ポーラ・オルビスホールディングスでは、今年1月1日付で、それまでオルビス社長を務めていた小林琢磨氏をポーラ新社長とする人事を発表した。本紙では、小林社長へのインタビュー取材を実施、改めてポーラの強みや今後の取り組み、そして今後目指す方向性について語っていただいた。なお、小林社長へのインタビュー記事は後日改めて掲載する予定で、是非一読していただきたい。その中で記者が注目したのは、小林社長のデジタルマーケティングへの考え方、そして化粧品専門店の位置付けである。(半沢健一)
■ポーラ最大の強みは「人」- デジタルはサポート役
小林琢磨社長は、2002年入社。2010年に社内ベンチャー制度第一号の敏感肌専門ブランド「ディセンシア」を展開するディセンシアの社長に就任。同ブランドを躍進させた手腕が評価され、2018年にオルビス社長に就任。大規模な構造改革でV字回復を実現。今年1月1日付でポーラ社長に就任した。
今回のインタビューの中で小林社長は「ポーラの強みとは何だとお考えですか」という質問に「人です」と答えている。「若い世代の人口が減少している今、当社だけでなく他社でも販売員の採用・確保に苦労しています。しかし、当社にはポーラだけを、それも長い期間販売している販売員が何万人もいて、それがポーラ最大の資産で強みだと思います」と説明。リアル体験による生活者との関係性や絆の強さが大きな資産と付け加える。
小林社長は、入社以来、長年にわたり、ECやデジタルマーケティングに携わってきているため、今回の人事に対して率直に感じたのは、今後同社ではデジタルを軸にした取り組みを進めていくものと感じていた。しかし、小林社長は「僕にとってのデジタル化というのは販売員やお客様がより簡単に化粧品を購入できるようにするためだったり店頭で販売員や体験の価値を感じていただくためのものです」と説明。要は、デジタルの取り組みは、強みの「人」や「リアル」の魅力をより感じてもらうため、あくまでもサポートであるという考えを持っている。
ポーラは、百貨店やポーラザビューティー、そしてオンラインストア等複数のチャネルで展開しており、国内のそれら全てのチャネルを共通で体験できるよう「ポーラプレミアムパス」として顧客IDを統合。そして、ただ利便性を高めただけに留まらず、得たデータを使って高精度のCRMを発信。喚起を促すことで、リアル店舗の活動支援も目的としている。
実際、「ポーラプレミアムパス」登録者の方が非登録者よりも平均単価や継続率は高い。また昨年から始動したオンラインストアで申し込み、ポーラ店舗で商品を受け取れるサービス「Shop de Pick」では、商品の受け取りだけでなく、エステやカウンセリング等の体験も可能で、申し込み時よりも購入金額が3割ほどアップした他、肌分析やカウンセリング希望者も4割アップする等、顧客接点の拡大や体験価値の体験に繋がっていると聞く。まさに「人」「リアル」の魅力を高めるサポート役である。
■専門店に高い期待
また、新たな接点拡大として小林社長が期待を寄せるチャネルが「化粧品専門店」。2023年、広島県福山市の「LOOKさんすて福山店」内に化粧品専門店第1号コーナーをオープンさせて以来、昨年末までに9店舗を展開。今年は30店舗に増やす予定だ。
小林社長は「お店様がポーラを取り扱っているという認知がまだまだ低いのが課題ですが、そこをクリアすれば実績も上がってくるはずです。お客様との新しい出会いの場として手応えを感じています」と高く評価している。
これまで本紙では化粧品市場やメーカーのデジタル化について触れてきたが、それは今後も進んでいくのは間違いない。そして、デジタルでの取り組みを取り入れて活用することが先述のような成功事例も出ている。大切なのは、変化している生活者の意識や購買行動に合わせながら、「人」や「リアル」の魅力を高めることにどう繋げていくか。記者は、デジタル化とは単に利便性だけでなく、商品やブランド、そして「人」や「リアル」の魅力を感じてもらうためのものと考えている。
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