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日本商業新聞

【日本商業新聞 コラム】心意気と美学 -636- 蛙化現象と蛇化現象

Z世代で流行っている言葉だそうだ。ずっと好きだったのにあるタイミングで目にしてしまう相手の些細な仕草に幻滅を感じて嫌いになるのが「蛙化」、逆にダサく、かっこ悪いと思っていても、次第にそこに愛情や親しみを感じて好きになるのが「蛇化」。


 最初に流行ったのが蛙化だそうだが、そういうネガティブな発想を持ち続けていたのでは友達を作れないと気づき、もっと心広く生きようと考えたのが蛇化と言うのだから、その急変振りに世のおじさんたちはついていけない。蛙を鵜呑みにしまうという意味で蛇は登場したらしい。



 だいぶ前、成田離婚という言葉が流行ったことがあるが、これは蛙化現象の典型で、かっこ良かった男性が旅行先の海外では借りてきた猫以下で、それに幻滅を感じた女性が帰国するなり、新居に行かず、成田から実家に直行してしまうという悲しい物語だ。会社勤めのころ団塊農耕派の周りにも数組ほど発生し、周囲はその早い決断に驚いたものだ。


 一方、蛇化現象は団塊農耕派のオハコでもある。初対面で善悪の決めつけが激しく、特に悪い印象を持った人をこき下ろすのが団塊農耕派の良くない癖だと周囲に言われるが、しぶしぶ会った2回目でその判断が簡単に覆り、「あいつはいい奴だ」と手のひらを返すのだからその無節操ぶりは責められてもいい。



 ただ弁解するわけではないが、一度下した烙印にこだわらず、相手の良さを見つけてあげる姿勢は褒められてもいいと思う。


 Z世代の蛙化現象の遠因は間違いなくネット社会にある。飾った情報に惑わされ、表層的な部分だけで相手を知る構図は、見合い写真一つをだけで結婚式まで相手と言葉を交わすこともなかった昔の出会いのカタチと五十歩百歩で、とても危険と言わざるを得ない。それでも昔の花嫁は蛇化現象のカガミのような人たちばかりで、離婚することもなく耐え続け、そのうち夫の良さを見つけ、幸せな家庭を築いた。


 今のZ世代に同じような忍耐を求めるのは酷だが、冷静な判断をする時間は実行前にいくらでもある。ネットと言うウソ満載のツールに頼らなければ、迷路に入り込むことは無い。



 そう考えるとネットなど無いほうが人間は幸せになれるのかもしれない。誰がつくったかわからない情報に自分を合わせることの味気無さを知り、自分のリアルな体験だけを通して独自の世界観、価値感を作ったほうが、道を誤らず、充実した人生を送れそうな気がする。また人間の質も向上するような気がする。相手の欠点をあげつらううちは自分も幸せではないが、その欠点の中に愛おしさやポテンシャルを感じることにより、より高質な幸せを感じるようになる。



 化粧品のネット通販も嘘ばかりで嘆かわしい限りだが、消費者がこれほどあからさまで、欺瞞っぽいコンテンツを何故信用するのか、どう考えてもわからない。僅かばかりの知性があれば購入につながらないと思うのだが、現実はそうではない。たやすく吊り上げられてしまう。絶対に生えない育毛剤やありえない若返りのスキンケア、毒が薬にみえる鏡など覗かないほうがいい。


 化粧品専門店が「白馬の騎士」になる時代は間違いなく来ている。

(団塊農耕派)

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