【2025/5/19 日本商業新聞】新価値「メイドインジャパン」
- 日本商業新聞
- 14 分前
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この数年、国内の化粧品市場は回復傾向に伴い、化粧品OEM業界の動きも活発になってきている。その中で大きな流れなのが、韓国をはじめとする海外のOEM企業の参入である。そのため、日本の化粧品市場では、日本と海外のOEM企業との競争は激化している。今後も日本の化粧品市場で海外のOEM企業が展開する場を拡げる可能性は高いが、その時、海外のOEM企業の強みである商品開発のスピード感にどう対応するのか。その時、大きな鍵になるのが、新たな「メイドインジャパン」という価値である。(半沢健一)
■海外OEM企業と競争
この数年、国内の化粧市場は徐々に回復傾向にあり、それに伴ってOEM業界も活性化の動きを見せている。
その背景には、新型コロナを機にスキンケア意識が高まったことだけではなく、日本の化粧品の品質が海外でも高く評価され、アジアを中心に輸出量が拡大していることと、そしてSNSやECサイトを活用したD2Cブランドの台頭等が挙げられる。既存の化粧品メーカーだけでなく、新規参入メーカーも依然増えており、そのために市場での競争はさらに激しさを増し、同時に化粧品OEM企業への期待も高まっている。
それら市場を取り巻く環境を背景に、OEM業界も海外からOEM企業が進出しており、少しずつ展開の場を拡げている。なぜ、日本の化粧品市場に海外のOEM企業が進出するのだろうか。日本のOEM業界に長年携わってきた関係者によれば「海外企業が日本で展開することはメリットが大きい」と説明する。
先述の通り、この数年化粧品市場は全体的に回復傾向にあり、OEM企業への期待は髙まっている。そうした中、価格帯に関係なく、高品質志向が強い生活者に向けた商品づくりで実績を作っていくことで、企業としての認知度や価値を高めることに繋げられると捉える企業が多いという。
増加傾向にある海外のOEM企業のうち、特に勢いを見せるのが韓国企業である。代表的なのが「コスマックス」や「韓国コルマー」等で日本の生活者向けの商品開発に注力。機能や成分もそうだが、それ以外にも若年層向けのパッケージデザインやSNSを使ってのマーケティング活動で成果を挙げている。
また、韓国だけでなく欧州の企業も含めて、海外のOEM企業に共通するのは、短期間で新商品を市場に投入出来るスピード感で、つまりはその時の最新トレンドに沿った商品をタイムラグが生じさせることなく開発できるということ。これはOEM企業にとって、大きな武器といえる。
■日本の強みで存在感を発揮
一方、日本のOEM企業の強みは、やはり高い品質や安全性で細部にまでこだわった商品開発に尽きる。また、それだけではなく、日本古来の植物にフォーカスした処方開発や製剤技術を駆使した商品開発は日本ならではだ。先日、東京ビックサイトで行われた「ビューティーワールドジャパン東京」でも、処方や技術だけでなく、品質や安全性等の特長を前面に打ち出した商品が数多く紹介され、来場者の注目を集めていた。さらには、サステナブルな商品開発も突出しており、成分をはじめ原材料や容器等、環境に配慮した取り組みも大きな強みである。
今後も日本の化粧品市場において、海外のOEM企業が展開する場を拡げる可能性は高いと思われる。そうなると市場に対応するスピード感と競い合っていかなければならない状況に置かれていくだろう。
そうした状況の中、日本のOEM企業が勝ち残っていくためには、日本独自の知見や技術をさらに磨き上げて、それを新たな「メイドインジャパン」という価値に醸成していくことが重要なことだと捉えている。それが日本市場で存在感を発揮するだけでなく、アジアをはじめグローバル市場においても、日本の化粧品の価値を高めていくことに繋がっていくのではないのか。まだまだ原材料高騰を起因とするコスト競争力の向上や人材育成等、クリアしなければならない課題はあるが、それらを乗り越えた先に日本市場はもちろん、アジア、そして欧州を含めたグローバルで強い存在感を発揮していけるはずだと記者は捉える。
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