【日本商業新聞 2026年5月18日号】地域インフルエンサーに商機
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今までの活動を視点や方法等の角度を少し変えるだけで、より高い成果につなげたという話を聞く。北海道旭川市の化粧品専門店「cosme910イオンモール旭川駅前店」(工藤貴弘社長)もその一つ。お店のリニューアルオープンに際し、旭川周辺の情報を発信する地域密着型のインフルエンサーとの取り組みで、認知拡大や新規客獲得で大きな成果を上げた。そこでのポイントは、「地域密着型のインフルエンサーの起用」「専門店が普段取り組んでいる活動の価値や魅力を知ってもらう」ことに徹した2点である。(半沢健一)
■地理的特性を活かす - 旭川・専門店での成功事例
お店は先月リニューアルオープンに際し、「新しいお客様との出会いを増やすこと」をテーマに掲げた。お店では、今まで新聞折込や紙媒体、ホームページ、SNS等で情報発信していたが、思うような効果が得られなかったことや、従来の方法では情報を届けきれていなかった生活者の認知拡大を狙いに、インフルエンサーを活用した新たな情報発信に取り組んだ。
その内容は、1~4万人のフォロワーを持ち、旭川周辺の情報を発信している地域密着型のインフルエンサー3名を起用し、お店の紹介動画を投稿するというもの。動画の内容も、お店からの細かい指示はなく、「スキンケア体験や肌測定、接客応対やお手入れ提案、さらにメイク直しやサンプル提供等、専門店の普段の活動を知ってもらえれば」とだけ依頼をした。
各インフルエンサーがお店のオープン前後に動画を投稿したところ、短期間で予想以上の反響をよんだ。最も反響の大きかったインフルエンサーでは、オープン後2週間で再生数9万3千回を突破、100件超の「いいね」を獲得。その他のインフルエンサーの動画も再生数2万回を超え、工藤社長の狙い通り、届けきれていなかった生活者へ情報を届けた。
実際、オープン初日から、来店のきっかけが動画という方が多く訪れる等、新規客数は大幅に増加。具体的には、某ブランドの場合、これまで月平均100名強だった新規客数が、リニューアル後1週間で前年同月実績を達成。また、男性客も工藤社長の体感だが約5倍に増加。フレグランスやメンズスキンケア売り場を中心に、若年層だけでなく、50~60代男性の来店も増えたという。工藤社長は「こんなに早く効果を感じるのは初めて。費用も少なく、費用対効果が高い」と話す。
成果を上げた理由について工藤社長は「幾つか理由はあると思うが、地域密着型のインフルエンサーを活用したことが大きい」と分析する。
北海道は面積が広い一方、人口密度は低く、地域ごとに商圏ができやすいという地理的特性を持つ。旭川もその一つで、近隣に大きな商業エリアがなく、最も近い札幌市まで車で約2時間、電車で約1時間半掛かるため旭川で買い物を済ませる人が多い。そして、今回起用したインフルエンサーは美容系ではなく、旭川周辺の飲食店や地域情報を日常的に発信しており、今まで専門店や取扱いブランドに接点がなかったが、潜在的に興味・関心を持つ生活者に広く情報を届けた。
そしてもう一つ、専門店の普段の活動を知ってもらうことに徹したことも大きい。旭川はこの数年、百貨店の相次ぐ撤退や専門店の減少で、カウンセリングを受けながら化粧品選びが楽しめる場所が少なくなっている。その中で、スキンケア体験や肌測定、接客応対、お手入れ提案、メイク直し、サンプル提供等、専門店の価値や魅力を多くの生活者に知ってもらえたことも要因となった。
工藤社長は「専門店にとって日常的なことも、利用経験のない方には非日常的。今回の取り組みでは、これまで当たり前に取り組んできた価値を違う角度で発信することで、今まで以上の成果につながった」と話す。
今後の情報発信への取り組みだが、新聞折込や紙媒体に一定の効果を感じている一方、今回のSNSを通じた情報発信でこれまで届けきれていなかった生活者へのアプローチとして可能性を感じているため、紙媒体とデジタルを組み合わせて情報発信の幅を広げる他、男性へのアプローチ強化として、男性インフルエンサーの起用も視野に入れている。



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