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【日本商業新聞 2025年10月27日号】物価高で化粧品の選び方変化

  • 日本商業新聞
  • 10月28日
  • 読了時間: 4分

日本において、この1~2年、大きな問題になっているのが「物価高」。その背景には、円安やエネルギー価格の高騰に加え、人件費や物流費、原材料費等、ありとあらゆる価格が上昇している。


理由は様々だが、物価高で家計の圧迫や企業収益の変動、そして経済格差も起きている。そうなると、次に心配に思うのは「家計が圧迫されたことで、生活者の化粧品に対する意識に影響を及ぼすのでは」ということ。この化粧品業界にも影響を及ぼしているのは事実だが、それでも「物価高を理由に、専門店で化粧品を購入する人が減る」とはならないと考えている。(半沢健一)



■自分にとっての価値


ある専門店の店長の場合、「愛用し続けているブランドや化粧品は変わらないが、その使用量をセーブしているのか、お客様によって来店頻度が多少減っているように感じる。『正しい使用量でないと効果はありませんよ』と話す等して対応しているが、今後も暫く続くようなら、最悪の場合、ブランドや化粧品だけでなく、お店からも離れてしまうのではないか」と不安を口にする。このように物価高は、化粧品業界にも影響を与えているのは事実だが、それでも「物価高を理由に、専門店で化粧品を購入する人が減る」とはならない。


数年前に紙面で、社会全体が先行きに対する不透明感で、生活者が化粧品を選ぶ際の選択眼が厳しくなっているが、「自分にとって価値がある」「どうしても使ってみたい」と感じられる化粧品には高価格でも投資(購入)するという生活者が増えていると述べたことがある。勿論、これは化粧品だけに限ったことではなく、他の業界も同じ。要は、生活者がそのブランドや化粧品に「自分にとって価値がある」を感じることができれば購入するというこ

とである。


では、生活者の「自分にとって価値がある」とは何を意味するのか。単に価格や人気に左右されるものではなく、生活者が「高い納得感」「高い満足感」を感じるかどうかだ。そして、「自分にとって価値がある化粧品」を購入するのに相応しいお店の存在も大切である。ニーズや肌質にあった化粧品を紹介する提案力は勿論、丁寧でキメ細かい接客応対や心地良さを感じる空間やお店づくり、そして体験型のサービスを提供している等、価値を感じる化粧品と、それを購入するのに相応しいお店、この2つの要素が揃っていなければならないだろう。



■価値や魅力を引き出す店


だからこそ、化粧品専門店として目指すべき姿は、生活者が感じている化粧品の価値や魅力を最大限に引き出す、そして、その化粧品を使って美しくなった自分が想像できる、そんなお店であると考えている。価値を感じるお店で、価値を感じる化粧品を購入してもらうことこそ、そのブランドや化粧品、さらにお店のファンを増やすことにつながっていく。


そう考えていくと「価値あるお店=価値や魅力を最大限に引き出すお店」ということ。それはまさに化粧品専門店のことであり、そのために存在しているといえる。


そうしたお店であるためには、優れたスタッフの存在だけではなく、体験型の売場や独自サービスの提供、そして生活者とお店とのより深い関係性も欠かせない。それら全てが、お客様を対象に「喜んでもらう」「美しくなってもらう」「楽しんでもらう」ことに一貫していなければならない。


さらにもう一つ、店内の至るところに、経営者やお店の「お客様に対する思い」が感じられなければならないと記者は確信している。それらが全て揃って、生活者にとって「価値を感じるお店」となっていくし、化粧品専門店としての強みをさらに際立たせていくのではないかと思う。


冒頭で述べた通り、物価高を理由に生活者の選択眼が厳しくなっている今、生活者の化粧品に対する意識も「なんとなく購入する」のではなく、「価値を感じるものを選んで購入する」となっており、それは購入しなくなったではなく、選び方そのものが変わったといえる。そうした環境の中で、化粧品専門店としての存在感をさらに強めていくためにも、生活者にとっての価値を最優先にしたお店づくりや取り組みが求められている。

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