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【2025/4/28 日本商業新聞】ブランドや商品への「信頼感」

  • 日本商業新聞
  • 5月1日
  • 読了時間: 4分

2025年も原材料価格や物流費の高騰により、様々な分野で価格高騰の動きが広がっている。化粧品業界も今年、多くのメーカーが価格改定を実施。そのため「化粧品の使用量を減らしたり、ブランドのランクを下げたり等する生活者が増えるのでは」という不安の声がある一方、以前と変わりなく、きちんとお手入れを続ける生活者もいる。そんな美容意識の高い生活者が大切にするのが、ブランドや商品への「信頼感」。そして、信頼感を構成する様々な要素の一つ、「効果」が担う役割はさらに大きくなっている。(半沢健一)



 今年「NARS」「イプサ」「ランコム」「メイクアップフォーエバー」「イブサンローラン」「シュウウエムラ」「シャネル」「KANEBO」「エレガンス」「クレ・ド・ポー ボーテ」「SHISEIDO」等、多くのハイプレステージブランドが一部商品の価格改定を実施。6月には「コスメデコルテ」も価格改定を行う予定となっている。


その背景には原材料をはじめ、製造コストや人件費、物流コストが世界的に高騰していることが挙げられる。この傾向は化粧品業界だけでなく、様々な業界で今後しばらく続くと予測され、生活者を取り巻く経済環境の厳しさは増すばかり。そうなると、化粧品の使用量を減らしたり、ブランドのランクを下げる等する生活者が増えることが十分に考えられる。



一方、従来通り以前と変わることなく、きちんとお手入れを続けている美容意識の高い生活者もいる。そんな生活者が大切にするのは、ブランドや商品への「信頼感」であり、言い換えれば「この化粧品が自分に無くてはならない存在」である。


ある化粧品専門店の経営者と話をしていた時のこと。5月16日発売の、コーセーのクレンジング美容液「コスメデコルテ AQ 毛穴美容液オイル」の動きが活発で、4月から始めた予約活動で当初の計画を大きく上回る数の予約を獲得。経営者は「セミナーでの印象がとても良く、いつもより多く発注したが、いざ紹介活動に取り組んでみるとあまりにも反響が高いため追加発注をしたもののそれでも十分かどうかわからない」と話す。


また、支持を獲得している理由を「気温が上がったことで『毛穴ケア』の意識が高くなる季節的要因と、コスメデコルテの効果の高さを信頼しているお客さまが多いからでは」と分析。既存会員以外にもサンプル等で試してもらい、効果に納得してから予約をするケースも多かったという。



先述のブランドや商品への信頼感とは、世界観やストーリー性だけでなく、使用感や香り等、機能面への評価も含まれるが、先ほどの専門店経営者が話す通り、肌悩みやニーズにしっかり応える「効果」は、経済的理由で化粧品の選択眼が厳しい今、購入を決断するための大きなポイントとなってきている。


多くの生活者は、その化粧品が持つ効果にとても敏感になっているためメーカーにとって「商品開発への取り組み」が今後さらに重要になっている。また、SNS等で実際に化粧品を使った生活者の評価やクチコミを知ることが出来るようになったことも、効果を重要視するようになった要因の一つになっている。



化粧品業界には、ヒット商品やロングセラー商品として広く知られるアイテムが数多くあるが、その殆どは確かな効果で支持を獲得した。生活者が購入を決断するうえで大切にするのがブランドや商品への信頼感だが、化粧品の選択眼がより厳しくなっている今、効果が担う役割は大きい。


それは専門店にとっても大切である。先述の専門店経営者も「商品力の高さを伝えることに集中していくことが大切で、店頭活動で何を優先すればいいのかハッキリしており、シンプルな店頭活動に取り組みやすい」と話す通り、生活者やメーカーだけでなく、専門店にもメリットがある。


冒頭で説明した通り、業界問わず様々な業界で価格が高騰している今、以前と変わらず愛用し続けてもらうためには、商品やブランドの信頼をさらに高めることと、そのために効果を前面に打ち出せる商品開発に注力して、生活者にとって「無くてはならない存在」になることが重要である。

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