今年も終わりを迎えつつある。現在、次週掲載予定の「化粧品10大ニュース」をまとめているのだが、改めて様々なことが起きたことがわかる。人の流れはコロナ前に戻ったが、コロナ禍で業界の在り方が問われているだけでなく、専門店自体も時代に適した変化が求められている。そして、それは来年2025年も変わらない。そんな中、そうした市場環境に専門店流通が対応するためには、個店別の価値も高める他ない。言い換えれば「変えるべきもの」「変えるべきでないもの」を明確にすることが重要になる。(半沢健一)
■お店としての存在価値を高める
今年起きた大きな出来事の一例を挙げると、大手メーカー各社が今期第3四半期の決算を発表、多くの企業が中国事業やトラベルリテールの落ち込みによる影響を受けたことに端を発し、マツモトキヨシグループが都内で化粧品専門店とドラッグストアを展開する「ケイポート」を買収・子会社化したことも大きな話題を集めた。
さらに、これまで百貨店や直営店及びECを主戦場に展開していたポーラやファンケルが専門店領域にも販路を本格的に拡大。そしてコロナ禍を経て、国内外の化粧品市場は当然、生活者の化粧品に対する意識も大きく変化する中、資生堂やコーセー、アルビオン、ファンケル等の大手メーカーが軒並み、中長期経営計画を発表。現在の課題と今後の成長戦略を明らかにした。これらはごく一部で、この1年間にこれだけ多くの出来事あったことに改めて驚く。
来年2025年も様々な出来事が起こり、それに伴う変化も起きていくのも間違いない。その変化に専門店流通が対応していくためには、化粧品専門店としてだけではなく、お店単体としての存在価値も高める他ない。そのためにも「変えるべきもの」「変えるべきでないもの」を明確にして、取り組んでいくことが今以上に大切だと考える。
■時代に適した変化を強み・魅力を磨き上げる
先日、ある化粧品専門店を取材した。お店の特長は、店舗の半分を薬局として、もう半分を化粧品専門店として展開しており、今回新たにエステサービスを導入するという。そのお店は薬局を母体としているために「モノ売り」ではなく、「コト提案」を活動の基本に置いている。要は化粧品専門店に通じる「薬局的発想」を強みとしてきたのである。
中でも最も注力しているのが、定期的な肌チェックの習慣化。お店では肌チェックを医療機関では当たり前に行われている「定期健診」という位置付けで捉え、年数回の定期的な肌チェックを習慣化するために、ここ数年注力してきた。
今回、エステサービスを導入した背景には、短時間でリーズナブルな価格設定で定期的来店を促して、そのタイミングで肌チェックもしてもらうことを目指している。
以前にもお店を取材したことがあるが、その時にも「薬局的発想に基づくコト提案」をとても大切にしており、お店一番の武器として紹介した。まさに、このお店にとって「変えるべきでないもの」とは、「コト提案」のことである。今回の取材では、導入直前のため、お客さまの声を聞くことは叶わなかったが、スタッフ同士で施術し合った際、そのあまりの気持ち良さ確かな手応えを感じたと聞いている。また、多くのお客さまに、その気持ち良さを体感してもらうため、導入後の一定期間、採算度外視でエステサービスを提供していく予定で、期待感の大きさが伝わってくる。
化粧品業界を取り巻く環境の変化は今後も起き続けていくし、業界の仕組み自体も変わっていくだろう。そんな中で専門店がどう対応していくのか、それが大きな鍵を握る。まず必要不可欠なのは、冒頭で述べたように化粧品専門店として、お店として、その強みを磨き上げていくことしかない。そうでなければ、そのお店があるエリアで存在感を発揮出来ない、そんな時がすぐそこまで来ている。
「変えるべきもの」と「変えるべきでないもの」、それを明確にしてから取り組み、強みや魅力を磨き上げていくこと。それが来年2025年、変化の激しい環境におかれても、強い存在感を発揮していくための大切なプロセスであることは言うまでもない。
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