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【日本商業新聞 2026年4月13日号】Z世代支持集める書店に学ぶ - 体験価値再構築が鍵

  • 日本商業新聞
  • 43 分前
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今年3月にリニューアルオープンした東京・神保町の老舗書店「三省堂書店」が、Z世代からも大きな支持を集めている。


〝読む前〟の体験設計にこだわった店舗づくりが、Z世代にも強く刺さり、SNSでも「選書体験そのものが新鮮」「書店が文化空間として再生した」といった声も多く、単なる書籍販売を超えた成功事例として評価は高い。厳しい経営環境が続く書店業界だが、創業140年超の老舗が新たな客層を取り込み、街全体の活性化にもつなげる仕掛けとして注目されている。そこには化粧品専門店が今後Z世代を獲得するための多くのヒントも詰まっていると感じる。(丸毛敏行)



■ 体験価値再構築が鍵


リニューアル当日の「三省堂書店」本店には、約800人が行列を作り、本好きのファン層や観光客をはじめ幅広い年齢層が集まり、若い世代の姿も目立った。


今回のリニューアルの核心は、〝読む前〟の体験設計にある。従来のジャンル別陳列を廃し、テーマ別編集による空間構成を採用。照明や什器を活用し、書籍を美術品のように展示することで、来店者の「発見欲」を刺激。また、客の推薦コメントをPOPとして即時反映する仕組みを導入し、双方向性を強化したことも大きな鍵だ。コミック・文芸の重点化や回遊設計にこだわったことで、若者や衝動買い層を呼び込み、旧店舗よりカジュアルな客層の増加につながっている。


同様に、使う前の体験設計の創出は、Z世代(1990年代後半~2010年前半生まれ)の化粧品購買行動の大きな軸となる。SNS起点の情報収集が主流となり、インフルエンサー投稿やレビュー動画を踏まえて店頭で検証する流れが定着。購入動機は「手軽さ」「お得感」「デザイン性」が上位を占め、従来の機能性偏重の訴求だけでは響きにくい。さらに環境配慮やブランドの透明性を重視し、「自分ごと化」できるストーリー性も増す。



では、化粧品専門店は「三省堂書店」の事例から何を学べるのか。 


一言でいえば、従来の「カウンター型接客」中心から脱却し、「体験型価値の再構築」へ舵を切ることによるZ世代集客の可能性である。活気のある化粧品専門店の取材でも、就活生向けメイクレッスン、親子で学ぶUVケア、パーソナルカラー診断など、専門店ならではの強みを生かした「体験型施策」によって集客を伸ばしている事例が多く確認できた。これらを踏まえると、今後の化粧品専門店が体験価値を再構築するためには、次の視点が重要となる。


まず重要なのが、「感情起点の売場編集」へのこだわりだ。 製品を機能別に並べるのではなく、例えば「夜のリセット」や「自己肯定の瞬間」といった心理テーマでゾーニングし、Z世代の気分変動に寄り添う提案で購買の納得感を高める。


「セルフ試用環境の強化」も大きな鍵だ。個室型テスターコーナーやAI診断ツールの拡充で対面販売への抵抗感を軽減。QRコード連動で成分情報やユーザー事例を即時表示すれば、SNS共有意欲の喚起にもなる。



■専門店の新ステージに期待


「共創メカニズムの構築」も重要な視点であり、来店者の使用レビューをデジタルボードに反映し、売場を進化させるといった「三省堂書店」の〝顧客の声を即展示する〟手法を応用すれば、顧客コミュニティの形成につながる可能性も大きい。「サステナビリティの視覚化」も重点ポイントであり、パッケージレス販売やリフィルステーションを常設。倫理観への訴求が、ブランド選択の判断基準にも結びつく。


これらの施策は、三省堂の事例が示すように、Z世代の「参加意識」を取り込み、長期的な売上基盤の構築につながる。ECとの競合が激化する中、リアル店舗の独自価値は「体験の深さ」にこそ宿る。SNSの急速な発展による〝デジタル疲れ〟も指摘される今こそ、専門店は「買う場所」から「美を再定義する場」へと転換する発想が求められる。


「三省堂書店」の挑戦は書店再生にとどまらず、街全体の活性化にも寄与する小売の未来像を提示した。化粧品専門店もまた、Z世代の感性に寄り添う体験革新を生み出せば新たな成長軌道を描けるはずだ。専門店の新たなステージに期待したい。

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