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  • 日本商業新聞

【2023/2/13 日本商業新聞】リアル重要性高まる 選択眼、更に厳しさ増す

この数年間、小売業における「販売方法」でよく見られたのは、オンライン(デジタル)とオフライン(リアル)を融合させた仕組みだ。オンラインで商品や店舗の情報をリアルタイムで広く発信して生活者とのタッチポイント(接点)を多くつくり、リアル店舗への来店を促し、実際に商品に触れたり、体感してもらう方法。そして今、オンラインの新たな切り口として「利便性」にフォーカスした仕組みも増えており、オンラインとオフラインを融合させた販売方法の形は多様化。この化粧品業界においてはオンラインとオフラインの在り方がどう変化していくのだろうか。(半沢)



■選択眼、更に厳しさ増す


 これまではオンラインオフラインそれぞれの利点を生かしてながら様々な場面で接点を増やして販売機会を増やす方法が主流だったが、今は多様化している。例えばオンラインの活用方法の一つとして、今まで商品や店舗の情報をリアルタイムで広く発信することが多かったが、今はファーストフード店等で事前にアプリで注文しておいて店頭で商品を受け取る「オーダーモバイル」や、ユニクロ等のアパレルでは全国にある店舗の在庫を確認して自宅近くの店に取り寄せることが出来る等、「利便性」を訴求する仕組みが増えている。


 昨秋、大手コンビニエンスストアチェーンのローソンがウォークスルー決済導入店「ローソン・ゴー」を都内にオープンさせた。特長は、専用のアプリで店頭のQRコードを読み込んで入店するだけで、自由に商品を選び店外に出ると自動的にクレジット決済が行われるというもの。メリットは、レジに並ばず簡単に会計を済ませられることで、特にオフィス街のコンビニでは昼時になると会計待ちの行列を頻繁に目にするが、それを気にしなくていいのである。


 こうした新たな手法は「ローソン・ゴー」以外にも徐々に増えており、オンラインを単なる生活者との接点の拡大や情報発信を行い、リアル店舗への送客のためのツールとしてだけでなく、生活者に「利便性」を提供するためのツールとしての使い方も今後さらに増えていくと思われる。


 一方で化粧品業界でのオンラインを活用した取り組みはどうなのか。現在、多くの化粧品メーカーでは情報発信だけでなく、スマホで簡単に肌診断やメイクシュミレーター、リモートカウンセリング、ライブコマース等に取り組み、化粧品への期待や自身の肌のことを知りたいというニーズに応える新たなコンテンツとして期待されている。



■最後は自身の肌で体感が重要


 ただ、記者はこのオンラインに対し、情報を広く発信して生活者との接点を増やすのは勿論のこと、様々なコンテンツで生活者の化粧に対する興味や関心を高め、最終的に店頭に足を運んでもらうこと、つまり「店頭への送客」が一番の役割だと考えている。何故なら化粧品を肌に塗布した時の感触や香り、そして効果感は自身の肌で試してみなければ実感出来ないからである。以前、ある通販化粧品メーカーの社長との会話の中で「ネットで注目のブランドでもある一定の売上規模に達すると成長スピードは鈍化する。その時に多くの企業では直営店等のリアル店舗を作る」と説明。


 さらに昨年から様々な商品が値上りしていることから、「なるべく節約したい」「買い物を失敗したくない」という心理も高まっている。だからこそ、オンラインで商品情報を把握していても、やはり最後は「お店でアドバイスを受けて、自分の肌で確かめたい」と考えるのが自然ではないか。


 オンラインで生活者との接点を増やしながら情報を広く伝えて来店を促し、オフラインのリアル店舗で化粧品の価値や機能を体感してもらうという、この一連の流れはこれまで当たり前に行われてきたことだが、ここにきてその重要性はさらに高まっているように思える。ましてや専門店で展開する化粧品はセルフ化粧品よりも高額で、期待が高い一方で厳しい目で見られている。ただ、それでも「この化粧品でキレイになれる」と期待を高める生活者は多く、その想いやニーズに応えるには、お店のスタッフやメーカー美容部員による、キメ細かいカウンセリングと寄り添ったお手入れ提案以外にない。

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