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  • 日本商業新聞

【2022/10/31 日本商業新聞】専門店へ参入なるか?「モノ×コト」の融合 進化する〝美容定期サービス〟

 コロナ禍、新たな販路として脚光を集めた〝コスメの定期便〟が更にバージョンアップし、花王「エスト」からこの度〝モノ×コトの融合〟による「新美容定期サービス」が発表され注目を集めている。今後美容の定期サービスが〝モノ×コト〟へと進化していく中で、コト提案を強みとする「化粧品専門店」において、メーカーとの新たな融合による〝美容定期サービス〟が生まれたならば、化粧品業界にとって新風をもたらすのではと感じている。(中濱)



 コロナ禍に入り外出控えが増えたことにより、化粧品業界において新たな販路及び販売方法として注目されはじめたのが〝コスメの定期便〟である。外資系化粧品メーカーをはじめ、さまざまな化粧品メーカーがコスメの定期購入に参入しているが、この取り組みの特長は、定期的に商品を購入することで、通常より価格が安くなったり、あるいはもう1本ついてくるなど、どちらかと言えば〝モノと価格〟によるお得感で消費者に満足をいただく内容となっており、そこに〝コト〟の要素は含まれていなかった。


 しかし、花王「エスト」から発表された「新美容定期サービス」は、モノとコトを掛け合わせた新たな「進化型サブスクリプションビューティプログラム」となっており、新たな訴求方法として注目を集めている。


 花王が展開する新美容定期サービス「エスト スキンアスリートジム」は、12カ月30万円の月額課金制のサブスクとなっており(2022年11月から2023年10月の1年間)、内容としては、「エスト」のスキンケアと交換できる44万円分のポイントが付与されるだけでなく、花王の新肌解析サービス「スキンポテンシャルアナリシス」が盛り込まれる他、スキンケアレッスンやトリートメント体験、更には栄養管理士による食事アドバイスといった〝モノ×コトの融合〟によるこれまでにない新しい美容の定期サービスとなっている。


 同取り組みの注目すべき点は、〝モノ〟(価格)のお得感もさることながら、それ以上に〝コト価値〟に重きを置いた提案となっており、更にはモノとコトの〝パッケージング提案〟という新しい概念を取り入れているという点にある。


 今後消費者がどのような反応を見せるかが注目されるが、消費者がその価値を見出したのならば、少なくとも1年間は「エスト」の顧客として囲い込みができることから、メーカーにとっては非常に期待値の高い取り組みといえるだろう。


 そう考えたならば、「コト活動&提案」を強みとする「化粧品専門店」においても、同様に〝モノ×コトの定期美容サービス〟は実現可能なのではないだろうか。またメーカーにとっても、一定期間顧客の囲い込みができるというメリットを鑑みても、専門店流通における新たな試みとして、大きな可能性を秘めた取り組みだと考える。


 例えば、アルビオンの「ミスト体験」やシェルクルールの「お肌の学校」、資生堂の「パーソナルカラー診断」など、コトサービス自体に価値を感じている消費者は多く、そのコトサービスから商品の購入に繋がるケースは数多く挙げられている。


 更にはスキンケアレッスンやカウンセリング、及びアドバイスといったサービスは現状、化粧品専門店においては無料で行っているものが多く、あくまでもサービスの一環として捉えられているが、消費者が化粧品を選ぶ理由として、もちろん商品の魅力もあるが、それ以上に自分のキレイを見出してくれる親身な接客やアドバイスなど、コト部分の要素は非常に大きい。


 また資生堂の「DNAプログラム」においても、単独での提案ではなく、大きなサービスの中のひとつとして組み込むことが出来たならば、取扱い店舗だけでなくお客様にももっと喜ぶ提案が出来るかもしれない。


 今回の「エスト」の取り組みはメーカー直の展開ではあるが、今後化粧品専門店に置き換えた〝モノ×コト〟をパッケージにした、メーカーと専門店の新たな融合による「美容定期サービス」が生まれたならば、化粧品業界において新たな風になるかもしれないと感じている。

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