【日本商業新聞 2026年8月31日号】高価格帯クリーム市場再拡大 / 主要メーカー投入加速
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今、高価格帯クリーム市場が再び活況を呈している。
資生堂・コーセー・アルビオン・カネボウ等のメーカーが高機能クリームを相次ぎ投入。和漢成分、角層浸透、ハリ構造、日中用など各社が独自技術で差別化している。その背景には、エイジング需要の再拡大、単価上昇による収益確保、自己投資消費の定着がある。競争激化で体験価値の重要性が増す中、専門店には価値体験型売場、高価格帯専用カウンセリング、スター商品の育成など売場再設計が求められている。高価格帯クリーム市場の競争はさらに激しさを増す見通しだが、技術革新と体験価値の両輪で市場を牽引できるかが、今後の商戦の成否を決めることになりそうだ。(丸毛敏行)
■主要メーカー投入加速
高価格帯クリーム市場が再び活況を呈している。資生堂、コーセー、アルビオン、カネボウといった国内主要メーカーが、春夏の新製品として相次いで高機能クリームを投入。百貨店チャネルを中心に、単価3万円前後の高機能クリームが前年を上回る売れ行きを示しており、業界内では「高価格帯の再成長」が明確になりつつある。
資生堂は「フューチャーソリューション LX」や「クレ・ド・ポー ボーテ」を軸に、コーセーは「コスメデコルテ AQ」、アルビオンは「エクシア」「アンフィネス」、カネボウは「クリーム イン デイ」と、各社ともに、和漢成分、角層浸透、ハリ構造、日中用など独自技術で差別化をはかり、スキンケア習慣の拡張をめざしている。
高価格帯クリームが好調を維持する背景には、まず「エイジングケア需要の再拡大」がある。コロナ禍で停滞した対面カウンセリングが回復し、肌悩みの相談が増加。特に40~60代の消費者を中心に、シワ・ハリ・くすみといった複合的な悩みに対応する〝総合クリーム〟への需要が高まっている。メーカー各社は、細胞研究・角層浸透技術・独自成分の開発を強化し、単なる保湿ではなく「構造からの改善」を訴求する製品を拡充した。
次に、「高価格帯の収益性の高さ」がある。国内化粧品市場は人口減少の影響を受け、数量ベースの成長が見込みにくい。こうした中、単価上昇による売上・利益の確保は各社共通の戦略となっている。高機能クリームは、1品で複数の機能を担う「オールインワン的高機能」として位置づけられ、単価上昇を消費者が受け入れやすいカテゴリーでもある。
さらに、ポストコロナでの「自己投資消費」の定着も追い風だ。旅行・外食などの消費が戻る一方、スキンケアへの支出も増加。カウンセリングを通じて高価格帯へアップセルする動きが顕著で、各社の高機能クリームは「自分へのご褒美」として選ばれるケースが増えている。
売上状況を見ると、インバウンド需要の回復も寄与し、特に資生堂・コーセーの高級ラインは海外客の購入比率が高い。国内消費者においても、単価上昇への抵抗感は想定より小さく、むしろ「確実に効果を感じたい」という意識が高まっている。
当社の取材においても、「自分にとって本当に必要と思える商品なら、美類は減っても高機能性を求める」消費者が増えている傾向が顕著だ。
■価値体験の再設計が課題
メーカーの動きが加速する一方、化粧品専門店には売場の再設計が求められる。高価格帯クリームの需要増は、専門店にとって大きな商機であると同時に、従来の棚構成や接客スタイルを見直す契機となる。
①「価値体験型売場」への転換
高価格帯クリームは、単なる商品説明では購買につながりにくい。専門店が取るべき第一の対策は、「価値体験型売場への転換」だ。
具体的には、肌診断機器を活用した「悩みの可視化」、テクスチャー体験を重視した「感触カウンター」、香りの世界観を伝える「香りゾーン」など、商品価値を五感で理解できる売場設計が求められる。高価格帯は体験価値が購買の決め手となるため、売場の滞在時間をいかに伸ばすかが鍵となる。
②「高価格帯専用カウンセリング」の導入
高価格帯クリームは、悩みの深さや生活習慣に応じた提案が不可欠である。専門店は、高価格帯専用のカウンセリングメニューを設けることで、提案の精度を高めることができる。
③「高価格帯スター商品」の育成
専門店が高価格帯を伸ばすには、ブランド横断でスター商品を育成する戦略が有効だ。
自店の取り扱いメーカーの商品の中から、地域特性や顧客層に合った1~2品を選び、重点的に体験・訴求を行うことで、売場の回転率を高められる。
スター商品は、季節キャンペーンやポイント施策と連動させることで、専門店独自の〝高価格帯の強み〟として定着させることができる。
高価格帯クリーム市場は、人口減少化でも成長が期待できる数少ないカテゴリーとして、メーカー各社の戦略の中心に位置づけられている。今後は、酷暑対応の軽質感処方、日中ケアの拡張、サステナブル素材の採用など、生活者の変化に合わせた新たな提案が求められる。
専門店にとっては、売場の再設計と体験価値の強化が勝敗を左右する。高価格帯の競争はさらに激しさを増す見通しだが、技術革新と体験価値の両輪で市場を牽引できるかが、今後の成否を決めることになりそうだ。


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