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日本商業新聞

【2024/11/5 日本商業新聞】専門店の強み+お店の強み / 「お店ならではのもの」 / 全ての特性を踏まえて活動

例年、11月下旬に本紙特別冊子「STORY」を発行。9月から始まった取材もひと通り終わり、今は原稿をまとめている。今回数店の専門店を取材したが、そこで感じたのは、「専門店としての強み」という流通全体の特長を生かした取り組みに加え、個々に「お店の強み」を見出し、スタッフやBCを含めてお店にいる全員が取り組み、成果を上げるお店の存在だった。そのエリアで唯一無二のお店であるためにも、「お店の強み」というより踏み込んだ活動が、今後の専門店にとって重要な要素となるのであろうか。(半沢健一)



■「お店ならではのもの」


今回取材したA店、B店、C店の3店舗での取り組みを紹介する。


まず、A店では、お客様が来店した際の「お声掛け」をとても大事にしている。お店の経営者は「集客立地でフリー客が多い立地なら別だが、わざわざうちに来られるのだから何かしらの肌悩みをお客様は持っている。お客様への声掛けは『あなたの肌悩みを解決するお手伝いをさせて下さい』という想いを伝えるのに一番の方法」と説明。言葉の通り、A店全体の会員数はお店の規模からしても非常に多く、来店時から始まるお客様に寄り添った活動で、いつも多くの人で賑わい続けているし、来店頻度も高く、そのエリアにいる生活者にとって欠かせない存在となっている。


そしてB店だが、「お店の雰囲気づくり」を徹底的に取り組む。経営者の基本的な考え方としてあるのが「お客様に喜んでもらえるお店であるためスタッフもBCも含めてお店にいる全員が働きやすい環境に整えることが私の役目」。お店で働く全員が終始笑顔で対応。スタッフと会話する来店客は、まるで仲の良い友人のように笑いながら接客を受けていて、お店の中はいつも明るい雰囲気に包まれている。また、その様子を店外から見ていた人も、B店に対して「入りやすいお店」という印象を受けるのは容易に想像ができる。


さらにC店。このお店では、同じエリアにテナント店を数店舗を展開しているが、その商業施設の特性に合わせて、ブランドの配置転換を行っている。例えば若年層の集客力が高い商業施設のテナント店なら、中心層の若年層から支持を集めるブランドを集約した。


一方、若年層以上の集客力が高い商業施設のテナント店であれば、高価格帯のラグジュアリーブランドを中心に集約。また、ブランドの配置転換だけでなく、ターゲット層を考慮したお店づくりは当然、ブランドの見せ方やコーナーづくりにも取り組んだ結果、来店客数も売上実績も伸びているというから驚く。



■全ての特性を踏まえて活動


今、専門店が抱える課題というか、今後取り組むべきテーマは「特長化」で、要は「そのお店ならではのもの」をいかに明確化できるか。この数年、「専門店の強み」を発揮することがお店の特長化にもつながる言われてきた。そのために、例えばカウンセリングブランを新たに導入する等の取り組み強化をはじめ、お店の改装のタイミングでカウンセリングスペースを拡げたり、また、SNSを使って情報発信に取り組むお店が多かった。


確かにこれらの取り組みはそのエリアにいる生活者に関心を持ってもらうためにはとても大切なことではあるが、しかし、本当にそれだけなのだろうか。先述のA~C店の3店舗の場合、新たな取り組みではなく、今までお店の中にあったものへの取り組みを強めたり、お店の周辺にいる生活者のニーズや行動に合わせた形で取り組み方を変えてきるだけである。



大切なのは、お店の特性や地域特性、お店周辺にいる生活者の特性、そしてお店がこれまで取り組んできた活動全てをまず把握すること。そのうえで、そのエリアに無くてはならない存在のお店となるために何が必要なのかを考え、行動に移していくことである。勿論、そのためにはお店だけでなく、メーカーの理解や協力も欠かせない。


そして、経営者がお店が理想とする在り方をどう考えるのか。今回の取材では、スタッフや美容部員の大切さを改めて思い知らされた一方、お店の舵を握る経営者の決断力と、お店やお客様への想いの強さがいかに大事なのか、これも改めて認識する機会となった。

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