、横浜高校が大差で勝ってしまった。


試合終了後、双方がこの試合の意義について自画自賛していたが、どう言い繕おうが、団塊農耕派は違和感を覚える。「大学生としては弱いが、高校生とはまだレベルに差がある」と信じたい人の気持ちを裏切り、「やはり東大は弱い、文武両道なんて不公平」という東大生軟弱論に根拠を与えてしまっただけのことだろう。



同じような試みが駅伝でもあった。万博を記念して実業団と大学生が一緒に走る初めての大会だったが、こちらはお兄さん格の実業団チームが大学の強豪チームに力の差を見せつけた。実業団はプライドを守り、大学生は天狗にならずに済んだ。選手(生徒)を商品化する青山の名物監督に塩を送るような企画は今年だけにしたほうがいい。



しかしそんな心優しい団塊農耕派も、大学時代、相手を見下して高飛車に出てしまったことがある。工学部の軟式野球部に挑戦したのである。


このチームは東京の理工系大学リーグで強豪だと息巻いていたが、練習を見るとそれほど上手いとは思えず、そのころ結成したばかりの『千葉県人会チーム』のほうが強いと思ったのである。


そして予想通りの結果となる。六大学リーグのチームと同じユニフォームを着たチームが運動着のままの寄せ集めのチームに負けたわけで、彼らの悔しさは半端ではなかっただろうと今でも思う。



ところがその悔しさを入社したS社の研究所野球部で味わうことになる。


弱いチームではなかったが工場のチームには歯が立たず、事業所別対抗戦で勝ち進むことはできなかった。そんな折、ある工場の同好会的なチームから挑戦を受けた。昭和40年に同期入社した人たちからなるオジサンチームだったので〝勝てる〟と思ったが、意外に強く、わがチームは惨敗してしまった。


大学時代のしっぺ返しみたいなもので悔しかったが、このチームはみな人格者で「たまたま勝っただけだよ」と言ってくれた。そうではないことは百も承知なのに。



情けない出来事もあった。野球部が横浜市のグランドを借りて練習していたときのこと、ユニフォーム姿の女性が大量に現れて「グランドを譲れ」と迫る。市がダブルブッキングしてこのソフトボールチームにも許可証が発行されていたことがわかるが、双方に譲る気持ちはない。


けんか腰になってしまったが、誰かが「1回戦だけ試合をやって勝ったほうが使うことにしたら」と言い出し、双方が納得する。今で言う〝タイブレーク〟というやり方だが、相手は女性だし、負けるはずはないとタカをくくっていたが、このソフトボールチームの強さは尋常ではなかった。完膚なきまでに打ちのめされ退散の憂き目となった。



幾つかの笑えない(いや嗤える)話を書いたが、好奇心や誤解、偏見から対戦相手を選ぶと嬉しくない結末が訪れる。体験者が言うのだから間違いない。

(団塊農耕派)

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