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日本商業新聞

【2024/8/5 日本商業新聞】アルビオン EC実施を検討 / 全てはお客様の為に / 切実な声に手を差し伸べる

弊社100周年特別号の取材にて、アルビオン・小林章一社長は「デジタル戦略及びECを実施する方向で検討を進めている」と発表した。取材を通して感じたことは、実際に同社に届くお客様からの切実な声、あるいは閉店・廃業に伴う影響など、様々な葛藤の中で、〝すべてはお客様のために〟という小林社長の信念のもと、相当の覚悟で決断に至ったということ。今後同社の動きに注目が集まることは間違いないが、〝アルビオンらしい〟デジタル戦略が届くことを期待したい。(中濱)



■全てはお客様の為に


コロナ禍を経て消費者の購買行動は大きく変化し、化粧品専門店を中心とする制度品ビジネスにおいても、リアルのみでの展開から、SNSをはじめデジタルとリアルを融合させた取り組みはもはや必要不可欠かつ当たり前の活動として定着しつつある。


そうした中、これまでも焦点となってきたのが制度品ブランドの「EC展開」である。現在、資生堂・カネボウ・コーセーがオンラインでの展開を開始しており、開始時期は未定ではあるものの、今回アルビオンが加わることで制度品メーカーすべてが出揃うこととなる。


ここで注目すべき点は、これは以前から言及してきたことであるが、ECの目的が「拡売」なのか、それとも「補完的役割」なのかということ。冒頭の通り、消費者の購買行動が多様化している現代において、ECという買い場を用意しておくことは時代の流れとして必要だろうと感じている。


しかしながら、特に高級化粧品を中心とする制度品ブランドにおいては、記者はあくまでもリアルに対する補完的ECであることが前提でなければならないと思っている。なぜならば、ブランド価値とは、商品(ものづくり)と接客、そしてサービスの三位一体によって醸成されるものであり、商品だけに焦点を置いた拡売を目的にしてしまうと、ブランド価値の低下に繋がりかねないからである。


要は、高級化粧品販売における〝本質〟を見失わずに、EC及びデジタルをいかに活用するかが、専門店にとって今、最も求められているように感じるのである。


本題をアルビオンに戻すと、小林社長は決してその本質を見失っていないからこその苦悩があったことが見受けられる。小林社長は「デジタル戦略にも注力し、ECについても実施の方向で検討している」としながらも、本音としては「(ECを)やらずに済むのであればやりたくない」と吐露する。


ではなぜデジタルへの舵を切る選択を迫られたのか―。その背景には、商環境の変化に加え、「お客様からの切実な声」と「閉店・廃業に対する影響」が、アルビオンにとって看過できない課題として積み上がってきたことが大きな要因であると説明する。



■切実な声に手を差し伸べる


まず「お客様の切実な声」としては、「店頭が近くにない」「仕事と育児の両立で時間がない」、あるいは「小さい子どもを抱えてゆっくりと接客を受ける余裕がない」など、女性の多様化する生活環境の中で「(リアルで)買いたくても買えない」状況にある方が増えているのと同時に、ネットが普及している世の中で「なぜアルビオンにはオンラインでのサポートがないのか」という不満が片側でうまれてきているという。


実際に、お客様からの声を一部拝見させていただいたのだが、「アルビオンの商品を使いたいのに使えない」という一人ひとりの声は本当に切実で胸が痛くなる内容ばかりであり、こうした声が連日のように届いていることを考えたならば、やはり手を差し伸べる手立てを考えていかねばならないだろうと感じる。


そして2点目の「閉店・廃業に対する影響」は、これは化粧品専門店全体としても大きな課題であるが、アルビオンでは、昨年からの1年半で80店以上が閉店。月平均の店頭消化でみると約4000万円、年間にすると4・7億円の売上がなくなるだけでなく、長年にわたり育成してきた会員もゼロになるなど、売上・メンバー数共にかなりの影響にのぼることが見て取れる。


このように、リアルでの買い場減少による影響も、購入難民が生まれている要因のひとつであると言え、こうしたアルビオン製品を買いたくても買えない顧客に対し、アルビオンでは現時点で受け皿がなく、お客様から切実な声としてあがってきたと言える。


これまでジョイントストアとの協働を大切にし、愚直に対面販売での愛用者拡大を貫いてきた同社だけに、先述の「ECをやらずに済むのであればやりたくない」という言葉に繋がったと思われるが、こうした様々な葛藤の中で決断に至った大きな後押しになったのは、やはり〝お客様のために〟という想いだ。



■11月に「方針説明会」- 送客と集客力に全力傾ける


小林社長は、「すべてはお客様のためのEC及びデジタル戦略である」ということを伝えるために、今、アルビオンの中で起こっているリアルの現状を包み隠さず話された訳であり、11月にはジョイントストアに向けた「方針説明会」を開催し、小林社長自らの言葉で説明される予定となっているので、しっかりと見守っていきたい。


次に、最も肝になるのが「デジタル戦略」の内容である。先ほども申し上げた通り「拡売または補完的役割のどちらなのか」という記者の問いに対し、小林社長は「あくまでもECは店頭で購入できなくなった、あるいは近くに店舗がないなど、リアルで購入することが難しいお客様に向けた救済措置であり、本筋はジョイントストア様によるリアルな接客であることに変わりはない」と明言。


その上で、アルビオンが目指すデジタル戦略・ECの基本的な考え方としては、ジョイントストアへお客様を送り込む〝送客〟と〝集客力を増やす〟ことの2点に全力を傾けていくと説明。


またEC展開においても、「自社サイト」及び「正規取扱店舗が自ら運営しているECサイト」のみで行う方向で進んでいることからも、ECでの拡売やブランド価値の低下に繋がるといった懸念については一安心といっていいだろう。


11月の正式な方針発表に向け、今後はアルビオンの動向に注目が集まることは間違いないが、これからもジョイントストアと共に歩み続け、高級化粧品の第一人者として信頼を紡いでいく〝アルビオンらしい〟デジタル戦略が届くことを期待したい。

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