「何でも相談できる店」を前面に発信している化粧品専門店は少なくない。しかしながら、消費者からみると「何でも相談できる」というのは抽象的で、逆に「何が魅力なのかが分からない」と感じる傾向にあるようだ。要は、今の時代はいかに〝刺さる〟言葉や体験価値を発信できるかが重要であり、「何でもできる店」から「何ができるのか」「何に強い店」なのか、そのお店ならではの〝独自性〟を発信することが求められている。(中濱真弥)
■「何に強い店」なのか
「街の化粧品屋さんの存在は知っているが、行く理由がない。美容について何でも相談できるというが、それなら百貨店や大型ショッピングモールの専門店もあれば、オンライン上などからでも色んな情報を得ることができる。他と同じであれば、行く理由がないと感じている」
ある地域密着型の化粧品専門店経営者が、中学生向けに行った授業の中で直接投げかけられた言葉である。
確かに、ありとあらゆる情報が溢れている今の時代、消費者の心を掴むには、いかに〝刺さる〟〝バズる〟言葉や体験価値を発信できるかに注目は集まっており、そうした傾向が強まる中で「何でも相談できる」というのは抽象的で魅力が伝わりにくい。
この経営者は、中学生の生の声を聞き「何でもできるというのは逆に器用貧乏のイメージを与えるんだなと感じた。特に地元密着の路面店では、美容のプロがいることは必要不可欠であるが、その中でも〝何が強みか〟の発信が必要だ。
街の車屋さんを例に挙げると、車のことなら何でもできるプロだが、『修理に強い店』『改造に強い店』『販売が強い店』など、店舗の特長を大きく打ち出していることで、何に特化しているお店なのかが消費者にインプットされている。こうした点からも、今後は〝特長ある店づくり〟がますます重要になるのではと感じている」と話す。
要するに、何でもできる店から「何が強みか」「何が得意か」という、そのお店がだからこそできる〝独自性〟が求められる時代に入ったのではないだろうか。
特に、フリー客の少ない地域密着型の店舗や限られたメーカーで展開している店舗は、たくさんのブランドを有している店舗と比べ、立地や商品力でのパワーがどうしても劣ってしまうだけに、一段と商品力以外での独自性を持つことが必要になることは間違いない。
そうした中、愛知県小牧市の閑静な住宅街の一角で、アルビオンを中心に展開している「コスメティック遊」では、昨年10月〝トータルコーディネート〟をコンセプトに掲げた新たな路面専門店を移転オープン。
化粧品は移転前と同じくアルビオンを中心としながら、新たに美容院・ネイル・エステを併設した「YU+」としてパワーアップ。頭からつま先までトータルな美を叶えるお店として、路面専門店としての新たな生き方を示す。
■その店ならではの価値提供を
オープンに至った背景として、コスメティック遊代表の長谷川氏は「地域密着型専門店の最大の強みは、顧客ひとりひとりの深い部分にまで入っていける専門性や技術力の高さにある。この唯一無二の〝独自性〟を更に引き上げていくためには、より〝自分たち(人)〟を主役とした店づくりが必要だと感じていた。そこで今回、化粧品専門店と同じく〝人〟の魅力が強みである美容院とネイルのスタイリストとの出会いにより、YU+でしか叶えられない体験価値をつくりあげることができた」と、人の強みを軸とした独自性に特化することで、YU+でしか体験できない価値を打ち出していく。
またある経営者は「路面店はエステとの親和性が非常に高い」と語る。その理由としては、「物価や人件費高騰等、物販(化粧品)は利益率が徐々に下がってきたことに加え付加価値もつけにくい。一方で、エステは利益率が高いだけでなく、顧客の満足度向上や単価、来店回数のアップなど、様々な点で相乗効果が得られる」というように、エステの強化によって様々なメリットや相乗効果が生まれているという。
さて、あなたのお店は自店の独自性を語れるお店になっているだろうか。
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