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  • 日本商業新聞

【2022/11/14 日本商業新聞】商品選ぶ目「よりシビア」に専門店 10月度の売上厳しさ滲む

 コロナの水際対策緩和や全国旅行支援等が実施され、経済面では明るい兆しが見え始めている一方で、化粧品専門店を取り巻く環境をみると、物価の上昇や平均賃金が上がらないという現実の中で、消費者は〝どこにお金をかけるか〟の基準がよりシビアな方向に向かっていると感じている。今後は〝このお店でこの化粧品を買いたい〟と思ってもらえる商品開発並びに店頭活動の追求をより一層高めていくことが必要になるだろう。(中濱)



■じわじわせまる物価上昇


 コロナ対策の緩和により街に賑わいが戻ってきた。国際線の冬ダイヤは、新型コロナの水際対策の大幅な緩和を受け、日本を発着する旅客便が昨年の同じ時期の約3倍に増えたほか、国内では「全国旅行支援」がスタートするなど、これまでの自粛傾向から、いよいよ外出機運へとマインドは変化しており、経済においても明るい兆しが見え始めている。


 大手百貨店5社の10月度売上高をみると、前年同月比で「三越伊勢丹」は25・1%増、「Jフロントリテイリング」11・8%増、「H2Oリテイリング」20・1%増、「髙島屋」14・2%増、「そごう・西武」10・9%増と軒並み増。

 好調の要因としては、各社引き続きラグジュアリーブランドが好調に推移したほか、インバウンド顧客の復活により免税売上が回復したことが挙げられる。

 「H2Oリテイリング」では、2018年同月比の売上高を4%上回り、またインバウンドを除く「国内」売上高も8%増となるなど、いずれもコロナ前の水準を上回る業績で着地した。


 このように、様々な規制緩和によって「コロナとの共存」へと捉え方が変化していく中で、景況感は上昇傾向にあることが見て取れる。


 しかしながら、「化粧品専門店」の10月度の動きをみると、全体的には「前年並み」か「前年割れ」と回答するお店が多かった。その理由としては、まず資生堂が主力のお店は、9月16日から月末にかけ「秋の化粧品デー」が開催されたことにより9月に施策を集中。その反動をうけ、10月は来店客数及び売上に影響が出たことがひとつ。


 もうひとつは、9月は各メーカーから新商品の発売が多く好調に推移したが、こちらもその反動によって10月の低調に繋がったことが考えられる。


 そして最も大きな要因として挙げられたのが〝物価上昇〟だ。多くの専門店経営者が『食料品や生活用品など、あらゆる商品の値上げが実施されている状況の中、お客様もじわじわと値上げによる家計のひっ迫を感じており、化粧品に対しても積極的な消費に向かっていないことが感じとれる』と回答。


 そうした中「前年を上回った」と回答したお店を分析してみると、『デコルテの好調に支えられ全体の売上が押しあがっている状況』と答えるお店が多く、「デコルテ」の強さが際立っている。


 弊紙「専門店キャッチアップ」に登場している「ビーハウス星の国アピア本店」では、『年2回実施している大型セールを今年も10月に実施したところ、19年の売上突破に留まらず過去最高の売上を達成。そのけん引役となったのが「デコルテ リポソーム」商材で、コーセー1社で1000万円を超えた』とデコルテの大躍進が過去最高の売上に繋がったと話す。


 このように、現在の専門店を取り巻く環境を総括すると、市場環境としては内から外へとマインドが解放されつつあるものの、物価の上昇や平均賃金が上がらないという現実の中で、消費者は〝どこにお金をかけるか〟の基準をより明確に分けしていく方向に向かっていると感じている。


 その背景には、先述のとおり『積極的な消費に向かっていない…』と多くのお店が実感している一方で「ホリデーコレクション」に関しては非常に活発な動きを見せていることが挙げられる。


 例えば『デコルテやジルスチュアート、エレガンス、クレ・ド・ポーボーテも予約で完売』、もしくは『残り数個』と予約段階で完売御礼となるなど、「絶対に欲しい」というものに関しては、お客様は発売前から心待ちにしているなど商品を選ぶ目が鋭くなっている。


 要するに、消費者のお金の使い道がよりシビアになっていく中で、メーカーにおいては〝この化粧品を買いたい〟と思ってもらえるような商品を開発していくこと、そして専門店においては〝このお店で買いたい〟と思ってもらえるような活動を、今まで以上に突き詰めていく必要性が高まっているということではないだろうか。

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