【2025/5/5 日本商業新聞】人材不足の影響に危機感
- 日本商業新聞
- 3 日前
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今年も早や4カ月が経過したが、化粧品専門店の店頭では〝人材不足による影響〟が更に浮き彫りになってきているようだ。コロナ禍以降、人材面に対する課題をヒット商品などブランド力でカバーしてきたが、「人材不足により顧客育成が間に合わないままその勢いが落ち着き始めてきた」と危機感を抱く経営者は多い。逆を言えば、やはり高級化粧品の商売は〝人の力〟がいかに大切であるかを、いま一度認識させられたと言えるのではないだろうか。(中濱真弥)
■〝人の力〟の大切さ改めて実感
2025年は、各化粧品制度品メーカーが発表した「中長期戦略」の実行フェーズの年であり、各メーカーにおいて様々な店頭施策や新たな組織体制がスタートした。そこで4カ月が経過した現在、化粧品専門店経営者に各メーカーの施策や体制について率直な感想や意見を聞いてみたところ、最も多く寄せられた声が〝人材不足〟による影響だ。
中でも「美容部員」に対する改革を求める声が圧倒的で、特に「チャネルを超えた美容部員派遣」を開始した資生堂においては、「セクションPBPに比べ出来ることが限定的で雑務や作業しかお願い出来ない状況」「専門店の入店が初めての方は、CPB・BQ・インウイを勉強したとのことだったが、やはり十分な商品説明が出来ておらず、他メーカーの美容部員が資生堂の紹介をしている場面も…。徐々に経験を積んで問題がなくなるのかもしれないが、ブランド数も一番多く、高い技術や知識が保てるのかが非常に不安」など、現時点ではカウンセリングやメイクタッチが任せられない状況であり、資生堂が目指すチャネルを超えた人材活用はまだまだ途上段階であることが見て取れる。
また「AIによって出勤日程や店舗を決めていると聞いているが、不要な日に入り、必要な日に入っていないというのが現状である。AIにある程度判断を求めるのはいいが、やはり最終的には現場の意見を取り入れてほしい。人手不足の中、せっかくの派遣がもったいないと感じる」など、人材配置においても見直しが求められる。
一方、コーセーも「慢性的なBC不足で規定通りセクションが入らないことが影響し、顧客育成が間に合わないままブランドの勢いが落ち着いてきており危機感を感じている」というように、これまで人材面に対する課題をヒット商品などブランド力でカバー、けん引してきたものの、愛用者育成のかなめである「化粧水・乳液」への固定化には課題が残る。
アルビオンでは「営業力の強化に取り組んで欲しい」など、各社様々な点で人材不足が課題として重くのしかかっており、「ブランド力の勢いが弱まってきたことに加え人材不足が重なり、少しずつ売上にも影響が出始めている」と危惧する声も出ている。
人材不足は化粧品専門店においても同様で、スタッフが行う作業の効率化を図り、「いかにお客様とのコミュニケーションの時間を充足させていくか」を課題として挙げるお店は多い。
そうした中、「セミナーの在り方」についても柔軟性や内容の充実を求める声が挙がっている。あるお店の経営者は「コロナ禍以降、セミナーもリアルへの回帰が進んでいるが、メーカーによっては本社主導が強くテキスト通りの内容しかないなど、セミナー自体の価値が感じられないことも。テキストで伝えられる内容ならオンラインで、実習など店頭活動に直結する内容ならリアルと、メリハリを持たせることも必要なのではないだろうか」と言及する。
話は変わるが、昨今ECに力を入れるメーカーが増えているが、やはり高級化粧品の商売は〝人の力〟がいかに大切であるかを、今回の店頭の声から感じさせられた次第である。人を介したサービスやおもてなしがブランド価値を向上させる。リアルあってこそECが成り立つということを、人材不足の今、教訓として得られたのではないだろうか。
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