この数年、世界の主要な化粧品市場で新たなビューティトレンドとしてクリーンビューティが拡がりを見せている。クリーンビューティとは、健康や地球環境、動物等に配慮して開発された化粧品やブランドだ。明確な定義がないため、ブランドそれぞれの取り組みは違うが、SDGsとの親和性も高く、国内でもクリーンビューティに特化した売り場が増えている。今後しばらくクリーンビューティ市場は成長していくとの予測がある中、専門店流通においても積極的に取り組むべき価値のあるカテゴリーに思える。(半沢)
■世界の主要市場で拡大
先日、日本色材工業研究所が実施した今期第2四半期決算に関する説明会の中で、奥村浩士会長は将来に向けた取り組みとして、クリービューティを強化していくことを明らかにした。奥村会長は「クリーンビューティは欧州から始まり、米国や中国の市場にも拡がっている。その中で最も遅れている市場が日本である」と説明する。
奥村会長の言う通り、国内でクリーンビューティという言葉を聞くようになったのは今年。数多くのメーカーから新製品が導入されている他、クリーンビューティに特化した売り場も増える等して市場は活性化の様相を見せている。
大阪心斎橋の商業施設「心斎橋パルコ」では、今年4月にセミセルフ型のコスメセレクトショップ「ボーテ・ド・ブルー」がオープンした。環境に配慮したクリーンビューティの化粧品やライフスタイルグッズが展開され、オープンから半年以上経った今でも好調に推移していると聞く。
また、東京原宿にある「アットコスメ東京」においても、1カ月間の期間限定でクリーンビューティコーナーを設置。期間中、多くの女性で賑わいをみせていた。
国内でも拡がりを見せ始めるクリーンビューティ市場だが、それでも世界の主要な市場との差は歴然としている。なぜ日本市場での拡がりに差が見られるのか。考えられるとすれば、日本の化粧品は安心・安全を前提にしたモノづくりなため、クリーンビューティという切り口にそれほど強くはインパクトを感じていないことがあげられる。
■専門店流通にとっても魅力
しかし、クリーンビューティ自体の可能性もそうだが、もっと踏み込んでいけば、専門店流通にとっても魅力で大きな可能性を持つカテゴリーに成長していくのではないか、そう記者は捉える。
この1~2年、専門店流通をはじめ、様々な売り場では中国コスメや韓国コスメ等、いわゆるアジアンコスメをよく目にするようになった。
傾向としては、どうしてもバラエティショップのような雰囲気の売り場になりがちだ。商業施設で展開するテナント店であれば問題はないが、制度品ブランドを中心にラグジュアリーな雰囲気の売り場で展開するのには何かしらの工夫が必要になってくる。しかし、クリーンビューティの場合先述の「ボーテ・ド・ブルー」のようにシンプルな売り場が作りやすく、仮に制度品ブランドを集めるラグジュアリーな空間でも違和感がなく展開しやすい。また、クリーンビューティを取り揃えることで、美容感度の高い、SDGsに関心を持つ女性の取り込むことにもつながり、客層や年齢層、客数の幅を拡げられる可能性は十分ある。
日本の化粧品業界では数多くの企業がSDGs関連の活動や仕組みづくりに注力するものの、生活者が認知している大半はメーカーによる取り組みになる。一部の専門店でも空容器の回収等に取り組んではいるが、個店単位のため発信力はどうしても弱くなってしまう。
冒頭、クリーンビューティーとSDGsとの親和性は高いと説明したがクリーンビューティの売り場を展開していくことで「このお店はSDGsに取り組んでいる」と生活者に訴求していくことにもつながっていく。
どこまで、クリーンビューティが拡がるかはわからない。しかし、市場は今後しばらく成長していくとの見方が大半であり、だとすれば客層や年齢層、客数の拡大が期待できる、このクリーンビューティというカテゴリーへの取り組みに積極的に取り組んでいく価値があるのではないのか、そう感じている。
Comments