近年、消費者嗜好の多様化やSNS等の影響で他の業界と同様、化粧品市場も二極化が進んでいる。先日、コーセーが実施した記者ミーティングで小林一俊社長は、日本市場の現況について「二極化の傾向は欧米諸国並みに強まっている。化粧品によって高価格帯と低価格の商品を使い分ける生活者が増えている」と説明。二極化が顕著化していることについて触れた。背景には、経済的な理由に加えて、消費者の選択眼が厳しくなり、差別性を重要な要素とする消費者が増えていることも理由の一つ。そして、今は商品やブランドだけでなく、店頭にも求められている。(半沢健一)
■二極化進む背景に意識の多様化
この数年、消費者意識は多様化する等、中でも顕著になっているのが二極化だろう。アパレルや自動車等の業界に留まらず、化粧品業界もである。
先日、コーセーが実施した記者ミーティングでも、小林社長が日本市場で二極化が進んでいることについて触れた。「二極化の傾向は欧米諸国並みに強まっている。高価格帯の化粧品を愛用しているお客さまでも、使う化粧品で高価格と低価格とを使い分けている」と説明。その言葉通り、様々な業界で二極化が進んでいるが、まず、経済的影響が最初に思い浮かぶが、それだけではない。
高価格帯の化粧品が提供する価値とは、高い機能性や品質と手間暇かけて創りあげた世界観が提供する「高い満足感」だろう。一方、低価格帯の化粧品が提供する価値とは、ずばり「コストパフォーマンスである。そう考えると、中価格帯の価値は、どうしても差別化ポイントを感じにくい。
消費者意識が多様化している今、どれだけ明確な差別化を示せるのかが大切であり、そのためには、自社のブランドや商品のポジショニングを考慮しながらのマーケティングに取り組んでいくことを迫られている。
■お客さまの声を反映 - 明確な差別化を打ち出す
それを、化粧品メーカーを専門店に置き換えて考えると、殆どの専門店が高価格帯に属する。ただ、それは高価格帯の化粧品を取り扱っているという単純な理由ではなく親身な接客、時間と手間をかけたカウンセリングそして気持ちのよい施術で「高い満足度」を提供していることにある。記者はそれが専門店での明確な差別化の一つと今まで何度も記してきた。
この数年、消費者の多様化する意識や来店客の年齢層に合わせて、制度品ブランド以外にも様々なブランドを導入する専門店が増えている。高い満足度を提供するには、多種多様な嗜好を持つ来店客一人ひとりに高い満足感を感じてもらうためにも提案力と対応力の幅を拡げることが大事だ。
そのためにも、お店の特性だけでなく、エリア特性や、来店客の特性、そしてテナント店であれば館の特性も大事な要素になってくる。要はお店やお店周辺のことをしっかり把握し、専門店として、お店としてどう明確に差別化を打ち出していくか、そうでなければ来店客に高い満足度を提供することは叶わない。
実際、地方のショッピングセンターで展開している某専門店の事例を挙げると、同じ商圏内にグループ店を展開しているため、館の特性に合わせてブランドの配置換えをしたり、館の中心世代に合わせて新たなブランドを導入する等して「肌悩みを抱える若い世代のお客さまが安心して相談できるお店」として支持を獲得している。
専門店に限らず、小売店が差別化を図るうえでその要素は、▼ユニークなコンセプト▼高品質な商品・サービス▼カスタマーエクスペリエンスの向上▼ローカルコミュニティへの貢献▼限定商品や特別サービスの提供▼オンラインプレゼンスの向上▼顧客の声を反映▼ブランドストーリーの強化等があり、これらを組合わせながら取り組むことが重要だという。
この中で一番重要だと思われるのが「顧客の声を反映」である。接客の中で、そのお店に求めていることを直接聞けるためである。それがリアルの強みであり、明確な差別化を打ち出していく一番の近道だと捉えている。この二極化の傾向は今後もさらに強まっていくが、その時に大事なのは明確な差別化を打ち出すことで、そのためにもお客さまの声に耳を傾けることに尽きる。
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