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【2025/4/14 日本商業新聞】美容意識高い消費者の受け皿に

  • 日本商業新聞
  • 4月15日
  • 読了時間: 4分

百貨店の化粧品は2022年度以降好調で、特に訪日客の売上は右肩上がりで伸び続けている。実際、百貨店の化粧品売場は訪日外国人ばかりで日本人客の姿が見られず、コロナ前のインバウンド時と同じ光景が拡がる。そんな光景を見て「美容意識が高い、幅広い年齢層の消費者の受け皿は化粧品専門店である」という思いを強くした。ブランド一つひとつの世界観を大切にした店づくりだけではなく、来店客に合わせたブランド揃えや活動も重要であり、お客さまが求めるものを叶えるお店でなければならない。(半沢健一)



■顧客優先の店づくり


取材で銀座に訪れた時のこと。銀座三越にある化粧品売場を覗くと、平日の夕方だったが多くの人で賑わっており、その殆どが訪日外国人という状態だった。


このような光景はコロナ前は当たり前だったがコロナを機に訪日外国人の姿は全く見られなくなった。さらに訪日客の消費行動が「モノ」から「コト」へと変わったことで、「百貨店の化粧品売場が訪日客で埋め尽くされる光景はもう見られない」というのが大方の予測だったが、再びこうした光景が見られたことに正直驚いてしまった。


百貨店の事情に詳しい知人によれば、百貨店の化粧品は2022年度以降好調で、特に訪日客の売上は右肩上がりで伸び続けている。実際、化粧売場は訪日客の姿しか見られず、「百貨店で化粧品を購入していた日本人は何処に行ったのだろう」という思いが頭に浮かぶ。


百貨店の化粧品売場にいる日本人の多くは、ラグジュアリーな落ち着いた雰囲気の中で、そのブランドの世界観に浸りながら買い物を楽しみたいからだろう。しかし、売場には訪日客が多く訪れるようになったことで、売場の導線やブランド揃え、売場自体の雰囲気も以前と明らかに違う。とてもじゃないが、落ち着いた雰囲気でゆっくり買い物を楽しむどころではなく、先述の日本人が百貨店に求めるニーズを叶えることは難しい。


特にこの数年、美容意識の高い女性が増加傾向にあることから、百貨店の化粧品売場でも、20代の若い女性の姿が増えていたが、それも少しずつ減少傾向と聞く。オンラインストアやECで化粧品を利用するユーザーが増えていることも理由と考えられるが、それでもブランドの世界観の中で買い物を楽しんでもらうことがブランドのファンづくりと捉える記者にとってどこか不安だ。



■来店自体に魅力を満たせる


一方、美容意識が高い、幅広い年齢層の受け皿として最も適しているのが化粧品専門店ではないだろうか。ブランド一つひとつの世界観を大切にした店づくり、お客さまの肌悩みや嗜好、ライフスタイルに合わせた提案等一過性でない、そのお客さまの生涯を見据えた活動は専門店ならではである。そして、その専門店のお客さまに合わせたブランド揃えや活動も重要だ。


以前、郊外で展開している、ある専門店を取材したことがある。そこは新規の獲得が難しい立地にあり、地元のシニア層を中心に取り組む。新しいブランドや話題のブランドを積極的に導入するよりも、現時点で愛用者づくりができている既存ブランドを軸に、ゆったりとした中でスタッフとの会話や施術を楽しんでもらうことを大切にしている。決して、都心にあるキレイでおしゃれなお店ではないが、親子三代の顧客もいるほどで、長年にわたり高い支持を獲得し続けている。


ここから、顧客がお店に求めていることを最優先にした店づくりや活動が重要であることがわかる。専門店とはただ化粧品を販売するだけの場ではなく、スタッフや美容部員との会話や施術を通して、美容に関する意識を深めたり、肌悩みを解決していく場であり、来店自体に楽しみが生まれていることが魅力だ。


今後、化粧品専門店として、お客さまの支持を獲得するために欠かせないのは、その専門店を支持するお客さまの思いをどこまで叶えられるか。だとすると、店づくりや活動、ブランド揃え、もっと言えば見せ方や情報発信の形全てが異なってくる。まずは独自の形を創りあげていくことが重要で、お店ならではの特長を明確に打ち出すことそれが多くのお客さまの支持獲得につながる。

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