コーセーは、「上期振り返りと今後の展望」をテーマに、化粧品業界紙を招き合同取材を開催。コーセー化粧品販売 取締役副社長・太田学氏からは、「コーセー全体」としての上期総括及び今後の展開について、同・取締役専門店推販部部長・峯尾智明氏からは「専門店チャネルにおける上期総括及び今後の展開」について説明が行われ、専門店チャネル下期の取り組みについては〝専門店の存在感拡大〟に向け「提案力の強化」「店舗・ブランド・お客さまの繋がり強化」「店舗・人材の魅力拡大」「専門店としての活動徹底」に取り組んでいくと言及した。
■コーセー全体の上期総括及び今後の展開:コーセー化粧品販売 取締役副社長 太田 学氏
まず2026年度の方針として、前回記者ミーティングでも説明した通り、目標は「各チャネルでしっかりとシェアを拡大していく」ことが大きな目的になっている。そのための手段として、エリアの要素に添った取り組みと、企業別に最適化した戦略を強化していくことの2点でもって、トップラインを上げていくことの実現を進めている。
そこで23年度は、かなりの新客が獲得できた1年となった中、24年度は「顧客を固定化していく力」、要は固める活動ということで、この新しいパワーをしっかりと安定した成長へと実現していくことが大きな方針となっている。この方針のもと、実績について説明すると、上期は販社全体で対前年比2桁成長で伸長。チャネル別でみると、「ハイプレステージ」においては、高価格帯ともに10ポイントアップとなり、2年連続2桁成長で推移している。
「プレステージ」と「コスメタリー」では、コロナの際に一番ダメージを受けた市場であったが、昨年は少し回復、そして今年は一気に加速しており、「ドラッグ」で15ポイントアップ、「フィールド」で20ポイントアップと勢いがついてきている。
「eリテール」においては、まだ規模が小さいが、大手サイトと低価格帯ブランドとの取り組みが奏功し40ポイントアップとなり、こちらも勢いがついてきている状況である。
ブランドごとの状況においては、昨年「デコルテ」は大谷選手のプロモーションによって上期は大きく飛躍したこともあり、今期はどのような影響がでるか心配したものの、結果2桁で伸びるという好結果で着地。
「ジルスチュアート」や「アディクション」といった高価格帯の「メイクブランド」は横ばいで推移。その背景には、市場のニーズがアイからリップに移行しており、リップが好調に推移しているものの、アイメイクが少し厳しいという影響が出ている。
続いてプレステージでは、「雪肌精」と「ワンバイコーセー」が非常に好調な推移をみせている。「プレステージ市場で強いブランドを作っていこう」を大きなテーマとして取り組んできた中で、「雪肌精」は対前年比で30ポイント以上の成長、「ワンバイコーセー」においても40ポイント後半の成長となっている。
特に「ワンバイコーセー」に関しては、既存品の実績と新商品の両軸が好調になってきているという点が、今までと少し違う動きであると感じている。
セルフアイテムに関しては、「メイクキープミスト」が継続した好調さをみせ、フィックスミストカテゴリーの中で断トツのシェアを獲得している。このように、各市場の重点ブランドの存在感が高まってきているということ、更には、新商品だけではなく既存品が実績を牽引できる構造へと変わってきているなど、ブランドとしてのロヤリティが市場に浸透してきたと考えている。
次に「24年度の方向性」について、活動テーマは「マーケティング方針と現場の連携力を高める」ことを目的とし、3つのポイントを掲げ活動に取り組んでいる。具体的には、1つめは「ブランド戦略と現場のリンク」、2つめは「デジタル戦略と現場のリンク」、3つめが「3G(グローバル・ジェンダーレス・ジェネレーション)と現場のリンク」である。
まず「ブランドとのリンク」という点では、高価格市場のデコルテに関しては、2桁成長の中身を見ていくと、「リポソームセラム」「AQシリーズスキンケア」「ルースパウダー」の3つが飛躍的に伸びている。
リポソームの貢献ポイントとしては、「定期便」が市場の中で浸透しており、お客さまのリピート購入に繋がっていることが、全体を引き上げる構造になっていると考えている。
「AQスキンケア」は、対前年比で2倍となり、ダイレクトに新客を獲得していこうというプロモーションに転換した成果が出てきていると感じている。今後は、AQの育成を行うことで高級ブランドとしての存在感やポジショニングを作っていきたいと考えており、AQ育成は継続して力を入れていく。
またトピックスとしては、デコルテの新しいパワーとして、デコルテが「ギフトに選ばれるブランド」に成長してきたという点が大きいと思っている。対前年比でギフトのお客さまは60ポイント以上アップしており、ブランド力と強いアイテムが育成できていると実感している。
2つめは、「ルースパウダー」のように、沢山の新客を獲得できる力が備わってきたことが、ここ数年の大きな変化だと思っている。
「マス市場」においては、先述の通り、「雪肌精」や「ワンバイコーセー」が計画通りに成長できている。「雪肌精」では、3月1日に発売した「ブライトニングエッセンスローション」が非常にいいスタートを切れたということが大きく、もう1点は、大谷選手のプロモーションなど、「日焼け止め」が市場全体の日焼け止めの成長率を上回る推移で動いているなど手ごたえを感じている。
同じく「ワンバイコーセー」も、昨年発売した「セラムシールド」がさらに力を出して売上実績をかさ上げし成長し続けてくれているという点、また新商品と既存品の力の掛け算がブランドレベルの向上に表れていると思っている。以上がブランド戦略と現場のリンクに関わる説明となる。
続いて「デジタルを活用した活動」ということで、大きく2つにフォーカスして説明する。1つめは、「顧客のLTV強化」を目的にした「コーセーID」について。デジタルを活用してお客さまとの繋がりをしっかり作っていくということで、まずIDの連携数に着目し、増やしていく取り組みを実施している。
2030年には少なくても1000万人以上のお客さまとの繋がりをコーセーIDで作っていきたい。今の獲得数としては予定通り進捗しているが、課題としては、新客の獲得率は非常に高い一方で、既存客のデータ登録が10%未満と少し遅れている。今後コーセーIDを活用したブランドのロイヤリティプログラムが一挙にスタートする為、既存客連携のベースアップを図っていきたいと思っている。
営業面では「SFA」を導入し、セールスフォースオートメーションを活用した営業の業務改革を図っていく。ドラッグストアの営業から導入しており、PDCAを回しながら会社全体に広めていくスケジュールで動いている。
ここで私が考える一番の肝というのは、重要な流通販路との商談の質と量を上げていくということ。これにより、営業としての競争力を高めていくという点を一番の狙いとして置いている。
またコーセーは創業から変わらない経営者の思いがある。どういう思いかというと、それぞれの市場の中で多くのブランドを持っているが、これは「一人一人のキレイに追求し、しっかりと応えていく」ことを信念に置いているということ。
これがコーセー独自のブランド戦略であり、他社にはない強みだと思っており、ここをしっかり活かしていかなければならないと思っている。様々な市場と多数のブランドがある中で勝ち抜くために、デジタルの力や、セールスフォースオートメーションのようなツールを使うことで、コーセーのブランド戦略の強みをしっかりと活かし続けていきたい。
最後に「3G戦略」の進捗ということで、ここではジェンダーとジェネレーションに絞った話をしていく。昨年の大谷選手のプロモーションはWBCともうまく連携して相乗効果を発揮。そこで今年は都市型店舗だけはなく、地方店舗にもイベントの数を増やし、タッチポイントを広める活動を強化。その結果、しっかりと実績もカバーできている状況となっている。またタッチポイントの増加により、イベント期間の男性客が2倍になっているという成果も生まれている。
マス市場も積極的に3G戦略を展開。特に「雪肌精」においては、前年の2倍強の売り場面積を取ったプロモーションを行い、日焼け止めや男性の購買も一気に高まり、構成比としては5ポイント上昇した。
最後に、「これからの活動について」お話をさせていただく。活動方針に関しては、現在の3つの活動をしっかりと取り組んでいく。例えば、重点ブランドに紐づいた新商品展開の強化。もう1つは、3G戦略に紐づいた新しい顧客を獲得する新商品の発売の2点をポイントとする。以上の取り組みの結果、24年度は2桁成長を目指していく。
最後に、チャネル別にコロナ前からの実績を振り返ると、高価格帯の回復が最も早く、その中でも専門店チャネルは大きく上回り、ピークを完全に超え回復。やはり日本市場を牽引していくチャネルであることは間違いないと実感している。
■専門店チャネルにおける上期総括及び今後の展開:峯尾 智明氏
専門店流通での、▼2024年度上期実績の振り返り▼2024年度の政策と進捗▼2024年度下期の取り組みの3点について説明する。
一つめの「2024年度上期実績の振り返り」だが、今期は前年度の大きな実績に対し、どう実績を作るかを一番のテーマにしている。4月は僅かに前年を下回ったが、上期全体では非常に良い前年比を維持していただいた。これに満足することなく、7月以降も昨年の実績をどうクリアするかがポイントである。
具体的には、前年実績がある既存店様のみの上期店頭消化の前年比は109・3%。ブランド別は、「コスメデコルテ」が109・8%、プレディアが100%をクリア。前年度の大きな実績を上回るために「固める活動」に注力している。
今年度と前年度の実績の違いは、2023年度がテナント店様で130%、路面店様で110%と約20ポイントの開きがあったが、今年度はテナント店様が110%、路面店様が103%。集客が難しい路面店様で前年度の大きな実績をクリアし、路面店様の強さを感じた。
また、接客数でもフリーのお客さまが120%と、大幅に増えている。背景には、幅広い価格幅を強みとする「コスメデコルテ」が今年1月に発売した「ルース パウダー」がお買い求めやすいアイテムとして高い支持を獲得し、多くのお客さまにお買い求めいただけたためで、「コスメデコルテ」を知っていただくという意味でも幸先良いスタートを切れた。加えて顧客化という視点でも、会員さまが110%と伸長し、前年度獲得したお客さまを顧客化していただいている。
「リポソーム アドバンスト リペアセラム」は二桁増となったものの、新規のお客さまは減少。ただ、育成という視点だと、会員さまの購入実績で売上上位に75㎖の本体とレフィルがランクインしている他、本体は130%と伸長した。
今年度「コスメデコルテ」の戦略として、「リポソーム」と「AQ」に注力しており、その成果が表れている。上期は「リポソーム」と「AQ]で実績拡大につなげ、そこに「ルース パウダー」で新規愛用者を獲得。一方、「イドラクラリティ」「リフトディメンション」等の5000~70000円のスキンケアの育成ラインは伸び悩んでいる。現在、新しいお客さまを獲得することを最優先課題に掲げており、専門店流通でこれらのラインをどう強化していくのかに取り組んでいる。
そしてもう一つの課題は、テナント店様、路面店様で今のブランドの戦略を画一的に進めることは、立地上合わないケースもあり、それをしっかり理解して、営業やBCがどう取り組んでいくかもポイントである。
二つめの「2024年度の政策と進捗」について。専門店推販部では、お店様の存在感を拡大することを最大の目的に取り組んでいる。存在感の拡大とは、「化粧品業界における化粧品専門店様の存在感」「専門店流通におけるコーセーの存在感」「社内での存在感」の3つで、様々なチャネルがある中、化粧品専門店様のステータスを高めること。そして存在感を高めた専門店流通で売上や利益等でお店様に貢献し、コーセーの存在感を高める。加えて社内的な話だが「コーセーは専門店流通があってこそ」と言われるぐらい、売上や利益で強い存在感を出して、専門店流通を盛り上げていきたい。
「専門店様の存在感拡大」のための大きな取り組みが「フラッグシップショッププロジェクト(FSP)」で、今年2024年が3ヵ年プロジェクトの最終年度となる。
その目的は、エリアを代表する最もシンボリックなお店様を創ること、多くの方に「このエリアで化粧品を買うなら、このお店」と言っていただけるお店づくりを目指したもので、お店様毎に異なる目標を立てて「お店様の在るべき姿」の実現に向けて、バックキャスティング思考をもとにプロジェクトマネージャー(営業担当)や本社、ブランド一体で取り組んでいるプロジェクトでは22店のお店様にご参加いただき、そのうち20店のお店様が既に定量目標を達成している。
今お話した「FSP」は、テナント店様中心のプロジェクトだが、一方で昨年度から路面店様向けの施策として「オンリーショッププラン(OSP)」をスタート。売上も大切だが、そのエリアで路面店様の魅力を拡大することを最重要ポイントに取り組んでいる。
日本の化粧品文化を継承していくという意味においても路面店様は重要な販路であり、他のチャネルにはない、路面店様ならではの魅力を引き出し、唯一無二のお店様になっていただきたい。現在、15店舗のお店様と共に取り組んでおり、立地や周辺環境でバラつきがあるものの、売上では110%近い前年比で、路面店様全体の伸長率よりも高い。
お店様の中でコーセーの存在感を高めることとは、理想のお店づくりに取り組むと共に、その成果の指標として億ショップや全国セミナークラスのお店様を増やすこと。億ショップは、コロナ禍前の2019年は12店だったが、2023年で42店に増加。今後、3ヵ年で億ショップ100店舗を目標としている。
今までは億ショップを目指すうえで接客数や座席数の確保が目安だったが、既存億ショップの顧客構成比をみると、新規のお客さまが圧倒的に多いお店様、会員さまが圧倒的に多いお店様など混在しており、売上の作り方もお店様毎で違う。そのため、お店様に合った戦い方をブランドや商品を活用して実現させることが必要不可欠であり、営業活動もBCの動き方も変えている。
また、全国セミナーに参加されるお店様の数もコロナ禍で減少したが、現在は2019年を大きく超えているだけではなく、上位クラス「プレミアム」のお店様も100店を超えている。なお、今年度は神戸で開催する予定となっている。
売上拡大を目指す一方、お店様との心のつながりを強く持つために経営層同士での直接的なコミュニケーションも重要である。今年7年ぶりに当社社長の小林と販売店様が直接対話して絆を深める会「絆の会」を合同開催し、改めて全国のお店様との絆の強さを確認した。また、「コスメデコルテ」の「コンパニオンコンクール」や、「プレディア」の「シンシアリストコンクール」といった販売コンクールを開催して成果を出していただいたお店様とのコミュニケーションも図っている。
そして、化粧品業界の活性化に向けて「一般社団法人日本化粧品専門店協会(CoRe)」との取り組みにも注力。昨年開催したシンポジウムではパネルディスカッションに社長の小林が参加。今年度は「男性顧客の獲得」に取り組んでおり、「リポソーム」をテーマに、男性のお客さまに推奨している。男性へのアプローチのキッカケになっており、一過性で終わらすことなく、性別に関わらず誰もが化粧品を楽しみ、肌も心も豊かになる、そんな化粧文化を定着させていきたい。
三つめの「2024年度下期の取り組み」について説明する。環境の変化と共にお客さまの購買行動や情報の取り方も変化している。以前はお客さまの情報収集源は主にお店の奥様や従業員様からの情報発信が主だったが、それだけではなく美容雑誌や企業系テナント店様によって沢山の情報を受け取れるようになり更にはインターネットやSNSでも取得できるようになった。益々お客さまが取得できる情報が増え、お店様に対してお客さまが求める事も変化してくる。これまで一律で化粧品を推奨したり、コト提案してきたが、もっとお店様毎に違う提案、つまり問題解決型のコンサル営業にシフトさせていかなければいけない。
そして、お店様とのコミュニケーションは非常に重要である。時代や環境は変化しているが、今の営業の戦力、BCの人員含めて現体制を維持しつつ、従来通りお店様と「共存共栄」のスタンスで、より質を高める活動に取り組んでいく。営業体制では「営業の提案力強化」に注力。先ほどのコンサル営業もそうだが「FSP」「OSP」といった膝詰めの議論で「お店様の在るべき姿」を目指す提案スタイルを今後全ての専門店営業が必須で進めていく。また、制度品や再販制度撤廃の歴史を知らないメンバーも増えているため、専門店営業としての必要なスキルや心構えを学ぶ研修を下期から開始、精鋭化を図っていく。
また、「店舗」「ブランド」「お客さま」におけるつながりの強化という点で、それぞれのパイプを太くしていくには、BCの存在が重要である。人と人とのつながりにおいて、単に販売すればいいのではなく、お店様との準備や打ち合わせもなど一体となって取り組む必要があり、お客さまのLTV(顧客生涯価値)を高めるためBCの活動を引き続き強化する。
その為にも、現在のセクション体制を維持する。前述の通りお客さまが多くの情報を持っている現在において、BCは今まで以上にブランドを語れる必要があり、より専門店様、ブランドに特化し、専門性の高い人材の育成を目指していく。
最後になるが、お店様においても「化粧品専門店としての活動」も変わってくる。フリーのお客さまが多いお店様、会員さまが多いお店様、それぞれ最適な活動が必要だが、どの流通チャネルよりもお客さまに親身に対応することが重要だ。
あるお店様では「手間暇かけるからこそ感動が生まれる」と話されていたが、まさにその通りだ。コロナ前に徹底して行っていた「IM―CUBE」だが、まだまだ拡大余地がある。そうした取り組みをもう一度本格稼働させていくことが重要で、それを「固める活動」として取り組んでいる。過去のデータでも「IM―CUBE」を活用しているお店様だと、新規の会員さまも含めて来店回数が1・8倍になるというデータがある。また、「リポソーム定期便」は契約後3回ご来店いただくことが期待できるシステムであり、お店様とブランドをつなぐ「固める活動」としてお取り組みいただきたい。
下期は、「薬用マイクロバームローション」や3Gに沿ったアイテムで新規愛用者を獲得しつつ、「IM―CUBE」「リポソーム定期便」等の施策やツールを活用して「固める活動」を強化する。
コーセーの活動理念は「良い商品を 良いお店で きちんと売る」。それを専門店様にに落とし込めば、「この商品を このお店で この人から買いたい」と思ってもらうことが大事である。コーセーとしても昨年、一昨年獲得していただいたお客さまをお店様と共に育成して売上を拡大していくフェーズにある。当社はチャレンジャーであり、さらにお役立てできるよう、高い志や目標を持って共に活動していただけるお店様とお取り組みをさせていただきたい。
Comments