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  • 日本商業新聞

【2022/5/2 日本商業新聞】厳しさ増す「専門店流通」、「新価値創造」カギに

 コロナ禍をはじめ、人口減少や物価上昇など、化粧品専門店を取り巻く環境はより厳しさを増している。特に人口減少は新型コロナで加速度を増しており、インバウンド需要もほぼなく、国内需要のみで成長を図っていくことは避けられない課題だ。そうした中で、新たな顧客を獲得し成長していく為には、より顧客の幅を広げると共に、顧客との接点を増やす「新たな価値創造」が今後大きなキーポイントになると考える。



■厳しさ増す「専門店流通」


 新型コロナウイルスの世界的流行が始まって以降、人口減少は加速度を増しており、日本においても人口動態に影響を与える事象となりそうだ。


 厚生労働省の人口動態統計によると、2021年の「出生数」は前年比2万9786人減の84万2897人と6年連続で過去最少を更新。一方「死亡者数」は、コロナ禍1年目の2020年は新型コロナウイルス対策で他の感染症が流行せず、コロナ以外の肺炎やインフルエンザの死亡数が大きく減少したことにより、11年ぶりに前年より約9千人減少したが、2021年は再び増加し、前年比6万7745人増の145万2289人と戦後最多を更新した。


 「婚姻件数」も4・3%減の51万4242組と戦後最少となり、コロナによる婚姻数の減少が更なる少子化に繋がるという懸念に加え、確実に人口の減少が進むであろう日本において、化粧品業界においても大きな課題になることは間違いない。


 また、ウクライナ情勢による原油価格の高騰をはじめ、この4月からはあらゆる食品や紙製品等の値上げラッシュが続き、家計をもろに直撃するという不安材料も抱えている。


 そこで、今後化粧品専門店においては、多様化する流通チャネルに加え、「新型コロナウイルス」「人口減少」「物価上昇」という外的要因の中で、「いかに顧客を増やし成長を図っていくか」という長期的な戦略を考えていく必要がある。


 即ち、これまでのように女性客を中心とした展開に限らず、男性客までも対象にした「ジェンダーレス」での取り組みや、あるいは「新たなサービスによる価値提供」への展開も視野に入れていくべきだろう。



■ジェンダーレスの展開加速


 「ジェンダーレス」という点では、「メンズコスメ」を導入する店舗が徐々に増えてきている。例えば、4月22日にリニューアルオープンした「パルファン熱田店」では、155坪と東海地区最大級の売場面積となる店舗内に、愛知県初となるメンズコスメショップ「BOW」をオープン。男性も店内に入りやすく、男性が抱くコスメ、美容に対する疑問、悩みを男性スタッフがカウンセリングを行う。


 またある専門店経営者は『アルビオンのロングセラー商品である「スキコン」はジェンダーフリーアイテムとしても価値を見出せると感じており、今後展開を強化していく』というように、男性も入りやすい店づくりで新たな顧客創出に繋げていく考えを持つ経営者が増えてきている。


 次に、「新たなサービスによる価値提供」という点では、女性特有の悩みをケアする「フェムテックケア市場」が注目を集めている。「@cosme TOKYO」では、期間限定で「フェムケア売場」を展開しているが、開始1週間で売上計画比170%超えを記録するなど、新たな女性の悩みニーズにしっかりと応えていく取り組みに着手。


 また「フェムケア市場」は、全ての年代の女性にあてはまる幅広い悩み対応であることに加え、「家族や友達に相談しにくい」という悩みを抱える女性が多いことから、顧客のライフスタイルを把握し、信頼・安心感の高さを誇る化粧品専門店とはかなり高い親和性があるのではないかと感じている。


 このように、コロナ禍をはじめ、人口減少や物価上昇といった専門店が直面する課題の中で、顧客を獲得し成長していく為には、より顧客の幅を広げると共に、顧客との接点を増やすことが大きなカギになるのではないだろうか。

(中濱)

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