〝街の本屋さん〟〝街の化粧品屋さん〟と呼ばれる地域密着型の小規模店舗の閉店が相次いでいる。特に書店においては、電子書籍化やネット通販の拡大による影響が客足に大きく響き、経営悪化が免れない状況に陥っている。こうした厳しい時代を生き抜く上で、「リアルの体験価値を追求した、持続可能な経営の実現」を目指す店舗が増えており、中でも地域における「コミュニティの強化」は今後欠かせない取り組みとして挙げられている。(中濱真弥)
■閉店相次ぐ「街の小売店」
人口減少や高齢化、コロナ禍を経た消費者の購買行動の変化など、この10年間で国内の商環境は著しく変化した。それに伴い、特に地方都市における小売店は減少の一途をたどっている。
「書店」を例に挙げると、書店はこの10年間で閉店が相次ぎ、2024年3月時点の書店数は1万918店、10年前と比べて4600店舗が減少。とりわけ小規模店舗の減少が目立ち、10年前は5598店あったのが、現在では3789店と1800店が閉店。いわゆる〝街の本屋さん〟を中心に経営状況が悪化し廃業を余儀なくされている。その要因としては、販売の主力であった雑誌や漫画を中心に電子書籍化が進んだことや、ネット通販の拡大などで客足が遠のいたことが背景にあるとみられている。
■体験価値に強シフト
こうした時代背景を受け、街の書店では持続可能な経営を追求するべく、「書店に訪れることを楽しむ」リアルの〝体験価値〟を生み出す店舗が増えている。例えば、書店で文具や雑貨を買うことができたり、カフェやイベントスペースを設けるといった取り組みの他、泊まれる本屋など、書店での体験に価値を見出し、それを売りにするケースが出てきている。
その一つに、パワースポットブームで神社仏閣を巡り「御朱印」を集めるのが流行となったが、御朱印ならぬ〝御書印〟(ごしょいん)が静かな盛り上がりを見せており、今では日本国内から台湾にまで広がりをみせ440店まで参加店が増加。インスタのハッシュタグで実際に御書印をもらったユーザーや参加店によって投稿されその輪が広がっている。
このように、〝街〟を中心に小売店を営んでいるお店は、多かれ少なかれ書店と同様の経営課題を抱えており、その中には〝街の化粧品屋さん〟も含まれていると言えよう。そこで11月度【専門店キャッチアップ】(11/25号掲載)では、街の化粧品屋さんが生き残っていく為の取り組みについてフォーカス。
■外せないコミュニティの強化
総括すると、「その地域に存在し続けるための意義」が必要不可欠であり、その為には「地域のコミュニティになる店づくり」が重要になるという見解で一致した。ただ、その中で特筆すべきは、人口減少や高齢化に対して決して悲観的ではないということだ。
「星の国岩見沢店」では、オープン当初8万5千人だった人口は毎年千人ずつ減少、商圏は小さくなっているものの、逆に売上はしっかりと上がっているという。
要因としては「1つは、リアルで化粧品を買う場所が減っていること。2つめに、健康食品やギフト、新たな商品で需要を取り込み、90代でも来店して頂ける店づくりを行っている。また来店が難しい方には配達を行うなど、地域のコミュニティ店としての強みを強化していることが理由として挙げられる」と述べると同時に、「今後も商圏の人口推移や産業をしっかりと見定め、変化に応じた店づくりを行っていく。やり方や捉え方次第で充実した店舗運営が可能だと考えている」と言及する。
また「サロンドコスメVIVE」は、コミュニティ化の一環として、地域事業者と連携したイベントを実施。近隣の鍼灸院・ヘッドスパ・ネイル・占い等とコラボしたイベントを行い、互いにSNSで発信することで相互のお客様への認知度アップを図っている。
今後も人口減少といった時代の変遷の中で閉店は続くかも知れないが、逆を言えば、生き残ったお店においては、地域の方から必要とされる存在になる可能性は十分に秘めている。大事なことは、その商機を掴むための洞察力と挑戦を続ける力が今、試されていると感じている。
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