国内の化粧品業界では、以前からマツモトキヨシをはじめ、大手ドラッグストアや無印等のバラエティショップ等で、プライベートブランド(PB)の化粧品を展開しているのは知っての通り。2005年に薬事法改正で新規参入する企業が増えたことに加え、価格は当然、「高機能」「ジェンダーレス」等のニーズやトレンドに対応したPB化粧品で消費者の支持を集めており、この市場は今後も拡がりを見せていくものと考えられる。だが、化粧品業界を取り巻く環境は変化し、徐々に課題も見え始めているように感じる。(半沢)
■安心感が購入の決め手
この数年、PB化粧品の市場は拡がりを見せていて特にこの1~2年では、ドラッグストアと大手化粧品メーカーがタッグを組んで新ブランドを立ち上げて話題を集めた他、ホームセンターでもPBブランドによる展開を本格化する等、化粧品市場における存在感は益々高まっている。
そうした勢いを見せるPB化粧品だが、昨年と今年大きな話題となったのが、マツモトキヨシ「レシピオ」や、スギ薬局「プリエクラU」、そして今年6月発売のドンキ・ホーテの新スキンケアブランドとして「ジェネコス」である。「先行乳液」「美容液」「化粧水」の3品でブランドを構成、高機能な有効成分を配合しながら、全品1980円(税抜)という購入しやすい価格設定が特長。美容液の「モイストセラム」においては一部の店舗で品切れになる等の人気だ。また、他のブランドも含め、徐々にPB化粧品を愛用するという消費者層は拡大傾向。「1~2年前と比べてPB化粧品を使っているお客様は増えている。以前と違うのは、30代以降の方が大半だったのが、今は20代若年層のお客様も増えていて、売場も拡がっている」と某ドラッグストアのスタッフは説明。
こうしたPB化粧品の拡がりの背景には、まず価格が挙げられるが、単に「低価格」ではない。実際、ドラッグストアで展開しているNBのマスブランドと価格にそう大きな差はない。しかし、それらのPBの多くは高機能&高品質を訴求しており、消費者は「価格が変わらないのなら、品質や機能に優れている化粧品の方がお買い得」と捉えているように感じる。もう一つは、直接消費者に対応するという利点を活かし、リアルタイムでニーズやトレンドを収集、それを活かした商品提案も支持を集める要因になっていると思われる。
ただ、それらPB化粧品に共通するのは、「その化粧品が本当にその人の肌質や肌悩みに対応しているのか」を確信して購入出来ていない。今は商品特長や使用法、お手入れ方法等の情報をネットで入手出来るし、店頭にはスタッフもいるので、ある程度確認してから購入は出来る。しかし、肌診断やカウンセリングをしている訳ではなく、どうしても「本当に自分の肌に合うのか」という不安が生まれやすい。
今、化粧品専門店を含めて殆どの小売業が抱える課題は「どれだけ固定客を創れるか」。周辺環境が益々厳しくなる中、安定経営のためには、「お客様に安心して化粧品を購入してもらうこと」は大事で、その安心感が化粧品を購入する際の「決め手」にもなっている。
■小売業にとって不可欠要素
これらを踏まえれば、やはり肌診断やカウンセリングを通じて、そのお客様の肌に合った化粧品を安心して購入してもらうことと、そして満足して使い続けてもらうことが重要で、それは化粧品やブランド、お店のファンになってもらうためにも必要である。今後環境は益々厳しいと話したが原材料の高騰に伴う値上げや円安の影響もその一つで、既に消費者の中には「買い控え」や「使い控え」の動きも出始めているようで、節約目的で使用量を減らす消費者も徐々に増えているとの声が聞こえてくる。
化粧品を適正量でお手入れすることでしか肌悩みは改善しないし、化粧品の良さを体感することも難しい。だからこそ、化粧品を安心して購入してもらったり、使い続けてもらうことが大切で、そのためには肌診断やカウンセリングを通じて、その消費者に安心して化粧品を購入してもらうことが必要になる。それを実現出来る小売業こそ、化粧品を購入する場として相応しいのでないだろうか。
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