この数年、「美容医療」の存在感は高まっており、特に短時間ですぐに効果が感じられる非外科的施術は「出来るだけ時間も手間もかけたくない」という生活者の支持を集めている。確かに化粧品業界においても美容医療に対する危機感の声を聞くことがあるが、そこまで深刻に捉えていない。何故なら、化粧品にしかない魅力があるからである。コロナ収束後、初めての秋商戦、各社から話題の新製品が投入されていくが、市場を盛り上げるためにもその魅力を伝えきることが大事だ。(半沢)
■美容医療にない魅力とは
この数年、美容業界では「美容医療」の存在感が確実に高まっている。美容医療の市場規模は、コロナ直前の2019年には4070億円とされているが、コロナ直後の2020年は3920億円と一旦落ち込んだものの、翌年の2021年には3990億円とすぐに回復傾向をみせ、2022年は4080億円とコロナ前の水準を上回る等して、いかに成長基調にある市場なのか明らかである。
美容医療には様々なカテゴリーが存在しているが、中でも今人気なのが「脱毛」「ボトックス注射」「にきび」「美肌」「二重まぶた」「しみ・あざ・ホクロ除去」等、非外科的施術といわれる施術で気軽に受けられて短時間ですぐに一定の効果を実感出来ることが人気の理由になっている。
一方、「美容医療を受けたことがない」という生活者が多く存在しているのも事実である。某美容メーカーが実施したアンケート調査によると、回答者の約8割が美容医療の未経験者というデータもある。従って未経験者がまだ多くいる中で、それでも市場規模は年々伸長していることになり、今後暫く美容医療の伸長は続くものとみられる。
そこで疑問に思うのはこれだけ市場が拡大傾向にあり、SNS等でも話題を集めているのにも関わらず、何故、美容医療の未経験者が多いのかということだ。確かに保険外治療で比較的高額なこともあるが、それだけが理由とも思えない。
■「情緒的な魅力」発信
数カ月前、化粧品専門店への取材が終わり、経営者との雑談の中で美容医療に関する話が出たことがある。
その経営者曰く「以前はうちのお客さまの中で美容医療を受けられる方は殆どいなかったが、今は美容医療も受けながら、化粧品を使うお客さまが少しずつ増えてきている。そうしたお客さまが今後増えていった時、お店の経営にどう影響するのかわからない」と美容医療に対する不安を口にされていた。
確かに美容医療は短時間で効果を感じやすいので、「出来るだけ時間も手間もかけたくない」という生活者からの注目は高く、経営者が不安に思うのもわからなくはない。しかし、先述の通り、美容医療の未経験者が多いことを考えると、「短時間で効果を感じることが出来る」以外に、美容に対して求めている魅力があるのではないか。
美容医療にはなく、化粧品にある魅力、それは「情緒的な魅力」だ。化粧品の「情緒的な魅力」とは、肌に塗布した際の使用感触や香り、容器のデザインもそうで、化粧品を使うたびに、その化粧品の「情緒的な魅力」を感じられることが生活者にとって大きな価値になっている。
■体感を重視の地道な活動
また、「情緒的な魅力」はそれだけではなく、例えばお店のスタッフや各メーカーの美容部員による肌に触れながらのカウンセリングもそうだし、店頭での何気ない会話もそう。その生活者にとって大事な時間であり、それが大きな魅力にもなっている。そして、化粧品自体も最先端の知見が搭載される等して進化しており、確実に効果を体感することが出来る。
美容医療への注目度が高まるほど一方、それは化粧品の「情緒的な魅力」を感じてもらえるチャンスともいえる。そのために紹介活動やサンプリング活動等、実際に試してもらい、化粧品の魅力を体感してもらうことが大事になる。今はコロナが収束して初めて迎える秋商戦、各社から大型新製品が投入される予定だが市場を盛り上げていくためにも、店頭での紹介活動やサンプリング活動等地道な取り組みがより一層大事になってくる。
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