この5月、化粧品メーカー各社では第1四半期決算を発表。企業の業績を評価していくうえで、第1四半期だけで判断できない。ただ、それでも期の第一歩であり、今期の動きを読み解くためには重要。各社の決算については今号掲載している関連記事をご覧いただきたいが、今回注目したのは資生堂の国内の回復だ。その要因の一つが今、日本事業で推し進める新経営改革プラン「ミライシフト NIPPON 2025」だ。全社あげての構造改革による成果は出始めたが、それを最大化するために何が必要なのか。(半沢)
■資生堂 日本事業回復へ
資生堂の第一四半期の売上高は前年比3.9%増の2494億5300万円、コア営業利益は同比9.6%減の113億3400万円、親会社の所有者に帰属する四半期純利益は119億6600万円悪化の32億8600万円の損失となった。
第1四半期の決算発表に伴い行われた決算説明会(動画配信)の中で、代表執行役社長COOの藤原憲太郎氏は日本事業について説明。第1四半期の売上高は同比19.3%増の735億7300万円、コア営業利益は66億6800万円(前期16億7500万円損失)と2桁成長となった。
藤原社長は日本事業の好調の要因を、現在推し進める新経営改革プラン「ミライシフト NIPPON 2025」に沿って説明。昨年から四半期毎に成長が加速化している中、ブランド戦略は▽ブランドの選択と集中(「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ」等のコアブランドへの投資強化/ヒーロープロダクトへの投資アロケーション強化▽新市場創造マーケティング(ファンデ美容液/「エリクシール トータルV ファーミングクリーム」トップシェア獲得)▽戦略的値上げを、タッチポイント戦略では、▽ドラッグストア(自由体験型モデルを本格展開)▽Eコマース(売上成長率20%台後半で推移)をポイントとして挙げている。
「中国」と「トラベルリテール」の2事業は苦戦したが、その他の「日本」「アジアパシフィック」「米州」「欧州」の4事業は前期実績を上回っており、そのうち最も高い伸長率を示しているのが「日本」だった。
同社では、日本事業の抜本的見直しと構造改革として新経営改革プラン「ミライシフト NIPPON 2025」を推進しており、この第1四半期で既に成果が出始めているように見て取れる。
ここで注目したのは新市場創造マーケティングとして力を注ぐ、ファンデ美容液への取り組み。藤原社長によれば、購入者の8割が新規客で、そのうち5割は20~30代の若い世代で占めているという。また、美容液のようなスキンケア効果をもたらす「セラムファースト技術」を搭載しているのは「SHISEIDO エッセンスグロウ ファンデーション」(2023年9月1日発売)、「マキアージュ ドラマティックエッセンスリキッド」(2022年2月21日発売)の2品で、日本事業における第1四半期の増収額の6%を占める。
これらはいずれも既存品で、発売以降、「美容液のような使用感」「もはや色付き美容液」などとSNSで話題を集め、今も好調に推移。4月からはTVCMやプロモーションが本格化しており、今後さらに動きは活発化していくだろう。
■専門店の力が後押し - 構造改革の成果を最大化
既存品で、新規客獲得、そして若い世代の客層の拡大につながること自体化粧品専門店にとって明るい材料なのは間違いない。ある専門店では、TVCMがスタートした4月以降、指名買いのお客さまが増えているそうでこうした動きがどこまで拡大していくのか期待が高まっている。
冒頭の通り、第1四半期の数字だけで全てを判断できないし、そもそも専門店の捉え方もそれぞれ違う。しかし、それでも数字の面で構造改革の成果は表れ始めていると捉えられるし、実際、ポジティブに捉える専門店は少なくない。今後重要なのは、これらの取り組みの成果を最大化していくことに尽きる。そのためにも、資生堂だけの活動に終わらせずに専門店も一緒に取り組み、加速させていくことが重要だと捉える。もっといえば、この構造改革を後押しをするのは、化粧品専門店の力だと確信している。
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