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【日本商業新聞 コラム】心意気と美学 -201- 千葉独立構想⑵ 挫折編

前号でとても傲慢で不謹慎なコラムを書いてしまった。千葉は日本から独立しても生きていけると豪語したのだが、よくよく考えるにそんなことは夢物語で、現実離れした戯言だと思い直すに至った。とても恥じ入っている。


 3年前の台風15号を思い出せば傲慢ではいられない。千葉県は想像を絶する風水害に見舞われたが、いまだ復旧の見通しが立たない場所もある。団塊農耕派の家の土蔵もやっと修復を終えたばかりだ。直したくても職人さんがいないのである。千葉県の瓦職人、左官屋、大工、工務店、その数には限りがあって、被害の大きい南房総の方を優先すれば、中途半端な被害である団塊農耕派の地域にまわってくるのは、ずっと先になってしまうのだ。


 ということはよその県のお情けにすがらなければ千葉県は元に戻らないことになる。だから先週の向こう見ずな発言を撤回し、今は日本に残して下さいとお願いするだけだ。


 そもそも千葉県民というのはいままで自然災害とは無縁だったので、危機意識の乏しい県民である。恥ずかしい話だが、団塊農耕派もいざというときの避難場所を知らなかった。ハザードマップも見たことが無かった。この台風ではじめて避難場所を知ったが、その公民館はなんと川のほとりなのだ。洪水が怖くて避難するのにナゼ川の近くなのか、調べてみると、公民館が高台にあった時代につくられた避難手順が、場所が変わったのにそのまま半世紀以上も見直されなかったというのだから驚きである。


 そう当時の森田健作知事以下、全ての千葉県民は、風水害に対して鈍感過ぎた。いや風水害だけでなく、全てにおいて〝優柔不断な怠け者〟の度が過ぎた。


 成田空港もディズニーランドも幕張メッセも千葉にあると威張っているが、これも東京からの贈り物で、勝ち取ったものではなく、土地を奪われたに過ぎないし、あらゆる千葉の繁栄は東京というコップからあふれ出た余分な水の恩恵に浴しているだけなのである。自分たちだけで事業をやれば京成電鉄や銚子電鉄のように時代遅れの電鉄会社になってしまい、京急や濡れ煎餅屋と組まなくてはいけない事態になる…。


 温暖な気候と農作物や水産物に恵まれ、東京と言う格好の稼ぎ場もある、この境遇がやわな県民性を作ってしまったのだろう。そしてそれが誤った優越感に変わったとき、前号のような攻撃的な排他思想がもたげてくるのだと思う。移民を忌み嫌うトランプやロシア帝国を夢見るプーチンの発想とメクソハナクソなのである。


 千葉は東京の隣にあるから繁栄したのだと東京に言われれば、これも返す言葉が無い。東京の不足を補う立場に甘んじればよかったのに、県民はリトルトーキョーを目ざしてしまった。猫も杓子もサラリーマンになって代々の家業も農地も捨てた。だから千葉県は人口は多いのに、大工さんや屋根屋さんのような伝統的な職人さんが極端に少ない。千葉がいつまでも復旧できない理由のひとつになっている。


 独立を目指すのではなく、東京のシモベでいるのがいい。そう考えると今のままが一番いい。身の丈程度に生きていくことにする。

(団塊農耕派)