コロナ禍は様々な市場に変化をもたらしたが、その中で「ギフト市場」は大きな成長を続けており、特に〝カジュアルギフト需要〟は年々高まりを見せている。ある化粧品専門店では「コロナ禍という厳しい状況は続いているが、ギフト需要に取り込んでいるメーカーは堅調な強さを発揮している」と話しているように、化粧品専門店においても、ギフト需要に対応しているか否かが、今後お客様から選ばれる理由のひとつになるのかもしれない。
(中濱)
■急成長のカジュアルギフト
矢野経済研究所が発表した「ギフト市場に関する調査」によると、2020年の国内ギフト市場規模は、前年比92.5%の9兆8905億円、2021年は同102.2%の10兆1040億円を見込んでいる。
一見すると成長の少ない市場にみえるが、その内訳をみると、「お中元・お歳暮」の市場規模は、2020年で同96.7%の1兆5680億円、2021年は同99.4%の1兆5600億円を見込んでおり、いわゆるお中元やお歳暮、冠婚葬祭の返礼といった「フォーマルギフト市場」はコロナ禍の影響を受け縮小傾向にあるものの、ギフト市場全体が縮小していない要因には「カジュアルギフト市場」の急成長が挙げられる。
「カジュアルギフト」とは、家族や友達など、親しい人や大切な人に〝個人間〟で贈るプレゼントを意味する。アドバタイムズによると、コロナ禍で気軽に人と会うことが出来ない状況の中、コミュニケーションの手段としてギフトを贈ったり、あるいは会食でのお祝いが贈り物に代わるケースが目立っているという。要するに、気持ちを伝える手段として「ギフトを贈りあう」というニーズの高まりが、カジュアルギフトの需要を押し上げる要因になったと言える。
更にZ世代では、記念日はもちろん、日常のちょっとしたお礼やコミュニケーションとしてプチギフトを贈るケースも多い。このように、カジュアルギフトがお互いの気持ちを伝えあう手段として浸透しつつあり、そのけん引役となっているのが「ソーシャルギフト(eギフト)」である。
■LINEギフト利用者1000万人増
「LINE」が提供している「LINEギフト」では、「LINEギフトを贈ったことがある、もしくはもらったことがある」ユーザーは、累計で2500万人を突破。昨年同期比で1000万人も増加しており、更に年間総流通額は前年比330%を達成するなど、個人間でソーシャルギフトを利用する文化は急速に広まっている。矢野経済研究所では、「eギフト市場」は2025年に4057億円まで拡大するとの予測も立てているなど、注目の市場であることは間違いない。
好調なのはECだけではない。化粧品専門店においても「カジュアルギフト需要」で必勝パターンを見出しているお店がある。香川県で化粧品専門店を営んでいる「センコヤ」では、3000円前後の価格帯を主としたギフトを展開。主な顧客の年代層としては20~30代が多く、お客様がギフトで購入する際に同時にアプローチを行い、会員になって頂くというケースが増えているという。
また同店はSCで展開していることから、例えば他店で購入したモノも一緒にラッピングするサービスに取り組むなど顧客満足度の向上に繋げている。同店・福家社長は「コロナ禍という厳しい状況の中でも、ギフト需要を取り込んだメーカーは非常に好調な推移を見せている。ギフト需要のあるフック商品を持っているかどうか、これによって各メーカーの新客獲得数の優劣が出ている状況だ」と話す。
このように、専門店においてもカジュアルギフトに対する受け皿を用意することは必要不可欠なコト提案になるだろう。更に、メンズコスメやジェンダーレスコスメの広がりを考えたならば、女性から男性へのギフトなど、性別を超えた新たな出会い創出に繋がる可能性も高い。非常に有望な市場であるだけに、取り組む価値は大いにあるのではないだろうか。
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