「デジタルとリアルの融合」という新時代の幕が明けた。化粧品専門店流通においても、新専門店ブランド「アクイン」から、お店と顧客が1対1で紐づく「専門店向けオンラインサイト」が導入され注目を集めている他、ある路面専門店では、You Tubeを介した新たな顧客創造に繋げているなど、これまでにない新しいスタイルの専門店が誕生している。場所や時間に制限のないデジタルと、顧客に深く寄り添う専門店ならではの強みを掛け合わせた生き方が、今後商機を掴むカギになると感じている。(中濱真弥)
■SNSで出会い創出
コロナ禍を機に急速に進んだデジタル化の波によって〝商流〟は劇的に変化した。特にボタンひとつで商品を購入できるECの存在は化粧品専門店にとって脅威となる存在として考えられてきたが、今号の3面で紹介している新専門店ブランド「アクイン」は、顧客とお店が1対1で紐づく新たなオンラインシステムを開発・導入し話題を呼んでいる。
それ以外にもアクインが支持されている理由として、店頭もオンラインも、そのお店の〝売場〟であるという考え方が背景にある。お客様が買う場所がリアルの店頭なのか、それともオンラインなのかという違いだけで、「そのお店のお客様である」ということを明確化することで信頼関係を構築している。
明確にする方法としては、商品を店頭で購入しても、オンラインサイトで購入しても同じ利益が還元される「利益の平準化」を導入することで、リアルorオンラインどちらで商品を購入しても、決して取扱い店舗が〝不〟を感じない取引環境を整えている。
更には、「誰が・いつ・どの商品を購入した」という〝見える化〟までしっかりとサポートされていることから、取扱い店舗にとっては、顧客の購買行動の一元管理が図れるという、いわば〝顧客の囲い込みができるEC〟として、今後専門店流通におけるECのスタンダードになるのではないかと感じている。
デジタルによる商流の変化は専門店の中でも起こっている。例えばSNSの普及により、消費者の情報収集の方法はインスタやYou Tubeへと移行し、店頭への来店動機という点でも、気になるものや欲しいものなど〝目的〟をもって来店するスタイルが増えている。
また顧客との繋がりという点では、今やLINEが主流となり、情報発信やクーポンの発行、あるいは個々の顧客との会話(チャット)など身近なツールとして浸透しており、コミュニケーションの向上に活用されている。
■細やかなサービスでファン拡大
こうした変革の時代の中で、新たな生き方のお手本となるお店も生まれ始めている。愛知県で路面専門店を営んでいる資生堂オンリーのあるお店では、専門的な知識や技術を感じていただきたいという思いで約20年前にお店をオープン。
しかしながら、未曾有のコロナ禍によって、得意とする活動が一切できなくなるという状況に陥った。そこで奥さまが思いついたのが〝You Tube〟による情報発信だ。
「全くの新しい試みだったので、とにかく色々な動画を参考にしながらYou Tubeを開設。はじめは既存のお客さまに『チャンネル開設したからぜひ見てね』とお声がけを行い、徐々にお客さまから『見たよ』という声が集まってくるようになりました。そして1週間に1度の動画アップを続けていると、約半年が経過した時点から、当店と全く繋がりのない遠方のお客さまが来店してくれるようになったのです」と、You Tubeを通じて新しいお客さまとの出会いが生まれているという。
現在も欠かさず配信を行っており、その中でサンプルの郵送サービスや、LINEでの個々の相談を受け付けるなど、遠方のお客さまにもこと細やかなサービスを行うことで感動が生まれ、お店のファンは着々と増え続けている。
新時代を迎えた今、新しいコト(デジタル)を取り入れつつ、顧客に寄り添うという専門店ならではの強みをどう活かすかが、変革の時代において商機を掴む糸口になるのかもしれない。
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