【2025/3/31 日本商業新聞】専門店の体験型コンテンツとは
- 日本商業新聞
- 4月1日
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新型コロナの収束により、この数年、リアル回帰への動きが大きくなっており、それはショッピングやイベント参加、旅行や仕事環境等の場面でも見られる。
背景には、対面による直接的なコミュニケーションや体験に価値を感じる生活者が増えていることも要因の一つに挙げられる。そうした動きに合わせて、業界問わず体験型コンテンツを提供する店づくりが進んでおり、先日、リニューアルオープンした「@cosme TOKYO」もその一つといえる。そうした環境のもと、テナントや路面店を含め、化粧品専門店が提供していくべき体験型コンテンツとは何か。(半沢健一)
■専門店の体験型コンテンツとは
新型コロナによる影響によって、この化粧品業界で大きく変化したものとして、化粧品の購買行動や化粧そのものに対する意識を挙げることができる。それ以外にもコロナ禍でデジタルやオンラインによる活動が拡がったが、収束して以降はオンラインからオフラインへ、つまりリアル回帰の動きが様々なシーンで見られるようになり今もその動きは続く。
例えば、数年前まではECで買い物することが当たり前だったが、今はリアル店舗で買い物する楽しさが注目を集めている他、旅行やコンサート等のイベントにおいてもリアルな体験を求めて盛り上がりを見せている。働き方でも、対面で働くことの価値が再認識され出社回帰の傾向が強まった他、週1~2日だけテレワークというハイブリッド型の勤務体系も拡がっている。
3月5日、アイスタイルリテールでは、東京原宿にある「@cosme TOKYO」をリニューアルオープンした。詳細は今号で紹介しているため割愛するが、ひと言でいえばリアルな体験を楽しんでもらうための店づくりがさらに進化。スマホやタブレットの画面から魅力を訴求していくだけではなく、実際に店舗に来店をしてもらい様々なコンテンツを通じて、化粧品選びの楽しさを提供していく店づくりが特長だ。
その中でも個人的に注目したのが「フレグランスゾーン」に展開されていたインタラクティブサイネージ「カオリウム」による「好みの香り診断」だ。幾つか質問に答えるだけで、好みの香りが見つけられるというものでAI技術を活用し、よりリアルな体験を演出するという新たな試みに多くの人が楽しんでいた。
こうした、リアルな体験を重視した店づくりは進んでおり、今後もさらに増えていくだろう。そして、駅ビルや商業施設にあるテナント店や住宅街や郊外にある路面店でも同じく、化粧品専門店の専門性を強く訴求していくことが重要で、そのためにも化粧品専門店ならではの体験型コンテンツを提供していくことが重要になる。
■タッチアップに注力
化粧品専門店ならではの体験型コンテンツとは何だろうか。それは、化粧品の高い機能性や心地よい使用感触、情緒に訴える香りを感じてもらうことで「美しくなることを肌で実感してもらう」ことに尽きる。そして、全ての化粧品専門店で行われている「タッチアップ活動」、これこそが専門店ならではの体験型コンテンツといえる。
確かにデジタルを活用したコンテンツは生活者からの関心も高く、効果的だ。ただ、それらの多くは補完的な部分も多く、やはり肌で実感してもらうことには敵わない。お客さま一人ひとり違うニーズや肌悩みを会話から聞き出し、それに最も適した化粧品やお手入れの良さを実感してもらう。その「タッチアップ活動」は専門店だけではなく、メーカーも大切なファンづくりの第一歩として取り組み続けてきた。
専門店のオーナーやメーカーの営業との会話の中で、「1日に〇〇人のお客さまにタッチアップしました」「今月は〇〇人のタッチアップ活動を目指します」という言葉を聞くことがある。確かに回数は、何人のお客さまに化粧品やお手入れの良さ提供しているかの指標として大切だ。しかし、一番の目的は、先述の通り「美しくなることを肌で実感してもらうこと」であり、化粧品の機能性や使用感触、香り、そして美容に取り組むことの楽しさをリアルな体験として感じてもらうこと。だからこそ、何故タッチアップ活動に取り組んでいるのか、それにこだわる姿勢がリアル回帰が進んでいる今、最も大切にしなければならないことである。
■中身にこだわる姿勢重要
もっといえば、エリア特性も客層もお店ごとに異なることを考えると、その活動の中身も違うのは当然で、画一的な内容では十分といえないのではないのか。店頭ではスタッフの確保が難しいことは承知しているが、「数」よりも、「中身」にこだわる、つまり「量より質」にこだわっていくことが、結果的には効率の面でも優れているのではないだろうか。その意味でもお客さまに、化粧品やお手入れを通じて美しくなることを実感してもらう、美しくなることを楽しんでもらうため、中身にこだわった活動にすることが重要になる。
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