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【日本商業新聞 2026年10月19日号】相談相手はAIか人か

日本商業新聞
28 分前
読了時間: 3分

AIによる美容相談が普及し、「美容の悩みをAIに相談したい」とする生活者が46.4%に達した。こうした変化は化粧品専門店にとって脅威である一方、新たな価値を示す機会でもある。AIは成分情報や口コミの整理には優れるが、触感等の体験価値は代替できない。専門店は肌測定や対話を通じてAIの情報を生活者一人ひとりの肌や価値観に結び付け最適化する「翻訳者」となり、AIを入口、専門店を最終的な意思決定の出口とすることで、「販売の場」から「美容の意思決定拠点」への進化が求められる。(丸毛敏行)



■「AI相談」拡大の中 専門店の新たな存在価値は


AIによる美容相談が急速に普及している。2026年の国内調査では、「美容の悩みをAIに相談したい」と回答した生活者は46.4%に達し、前年から大幅に増加した。(※2026年Awarefyの調査による)特にZ世代では、AIチャットによる美容相談が日常行動として定着しつつあり、従来の「店頭で相談する」という行動は確実に変容している。


こうした環境変化は、化粧品専門店にとって脅威であると同時に、役割を再定義する好機でもある。AIが情報整理を担うほど、専門店が提供すべき価値はむしろ明確になるからだ。


AIは膨大な成分情報や口コミを瞬時に整理し、生活者の悩みに応じた候補を提示する。だが、肌の触感、香り、テクスチャー、季節による肌変動といった「身体性のある体験」はAIが扱えない領域だ。


専門店が担うべきは、この身体感覚を軸にした〝リアルな肌理解〟である。角質水分量や油分、キメ、透明度などの測定精度を高め、AIが提示した情報を生活者の肌実感と照合する。


経産省が提唱するJ‐Beauty構想では、 メーカー情報/専門家情報/生活者情報の3層で美容価値を伝える産業モデルが示されている。


AIの普及により、生活者は第1層のメーカー情報と第3層の生活者情報を容易に取得できるようになった。だからこそ、専門店が担うべき第2層の専門家情報の重要性は高まっている。


来店者は口をそろえ「AIで調べたけれど、結局どれが自分に合うのか分からない」と語る。


専門店が果たすべきは、AIが提示した成分情報や推奨商品を「その人の生活・肌・価値観」に翻訳する役割である。ブランドごとの世界観や処方思想を生活者の言葉に置き換え、最終的な意思決定を支援する。この〝翻訳力〟こそ、専門店の専門性の核となる。


AI相談が増えるほど、専門店は、AIが整理した悩みを生活習慣まで落とし込むなど来店前の情報接点を設計する必要がある。


このように、AIと専門店を対立させるのではなく、連携させる導線を構築することで、来店の必然性が生まれる。


過日、記者が取材した専門店においても、お客さまがカウンターでスタッフの提案を受け、満足して帰られる様子がとても印象的だった。


J‐Beauty構想が重視するもう一つの柱が「地域素材」である。椿、黒文字、酒粕、米、柚子など、地域の生活文化と結びついた素材を活かしたブランドが増える中、専門店は地域素材のストーリーを伝える役割を担う。


産地、生産者、生活文化との関係性を丁寧に説明し、地域ブランドの棚を育てる。専門店が地域のショールームとして機能することで、地域発ブランドの価値は生活者に深く届く。 


J‐Beauty認証制度では、商品品質・情報品質・体験品質が必須条件として定められている。専門店が強化すべきは、この「体験品質」である。丁寧な接客、使用方法のレクチャー、継続使用のフォローアップなど、日本らしい「おもてなし」を制度化し、体験として提供することが求められる。これはAIでは代替できない領域であり、専門店の価値が最も発揮される部分だ。


AI相談が増えるほど、専門店は「販売の場」から「美容の意思決定拠点」へと進化する必要がある。AIが情報を整理し、専門店が身体感覚・生活文化・体験を通して納得を形成する。この役割分担こそ、AI時代の化粧品専門店の新しい価値になっていくだろう。

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