top of page

【日本商業新聞 コラム】-757- 人材育成

  • 日本商業新聞
  • 2 日前
  • 読了時間: 3分

ある著名な経営者の講演を聞いた。人材育成の話だった。彼は言う。「最近の若者はみな優秀。特に優秀なのは数社も経験してから当社の門を叩いた人たちです」 



グローバリゼーションや成果主義が企業を成長させるという信念を持つ人の話だから当然かも知れないが、団塊農耕派は強い違和感を覚えた。団塊農耕派は一つの化粧品会社にしがみついて生きてきたが、同じような人たちの力によって会社は大きく成長したと確信しているからだ。


当時の自由闊達な開発風土は誇れるレベルにあったと今でも思っている。むしろ出来の悪い人ほどいろいろな会社を渡り歩いていた。一方この経営者のような人材育成(正確には人材採用)を行っている会社は、アベノミクスなどで一時の急激な成長は果たしたものの、その後の体たらくは目を覆うばかりだ。


愛社心に乏しい自薦者や環境の激変に仕事のベクトルを見失った社員の屍が散乱し、殺伐な企業風土を醸し出しているケースが多い。化粧品も取引先も苦手だが、マーケティングは得意、そんな社員が増えている。



企業の成長の原動力だったのに無駄だと決めつけて捨ててきたもの、現役で言えば社内旅行や運動会、OBで言えば同窓会、そんなものの復活に最近は関心が払われているようだ。


コロナ以降の就業に関する意識は、テレワークの良さを体験し、これからもそれを続けたいと思う人たちと、元の人恋しい世界にもどりたい人たちに2分されているそうだ。見直し&復活願望は後者により支持されている。



ところで最近、団塊農耕派は100人規模の同窓会に出席したが、老境に差し掛かっているのに発散するエネルギーの熱さに驚かされた。記憶力の確かさ、丹精込めて作った商品の思い出、現役が知っておくべきことが山積されていた。


個人情報の漏洩が心配という理由から社内報も慶弔の知らせも届かなくなった昨今の状況下で、この種の会合を切望しているOBが如何に多いかも知ることが出来た。ちなみにこの会には2、3年だけ籍を置いたジプシーも含まれるが、ドタキャンする人が多く、心より旧友との再会を望む従来のOBとの温度差を感じざるを得なかった。ジプシー社員に愛社心が無いとは思いたくないが、数社の体験があればその分薄まるのは仕方の無いことだと思う。



失われた○○年と言われ、日本企業は活力を失ってきたが、その最大の要因は人材への投資を怠ってきたことだと思う。社長は総じて小ぶりで、蓄財だけを使命とする経営に勤しんだ。賃金を凍結し、正社員を減らし、苦しくなればタコのように自分の足を食べつくす…、これでは社員は育たないし、文化は失われる。ここにきて外圧に屈して賃金を上げているが、そんな原資があったのならもっと早く分配すべきだったと言う意見は当然のこと。


問題は人材育成の手段。金融やマーケティングを学ばせ、MBAを取らせるのが育成ではないと今度こそ悟るべき。今年は午年だが、颯爽と駆け抜ける優駿を作るのではなく、馬の支えとなる鐙や蹄鉄を強固なものにする時。暗いなら電灯をつけるように、笑いが失せている会社に必要なのは社員同士の心の交流だと思う。濃厚な「企業内家族主義」の復活は有効な打開策となると思う。決して懐古主義ではない。

(団塊農耕派)

コメント


bottom of page