top of page
日本商業新聞

【2024/2/19 日本商業新聞】コーセー 2023年12月期連結決算/記者ミーティング

 コーセーは、「2023年12月期連結決算」(2023年1月1日~同年12月31日)発表に伴い2月14日、東京中央区のコーセー日本橋本社で「記者ミーティング」を開催した。コーセー代表取締役社長の小林一俊氏は「『3つのG』をキーワードにしたお客さまづくりを積極的に実践した」と2023年度を振り返ったうえで、2024年度においては「利益面での回復、中国事業の見直し、部門一体のモノづくり体制強化。また、ASEAN・インドを含む地域での事業を強化し、日本でも営業体制を強化して、『より稼ぐ力』の回復を推進する」と語った。



 最初に「2023年12月期決算報告」をコーセー取締役経理部長・望月愼一氏が行った後、「『VISION2026』進捗状況と今後の取り組み」と題して、2023年度の振り返りと2024年度における取り組みを同社代表取締役社長・小林一俊氏が別項の通り説明した。


 その後、グローバルな商品開発体制の構築を目的に1月1日に新たに設置された「商品本部」の概要について、同社常務取締役商品本部長兼コーセーインダストリーズ代表取締役社長・小林正典氏が、そして「南アルプス工場建設計画」の概要について、同社執行役員生産部長兼コーセーインダストリーズ常務取締役管理本部長・黛博道氏、更に「コーセー日本販社の取り組み」と題し、同社執行役員兼コーセー化粧品販売取締役副社長・太田学氏がそれぞれ説明。最後に質疑応答が行われた後、情報交換会が開催された。


 ▽「VISION2026」進捗状況と今後の取り組み(小林一俊社長)=2024年度は「VISION2026」のフェーズⅡの最終年度であり、引き続き、①Global、②Gender、③Generationの「3つのG」の発想でお客さまづくりを推進し、グローバル市場における存在感の拡大と更なる顧客体験の追求を目指す。


 「VISION2026」の定量目標に対する進捗状況だが、2023年度は日本や米国では順調に業績は回復したが、V字回復を期待していた中国市場の景気減速の影響等を受けた結果、売上高及び利益率の進捗は大きく遅れている。


 また、海外売上比率及びEC、トラベルリテールの売上比率は、目標に対して概ね順調に推移しているようにも見えるが韓国免税を含む中国人顧客への売り方に対する課題が顕在化しており、従来の中国人バイヤーに偏った販売方法の是正を考えている。



 続いて、2023年度の振り返りだが、2023年度は先述の「3つのG」をキーワードにしたお客さまづくりを積極的に実践した。メジャーリーガー・大谷翔平選手を起用した取り組みは大きな反響となり、男性のお客さまが化粧品専門店や百貨店に足を運ぶ大きなきっかけとなった。また、「ヴィセ」のジェンダーレスブランド訴求に加え、全世代を対象とした商品開発やUVケアをはじめとした化粧品の普及活動にも取り組んだ。


 基本戦略に沿った2023年度の成果として、グローバル展開では「Tarte」が過去最高の店頭消化・売上高を記録。欧米市場におけるコーセーグループの存在感の向上に貢献した。


 独自性のある商品開発にも成果が発揮され、「デコルテ」では、国内でスキンケアだけではなく、メイクアップカテゴリーでも市場からの高評価を獲得しており、お客さまが増加。昨年大ヒットした「ヴィセ」の「ネンマクフェイク ルージュ」はコロナ禍で売上げを落としたリップカテゴリーの復活に大きく寄与。加えて、OMO(オフライン/オンラインの融合)の推進にも注力。「デコルテ」では、従来の強みの店舗販売にオンラインサービスの強化とITの一本化を進め顧客サービスの高度化に繋げた。


 サステナビリティ戦略の推進においては、アダプタブル発想の商品・サービスの提供を目指し、障がいのある方との意見交換を実施。こうした取り組みにより、一人でも多くのお客さまに安心して快適な商品を提供できる商品開発に注力した。また、吉野工業所と協業でポンプに金属部品を使用しない「メタルレスポンプ」も開発した。



 「2024年度の重点取り組み」では、成長戦略として、ブランドのグローバル展開を推進するための地域別戦略と、企業の成長を支える経営基盤を構築するための組織改革について説明する。


 まず、日本のハイプレステージ市場での更なるプレゼンスの向上については、2023年度、「デコルテ」は日本での過去最高売上げを達成した2018年度の実績を上回る成長を遂げた。2024年度も昨年度の売上げを牽引した「AQ」と「リポソームシリーズ」を中心に、スキンケアとメイクの商品力を強化。また、化粧品専門店や百貨店だけでなく、オンラインチャンネルの顧客開拓にも注力し、今年度も二桁の成長を目指す。


 また、アルビオンでは強みのカウンセリングに注力し、ブランド価値の訴求に努める。今年はアルビオンの代表作ともいえる「スキンコンディショナー」が50周年を迎えることもあり、スキンケア商品の販売を一層強化していく。


 そして「デコルテ」のブランド育成だが、2023年度のベストコスメ受賞数は史上最多の423冠を獲得。スキンケアケアだけでなくベースメイク、香水等様々なカテゴリーで高い評価を獲得している。更にECを含むチャンネルの多様化で話題の商品をお買い求めやすくなったことも好循環を生んだ。若年層を中心に顧客層が拡大し、幅広い世代のお客さまからの支持を得るブランドとなった。顧客層の定着化に向けて、顧客接点の拡大とブランドロイヤリティの醸成に取り組む。


 続いて、マス市場でのシェア拡大に向けて、今年度はプレステージ領域に注力していく。「雪肌精」の化粧水は誕生から40周年を迎え、この3月1日にリニューアル。「3つのG」を象徴するブランドとして訴求を強化して、売上拡大を図る。


 コスメタリーは、今年も各ブランドの機能特化型商品をフックに、各チャンネルで顧客接点を拡大。2月16日には累計出荷数が1000万本を突破した人気商品「メイク キープ ミスト」をリニューアル、「メイク キープ ミスト EX+」として発売。カテゴリートップのシェアを維持していく。また、コスメポートでは、原価・在庫・返品の低減を継続、そして新商品の単価見直しで収益性の改善を図る。


 「Tarte」においては、2024年、創業25周年、コーセーの子会社化して10年を迎える。10年前と比較して売上は約4倍に伸長、グループの業績に大きく貢献する企業へ成長した。今後も北米・欧州・中東・アジアへの展開を継続しながら売上拡大を図る。そして、新たなチャンネル展開も引き続き積極的に推進する。


 2023年9月に公式オープンした北米TikTokショップはスムーズな購入プロセスの実現とSNSによる発信力の強化で、今後も売上成長が期待できる。商品面では北米コンシーラーカテゴリでのシェア1位を堅持しつつ2023年度に最も成長したリップや定番のマスカラにも注力する。



 中国市場は2023年経済回復の鈍化や消費マインドの低下により、中国人顧客への売り方に対する課題が顕在化。従来の販売体制を是正し、最終消費者を見据えたお客さまづくりとマーケティングを強化し、ブランド育成を推進していく必要がある。市場環境が変化する中、安定した事業成長を実現するため、ブランドの価値向上と収益性の改善を目指す。


 中国国内で競争が激化するECセールへのプロモーション費用を見直しブランドのファン育成、認知度向上のための投資を強化。また、「AQ」や「リポソームシリーズ」を中心にカウンセリングを通じた顧客づくりを集中的に推進していく。



 新たな市場開拓という視点では、北米は2023年度に引き続き、「デコルテ」「アディクション」「雪肌精」のオンライン販売を強化しつつ、「雪肌精」は大手流通での販売も継続する。欧州ではフランスに拠点を設置、マーケティング機能及びグローバル薬事体制を強化する。ASEAN・インドでは、地域全体を統括する責任者を派遣、既存事業の強化とローカル顧客の開拓を推進する。



 組織改革についてお話する。グローバルな商品開発体制を構築するために、モノづくり部門全てを束ねる「商品本部」を1月1日に設置。各部門との連携強化で需要の変化に対する商品供給の速応性を高め、柔軟で機動力の高いサプライチェーンの構築を目指す。そして、国、地域ごとの多様な薬事法規制への対応、市場の物価水準や消費実態に応じた商品品質の実現に取り組んでいく。


 その一つとして、新たな生産拠点「南アルプス工場」を2026年上期での稼働を目指し今年7月に着工する。当初予定していた大量生産型工場からコンセプトを見直し、需要の変化や生産能力の増強に対応可能な多品種生産工場として稼働させていく。


 2024年度は「VISION2026」のフェーズⅡの最終年度であり、特に利益面での回復、中国市場での事業の見直し、部門一体となったモノづくり体制の強化を図る。


 また、ASEAN・インドを含む地域での事業を強化し、業績が回復しつつある日本においても、営業体制の強化により、「より稼ぐ力」の回復を推進していく。

Comments


bottom of page