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  • 日本商業新聞

【2023/2/27 日本商業新聞】〝情報発信力〟問う時代へ・強さみせた〝デコルテ〟 

 従来の化粧品専門店流通では「良いものをつくり、良い店で売る」という考え方が主流であったが、ニューノーマルな時代を迎え、「良いものをつくり、多くの人に広めていく」という〝情報発信の強化〟が今、化粧品メーカーに求められているように感じている。実際に、コーセーの「デコルテ」では、広告宣伝の戦略を強化したことで認知度が向上、コロナ禍という厳しい環境の中でも大きく成長し専門店流通をけん引した。この変革に乗れるか否か、今メーカーの真価が問われている。(中濱)



■〝情報発信力〟問う時代へ


 コロナ禍を経て、時代はニューノーマルへと変化した。その中で、化粧品業界において最も大きな変革をもたらしたのが「情報発信の在り方」だと感じている。


 デジタル化が急速に進み、広告宣伝の媒体においても、これまで主流であったテレビや雑誌、新聞などに加え、YouTubeやインスタグラム、ツイッターといった「SNS」が台頭し、情報発信力の強い人を意味するインスタグラマーやユーチューバーといった新たな広告塔が生まれるなど、情報化社会は加速度的に進化した。


 化粧品専門店においても、手軽に情報を発信できるという利点を活かし、SNSを通じてお店の紹介やメイク動画を発信するなど積極的な展開を図っている。


 このように、デジタル化が進んだことで、情報量が以前よりも格段に増え、あらゆる場所から情報を入手することが可能になったというメリットが生まれた一方で、情報が多すぎるがゆえに、〝刺さる情報〟でなければスルーされてしまうといった、「情報発信力のハードルも上がった」というデメリットも同時に生まれるなど、今デジタルの分野では発信力の競争が激化の一途をたどっている。



■強さみせた〝デコルテ〟 


 こうした時代背景の中で、顧客心理を上手くキャッチし、情報発信力においてひと際強さを発揮したのがコーセーの「デコルテ」だ。


 デコルテは厳しいコロナ禍の中でも大きな成長を示し、専門店流通をけん引したといっても過言ではないが、その大躍進のきっかけとなったのが「モイスチュアリポソーム アドバンストリペアセラム」の発売における〝情報発信力の強化〟だと確信している。


 強さを発揮した情報発信の要点は3つ。1つめが、タレント等を使わず、「商品」のみにスポットをあて、ダイレクトに商品特長を訴えかける宣伝方法。2つめが、テレビやSNSなど、あらゆる媒体に一点集中的に広告宣伝を投下することで、必ずどこかで広告を目にするという、より強い印象を与えたという手法。そして3つめが、広告宣伝だけでなく、同時に「3日間サンプル」を配布することによって、〝使ってみたい〟と思った消費者を広くキャッチした点が挙げられる。


 この戦略が多くの消費者に「デコルテ」の存在を広く知らしめることとなり、また広告宣伝と連動した店頭活動や商品力が合わさって〝ブランド価値〟が一気に高まったと感じている。


 23年度も同戦略を強化していく方針を示しており、更に大谷選手や羽生選手を起用することで、企業イメージという観点からも価値アップが図られていくだろう。



■メーカーが求められる役割とは


 一方で、専門店からこうした声が届いている。「店頭としてやるべきことの第一義は〝活動〟であり、活動を通して愛用者を増やしていくことは今後も変わりない。しかしながら、情報化社会の今、商品やブランドを広く沢山の方に知ってもらうという点に関しては、やはり店頭活動だけでは限界がある。そうした時代背景も含め、今後メーカーは広告宣伝の強化にも力を入れてほしい」と話す。


 即ち、「良いものをつくり、良い店で売る」という従来の考え方から、ニューノーマルな時代においてメーカーに求められていることは「良いモノをつくり、多くの人に広めていく」取り組みが必要不可欠になると考える。そして良い店でしっかりと顧客を育成していくことで、盤石な体制へと成長していくのではないだろうか。


 この変革に乗れるか否か、今メーカーの真価が問われている。

(中濱)

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