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日本商業新聞

【2024/3/4 日本商業新聞】各社〝オンライン〟加速へ/タッチポイント増も中小の専門店では恩恵薄く

 化粧品制度品メーカーによる「EC(オンライン)」の取り組みが、今年度から本格的に加速していく模様だ。化粧品専門店が主力とするハイプレステージブランドも、EC推進の1つとして積極的に取り組む姿勢を示しているが、「専門店EC」においては、ECストアを運営する資本力やブランドの集積力によって、お店間の〝格差〟が生じる可能性が高く、また中小規模の専門店にとって、EC推進における恩恵は殆どないのが現状であり課題も多い。メーカーはEC推進を掲げた以上、店頭の不満や不安にしっかりと耳を傾けながら進めていく慎重さも必要だと感じている。(中濱)



■各社〝オンライン〟加速へ


 まず「コーセー」では、日本のハイプレステージ市場での更なるプレゼンスの向上として、24年度も引き続き「デコルテ」の「AQ」と「リポソームシリーズ」を中心とした商品力の強化を図ると共に、「オンラインチャネルの顧客開拓にも注力し、24年度も2けた成長を目指す」と発表。


 「資生堂」は、日本国内でのEC比率を〝2025年30%達成〟と公言。ワタシプラスやオミセプラスなど、各プラットフォームにおいてタッチポイントを増やすなど取り組みを強化し、体験価値を向上していくことで、ECとリアル双方での拡大を図っていく。


 メーカーがオンライン(EC)を推し進めるメリットとしては、消費者が製品やサービスと出会い、そこから検討・購入・リピートに繋がる「カスタマージャーニー」において、各要所でのタッチポイントが増えることで、自社のファンづくりの機会創出が大幅に増えるという点にある。


 また、専門店の廃業・閉店が毎年増えていることも、EC推進の要因のひとつになっているのでは、と感じている。全粧協では毎年300店のペースで加盟店数が減少、24年は4000店舗を割る状況となっている中、地域によっては専門店が1店もない〝空白地帯〟が生まれてきているなど、リアルでの買い場が少なくなっているという課題がある。


 各メーカーが「顧客の一元化」を進めているが、ECという受け皿を設けることで、専門店の廃業による顧客流出を食い止めることも、もしかするとその片側で考えているのかもしれない。


 このように、EC強化の背景には、ECでの売上及び利益アップの他、タッチポイントの増加、また消費者の購買行動がチャネルミックスになっているという時代背景の流れなど、様々な要因が重なりあっていると言えよう。



■タッチポイント増も中小の専門店では恩恵薄く


 しかしながら、化粧品専門店のEC推進において、中小規模の専門店はその恩恵を受けることは殆どないというのが現状だ。あるとするならば、資生堂の「オミセプラス」以外には考えにくい。何故ならば、どのECサイトでも同じ価格・サービスであれば、メーカー直販のサイトで購入するのは自然の流れであり、もっと言うと、専門店が運営するECの場合では、ECストアを運営する資本力、あるいは多数のブランドを取り扱っているお店の方が、お客様から選ばれるうえで圧倒的に有利になることは間違いなく、お店間の〝格差〟が生じる可能性も高い。


 そこで、メーカーのEC強化について専門店経営者の方に話を聞くと、多くのお店は「メーカーのEC対応については、時代の流れ的に仕方がないと思う」と理解を示している一方で、「自店のお客様にECサイトに誘導するようなアプローチがある」「店頭では品切れになっている商品がなぜかメーカーのECサイトには在庫がある」「低い購入金額で送料が無料になる」「店頭よりもECサイトで購入した方が特典が大きい」といった不満の声も漏れ聞こえており、メーカーにおいては、EC推進を図る以上、こうした店頭の〝不満や不安〟にしっかりと耳を傾けていく慎重さも必要だと感じている。


 そして、小さな専門店においてもきちんと利益が出るようなEC体制を整えることも、メーカーの役割として課せられているのではないだろうか。このように、24年度は、制度品ビジネスにおいて、オンラインとオフライン融合の真価が問われる一年になると感じている。

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