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  • 日本商業新聞

【2022/8/8 日本商業新聞】店とメーカーが共に挑戦

新型コロナの新規感染者数が再び増加傾向に転じている。今は「手指消毒」「マスク着用」「三密回避」「換気」の再度徹底だけで、新たな行動制限が行われる気配はなく、消費者もこうした状況に慣れたのか、外出している人の数もあまり変化が見られない。その中、多くの専門店では今の消費者ニーズに対応しながら顧客を増やすため様々な活動に取り組むが、活動を行う上で欠かせないのは「やり続けること」「活動の重要性や意義の共有」、そして「メーカーの理解」。ここ最近多くの専門店を訪れてみて感じたことである。



■店とメーカーが共に挑戦


 今多くの専門店が重点活動として取り組んでいるのが「新たなファンづくり」。新型コロナによる行動制限で外出する機会は減り、それに伴い既存客の離店が起こったためで、それに対して専門店個々で店舗独自に「ファンづくり」に注力している。例えば、あるお店では定期的に来店する顧客づくりを目的に2類愛用者づくりに取り組んだりあるいはコロナ禍で出来なかった「肌に直接触れる活動」を重点的に取り組むお店もある。また、あるお店ではラインやインスタツイッター、はがき等、顧客の嗜好に合わせて発信方法を使い分けることで読んでもらう確立を高め、それを来店の動機付けに繋げている。



■やり続けることが大切


先日、ある専門店を取材したが、店づくりへのこだわりは勿論、新商品の発売前の予約数の多さにも驚いた。顧客の殆どが発売前に予約をしているそうで、多くの人が「予約するのが当たり前」との意識を持っているという。また、そこには時間をかけて作り上げた仕組みが大事な要素となるのだが、その陣頭指揮をとった社長の想いや、すぐに成果が出なくてもやり続けることの大切さということも、とても勉強になるものがあった。


 以前、そのお店では他の専門店と同様に来店客に商品特長を説明してから予約を取っていたそうだが、その伸びはある規模で鈍化していたことが課題だったという。そんなある日、他のお店での活動にヒントに、それから何年もかけて自店に合った形に進化させていったという。「やると決めたら、投資や人材をしっかり投入して、それをやり続ければいつか必ず成果は出る」と話す社長。


 松下幸之助氏も「成功とは成功するまでやり続けること、失敗とは成功するまでやり続けないこと」と話をしていたそうだが、やはり「やり続けること」が大事だということだろう。そのためには、当然社長だけでなく、お店のスタッフや美容部員、出入りするメーカーの営業ともしっかりその活動の意義や重要性を共有しておかなければならないは当然だし、もっと言えば共有するだけでなく、成果が出なくても取り組み続ける強い意思も必要になってくる。


 今年に入って多くの専門店を取材したが、どのお店も新型コロナで変化した消費者意識に対応していくために、ゼロベースでお店の中の活動や商品の見せ方、そして店づくりに取り組んでいる専門店ばかりだった。


 当たり前だが、今専門店の競争相手は専門店ではなく、百貨店やバラエティショップドラッグストア等、化粧品を取扱っている流通全てが競争相手であり、そうした数多くある流通の中で、「化粧品を購入する主な場所」として、消費者に選択してもらえるお店を目指している。



■意義や重要性の共有が不可欠


 そうした環境の中に置かれているからこそ、お店のスタッフや美容部員そしてメーカーと考えを共有しながら、「やり続ける」ことで実現させていくことが大事になる。勿論、大手のメーカーにおいては年度毎にしっかり実績を創り上げていかなければならないことも承知しているが、一方で専門店は、まだまだ厳しい状況が続く中で、今の消費者ニーズに則した形で独自の強みを活かしたお店づくりに挑戦しているのである。そして、それらの取り組みは時間と手間と投資を行っていってもすぐに成果が出るとは限らない。しかし、お店は、それを覚悟のうえで挑戦している。だからこそ、「やり続ける」ためにはメーカーの理解や協力がなければ成り立たないのは当然で、それは言い替えれば、専門店とメーカーの本当の意味での関係が問われているとも言えるのではないか。

(半沢)

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