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【日本商業新聞 2025年9月1日号】「このお店ならでは」という個性

  • 日本商業新聞
  • 9月3日
  • 読了時間: 4分

全国で、駅周辺の再開発が進んでおり、駅ビルやショッピングモール等、新しい商業施設が出来ている。


オープン前から地元や近隣エリアで大きな話題を集め、オープン直後の週末には周辺の道路は渋滞。しかし、数カ月もすると、それらの混雑は無くなり、周辺にある施設と同化してしまう。そんな経験をした生活者は多く、記者もである。


その原因は、その施設に個性が感じられず、すぐに飽きてしまうからだ。そして生涯顧客を増やすことを目指す化粧品専門店にとって、長年通い続ける顧客を増やすためには、「このお店ならでは」という個性が重要ということだろう。(半沢健一)



■美の体験を創り出す力


新たな商業施設ができても、その多くがすぐに飽きられてしまう原因は他の商業施設とテナント店の顔ぶれが殆ど同じなため、目新しさや面白さはすぐに薄れてしまうためだろう。つまり、その商業施設に対して、「このお店ならでは」というオリジナル性(個性)が感じられないからである。


お店ならではの個性は商品の品揃えをはじめ、サービスや空間演出、生活者との関係性の創り方からでも構築していくことが一般的だ。ただ、駅ビルやショッピングモール等の商業施設だった場合、施設の重要な商品である「テナント店」の顔ぶれにさほど違いがなくそのため、「一度は行けば十分」となり、短期間で飽きられてしまう。


「このお店ならでは」という個性が大切なのは駅ビルや商業施設だけでなく、化粧品専門店も含めて小売店全てに当然当てはまる。特に化粧品専門店の場合化粧品を取り扱う流通が数多くある中で、「化粧品がほしい」となった時、その生活者の選択肢に入るために欠かせない要素と言える。


化粧品専門店にとって「このお店ならでは」と思わせる個性とは何か。


それはカウンセリングや体験活動による差別化をはじめ、店舗デザインやスタッフ、さらにデジタルを活用した取り組みや顧客育成の仕組み等様々。商品のラインナップで、店ごとに大きく違いを出すことは難しい部分もあるが、それ以上に化粧品専門店の一番の魅力は「そのお店にしかない美の体験を創り出す力」だと記者は思う。


その力を十分に発揮していくために、お店特性だけでなく、地域や顧客の特性を踏まえて組み合わせていくことで「そのお店にしかない美の体験を創り出す力」を発揮していくこと。そして、同じ化粧品を展開していても、そのお店ならでは力によって、生活者のその化粧品に対する認識自体も変わる。それらのことを生活者が感じた時、「このお店ならでは」という心理が生まれるだろうし、そのお店にしか感じない特別感や共感、信頼感へと繋がっていくと考えている。


また、化粧品専門店において商品のラインナップで店ごとの個性を訴求するには難しい部分もあると述べたが、必ずしもそうではない。何故なら、認知度はそれほど高くないが、独自の個性を持ったメーカーや化粧品は数多く存在しており、それをお店の柱アイテムの一つとして取り組んでいくことで、お店が持つ個性の幅を拡げることも十分可能だからである。


■愛され、必要とされ続ける


本紙では今後、特別連載企画として月1回、様々なメーカーにご登場いただき、専門店流通への想いや期待感、注力するアイテムを紹介する。ご登場いただくメーカーの様々だが、共通しているのは「モノづくりへのこだわり」でそれも個性である。メーカーの個性を専門店の個性、つまり「そのお店にしかない美の体験を創り出す力」を通じて感じてもらえたならば生活者に「このお店ならでは」とは感じてはもらえないだろうか。


また、それは大手メーカーが展開する知名度の高いブランドであっても同じである。要はメーカーやブランド、商品が持つ個性を、専門店個々の個性を通して伝えることで、より魅力が増していくのである。これこそが「そのお店にしかない美の体験を創り出す力」だ。


長い期間、多くの地元生活者に愛されて、必要とされ続けるお店が1店でも多く在り続けるためには、そのお店自体の個性、そして化粧品専門店としての個性を発揮してもらうことが大切なことなのは言うまでもない。

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