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日本商業新聞

【2024/1/1 日本商業新聞】24年は「人財の最大化」が鍵に/〝人材不足〟が顕著に/化粧品専門店にチャンス到来

■専門店市場の展望


 2023年の化粧品業界は、5月にコロナが5類へと移行したことで本格的なリアル回帰へと動き出した。3年間我慢を強いられていた様々な制限から解放されたことによって消費者の外出意欲は高まり、各種イベントもコロナ前に戻るなど市場は活発化。マスクの常態化によって長らく低迷を余儀なくされていたメイクも復活の兆しを見せ始めている他、スキンケアにおいてはプレステージ商品が順調な動きを示すなど、国内の化粧品市場は回復基調に転じた1年となった。


 しかしながら、東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出が始まって以降、中国で日本製化粧品の買い控えが起きていることや、物価高騰による消費意欲の低迷など不安材料も片側で抱えており、完全なる復活とは言えない状況も続いている。


 そうした中、化粧品専門店流通においては、リアル回帰と共に専門店の一番の強みであった「肌に触れる活動」がようやく動き出したことに加え、各メーカーから話題の新製品が続々と発売されたことが追い風となって店頭活動を盛り上げた。


 専門店向けに行ったアンケートによると、大半の専門店が「前年実績を上回った」と回答しており、特に脱マスクが進む集客立地の専門店が流通をけん引。そして少し遅れる形で地域密着型店舗の実績も上がりつつあるという印象を受ける。


 また中には「2019年の実績も上回った」という店舗も出てきているなど、活動の再開とプレステージ商品の好調、話題の新製品の投入が好調さを押し上げたと言えるだろう。


 2024年度は、2023年の勢いを受け更なる成長市場に入っていくと考えられるが「人を介し商品の魅力を伝えていくこと」が主戦場の専門店において、今、人材不足の慢性化は最も大きな課題として挙げられており、2024年は〝人財の獲得〟と〝人財の最大化〟に取り組んでいくことが、次なる成長への鍵になるのは間違いない。


 聞くところによると、あるお店では「美容部員の派遣基準に達しているものの、美容部員自体の数が足りないという理由で入店に至っていない」というように、メーカーにおいても現場で活躍する人材の減少が顕著に表れているという。


 そういった意味では〝人〟に関する問題は、専門店だけでなくメーカーも含め流通全体で捉えていく課題であり、抜本的な改革が迫られていると言えるだろう。



■多様な働き方改革が進む専門店


 そこで「人財の獲得」という点では、メーカー及び化粧品専門店の共通認識として、「化粧品販売が魅力ある業種であると認識していただくこと」=「化粧品販売(専門店)の社会的地位向上」が必要不可欠になる。その中で、大きくは「給与UP」と「福利厚生の充実並びに働き方改革」の2つが挙げられる。


 特に後者の「働き方改革」は、以前は結婚や出産で退職する人が多かったが、今は人材の補充が非常に難しい時代であるだけに、女性のライフスタイルの変節点である「結婚・出産・育休・介護」といった人生の岐路の中で、どの場面に直面しても仕事を続けることができる環境整備が求められている。


 この点に関しては専門店の取り組みが進んでおり、例えば、出産明けはパートから始まり、徐々に正社員へと段階を踏んでいく「ステップアップ方式」の導入の他、自身の成長と共にキャリアを積み上げいく「キャリアアップ制度」を取り入れるなど、スタッフ1人ひとりのライフプランに合わせた働き方を設けるお店が増えている。


 また福利厚生面では、スキンケアの割引購入制度や誕生日休暇、社員旅行等、働くことへのモチベーションや意欲向上に繋げることで「永く働きたいと思えるような職場づくりを目指す」取り組みが進んでいる。


 次に「人財の最大化」という点では、まず美容部員や営業の仕事内容をよりシンプルにし、例えば美容部員でいうと品出し業務や店舗の片づけ作業など、アウトソーシングができるものは外注に切り替えることで、本来の目的である「お客様の獲得・育成」に特化した仕事へと専門性を突き詰めることで、より専門性を極めた部隊へと変革していくことが1つ。


 2つめが、美容部員をチャネル別で分けるという考え方から、チャネルに関係なく、必要な店舗に必要な人材を派遣していくという「チャネル横断型」での体制へと変更は出来ないかと考える。なぜならば、俯瞰的視点で人材活用が図れると共に、効率化が進むことによって、より沢山の店舗に人を派遣できる体制ができるのではないかと思うのである。


 またこうした仕組みを作り上げることが出来たならば、美容部員の派遣についても、これまでは売上による選定が基準であったが、例えば伸びしろのあるお店、またはやる気のあるお店に対して〝スポット派遣〟を取り入れることも可能となり、全体的な売上の底上げを図ることも可能なのではないかと感じている。


 この背景には、特に地域密着型の専門店において、日常の業務については問題ないが、売り出しのセールの時に1人戦力が増えただけで売上増に繋がるお店、あるいは「イベントを行いたいが人手が少ないため開催出来ない」といった悩みを抱えているお店は多く、こうしたスポットの悩みに寄り添えてこそ、メーカーと専門店の真の共存共栄に繋がっていくと思うのである。


 また人材不足については、GMSなど他流通においても深刻化しており、「化粧品売場のカウンターに販売員がいない」という状況が至る所で見受けられている。要するに、「人を介して化粧品を購入できる場所」が以前よりも確実に減っているということだ。即ち、この〝人〟に関わる問題は、見方を変えると化粧品専門店にとってチャンスと捉えることもできる。


 このように、2024年は「人財の獲得・育成・最大化」が次なる成長の大きな鍵になることは間違いない。変革の時代において新たな意識改革が求められている。

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