コロナ前の状態に戻った日常生活。様々な業界の小売店の店頭も同じで週末になると多くの人で賑わいをみせている。化粧品関連の小売店も客足は戻ってきているが、その中身は以前と異なる。この数年、生活者の化粧に対する意識は変化しており、コロナをきっかけにその変化の幅やスピードはさらに増した。その生活者の変化に対し、「化粧品専門店としての専門性」を高めること、そして地域での存在感や新たな接点を拡大していくためにもお店独自の取り組みが大事である。(半沢)
■化粧意識の変化に必要なのは?
先日、資生堂は20代~30代でベースメイクをしたことがある人を対象に美容意識に関する調査を実施。その調査結果を発表した。
それによると、コロナで外出機会が減り、スキンケア意識が高まったことで、スキンケアにかける時間やお金が増加。その一方で、「ファンデーションを使わない」「週4日以上ファンデーションを使わず、気になるところだけ、コンシーラーや色付き化粧下地で仕上げる」という生活者が約7割を占めていることが明らかとなった。
その背景には、スキンケアに対して「未来の自分への投資」、ファンデーションに対しては「今を装う疲れるもの」という意識が生まれたことがあげられ、多くの人がリモートでノーファンデの心地良さを認識していることがあるという。
また、専門店経営者と話をしていても、「機能性だけではなく安全性も」、「コストパフォーマンスだけではなくタイムパフォーマンスも」を重視する生活者が増えているようで、「化粧品のニーズや嗜好性に少しずつ変化しているようだ」との声をよく耳にする。
■メーカーとの協力体制 - 専門性と独自の取り組みを
そうした中、今後、化粧品専門店にとってより重要になると感じているのは、お客様個々のニーズや嗜好、ライフスタイルまでも踏まえた化粧品やお手入れ方法を提案していくことで、納得してもらい、満足度を高めていくこと。つまり「化粧品専門店としての専門性」である。これは、専門店が磨き続けてきた大きな武器だが、今も変化し続ける生活者の化粧意識に応えていくためにはその「専門性」をさらに磨きあげていくことがとても大事になるだろう。
そして、その「専門性」と共に、お店が展開している地域やお客様の特性を踏まえたうえで独自の取り組みが重要になる。それは、その地域におけるお店の存在感を高めるだけでなく、これまで出会えていなかったお客様との接点拡大もそうだし何よりも、そうした取り組みを通じてお客様との心の距離感を近くしていくことで化粧品専門店の武器である「専門性」をより感じてもらいやすくなるからだ。特に路面店型の化粧品専門店にとって欠かせない取り組みといえよう。
今、本紙では独自の取り組みで成果を上げている専門店を紹介する企画として、「専門店探求シリーズ ~地域密着型専門店の新たな生き方を探る~」を定期的に掲載している。
例えば、兵庫県明石市にある専門店「シバニ化粧品店」(3月4日号掲載)では、地域密着型専門店の社会的地位向上と新たなお客様との接点拡大に向けて、フレイル予防活動やLGBT+の生活者を対象にメイク講座等、様々なイベントに力を注いでおり、イベントがきっかけに、お店のファンを増やしている。
本紙では、今後も独自の取り組みに力を注ぐ地域密着型専門店を定期的に紹介していく予定だ。
今後も変化し続けていくであろう化粧意識に対応しながら、お客様にとって欠かせない専門店を目指していくためには、先述の通り、その「専門店性」と地域特性を踏まえた独自の取り組みが欠かせない。しかし、お店単体での取り組みではどうしても限界があるのも事実で、継続展開していくためにもメーカーの協力が不可欠なのは間違いない。そうした協力体制がなければお店やメーカーのファンを増やすことは叶わない。
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